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変わるリーダーシップの在り方
そもそもリーダーシップとは何でしょうか。
オーストラリアの経営学者、ピーター・ドラッカー(※1)は「リーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確立することである」と定義しています。
また、リーダーについては「リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持するものである。リーダーたることの第一の要件は、リーダーシップを仕事と見ることである」とも述べています。
このリーダーの役割、リーダーシップの在り方が、人口知能(以下、AI)時代では、これまでと変わると言われているのです。一体どう変わると言うのでしょうか。
(※1) 参考:P・Fドラッカー(2000) 『プロフェッショナルの条件』 (ダイヤモンド社)
AIの現状とこれから
まず先に、AI時代と一言で言いますが、現在のAI技術はどの段階にあるのか?それについてご紹介します。
AIの研究は1950年代から続いていますが、その過程では、ブームと冬の時代が交互に訪れていました。現在は、2000年代から続く「第三次ブーム」の段階です。その主な背景としては、大量のデータを用いることでAI自身が知識を獲得する「機械学習」の実用や、知識を定義する要素をAIが自ら習得するディープラーニング(深層学習、特徴表現学習とも呼ばれる)の登場があります。
総務省は2020年8月に、第4次中間答申で「Beyond 5G時代における新たなICT技術戦略」を取りまとめており、AI・Beyond 5G・量子情報・サイバーセキュリティの4領域において、2025年までに解決すべき社会課題を挙げています(図1)。
AI領域で戦略的に進める研究は、音声翻訳や対話システムなどのデータ利活用、脳機能型情報処理システムです。すでに、会議や資料作成で文章生成AIのChatGPTや、Voice Pingのような音声翻訳AIなどを使う機会のある方は、この戦略が実現されていることを実感されるのではないでしょうか。
(図1 出典:総務省「令和3年情報通信白書 研究開発の推進」 第2部第7節 「Beyond 5G時代における新たなICT技術戦略」より)
AI時代における人間の位置づけ
AI技術の進化により、業界によっては、自分の仕事を奪われるのではと不安視する声を耳にします。
たとえば、イラストレーターや動画クリエイターなどの仕事では、画像生成・動画生成AIができたことで、仕事が減ったという方もいます。
昨今では、ココナラやTipsなどのプラットフォームでAIによって作成したイラストや動画を販売するサービスや、無料でAI動画を生成できる方法をコンテンツ化・提供しているサービスもあり、それがまた特定の業界の仕事に影響を与えているという現状もあります。
また別の例として、プロジェクトリーダーを挙げてみましょう。プロジェクトリーダーの仕事はこれまで、プロジェクトの進捗管理や工程管理でした。しかしAI時代では、タスク分解をして必要な期間・人員などの見積もりまでを人間が行えば、それ以降はAIで効率的に行うことができます。
リーダーシップの在り方が変わることを認識していなかった場合、突然リーダーとしての自分の仕事をAIに奪われ、どのような役割を担えばよいのかわからない、という事態も起こりえます。
では、AI技術の発展したこの時代、人間は何をすればよいのでしょうか?
AI時代のリーダーシップ
今後求められるリーダーシップについて、下記にまとめました。
1.最も重要なのは、人のパフォーマンスを上げること
マネジメントやリーダーシップで大切なことは、
「一人ひとりのビジョンや価値観を知ったうえで、その人が最適かつ最大のパフォーマンスが出せる仕事ができるようにする」
ということです。
もし自分が描くビジョンとは異なる環境で、好きでもない仕事を延々とするとなった場合。
あなたはそこで最大のパフォーマンスを出すことができますか?多くの場合、努力をしても、最大のパフォーマンスを出すことは至難の業でしょう。どれほど器用にしたとしても、適正でない仕事やしたくない仕事の場合、気持ちの面でパフォーマンスに変化が出やすくなるものです。
場合によっては、メンタルヘルス不調にも繋がる危険性すらあります。メンタルヘルスがどれほど仕事のパフォーマンスに影響するか、少し掘り下げて解説します。
1-1.仕事のパフォーマンスとメンタルヘルスの関係性
仕事が合う・合わないことだけがメンタルヘルスの不調原因ではありませんが、原因の一つではあります。従業員の健康に対する投資収益率(ROI)を図る指標として、よくプレゼンティズム、アブセンティズムが挙げられます。
プレゼンティズムとは「出社はしているが、何らかの健康問題によって業務効率が落ちている状況」を言い、アブセンティズムとは「健康問題による仕事の欠勤、病欠」のことです。
厚生労働省保健局「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」では、プレゼンティズムのコストが77.9%であることが明記されています。日々の生産性の損失でもあるプレゼンティズムが、医療費・疾病手当などを含むアブセンティズムよりコストを占めているのです(図2)。労働生産性を低下させるプレゼンティズムへの対策を企業が要することがこのデータからもわかり、そこからリーダーに必要とされるものが見えてきます。
もし今、一人ひとりに最適な仕事を与えられていない状況であれば、リーダーは
・必要に応じてその人に最適かつ最大のパフォーマンスができる仕事を渡す
・その人がしたくない、しかし他の人もしたくない、という仕事を解決するために、AIを活用する
といった対応をしていく必要があるでしょう。
(図2 出典:厚生労働省保健局「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」より)
2.人に関心を持つ
「AI時代」と聞くと、効率化重視、人との関係が希薄、などの印象を持つかもしれません。しかし、実際はその反対です。
1つめの「最も重要なのは人のパフォーマンスを上げること」でご紹介したように、その人に最適な仕事を見極めるためには、相手を知らなければなりません。AI時代だからこそ、リーダーに求められるのは「人へ関心を持つこと」なのです。
AI時代では、その人の価値観に合う最適な仕事を提供すること、そしてパフォーマンスを最大化させることが最重要となります。最適な仕事、とは言いますが、リーダーはどうやってそれを判断するのか、という疑問が生まれるかと思います。
それはやはり、相手とのコミュニケーションを通してこそ見えてくるものだと言えます。ここで言うコミュニケーションとは、言語的なものだけでなく、非言語的コミュニケーションも含めます。日々繰り返す関わりの中で相手を知り、対話し、適性を知ることは「人間だからこそ」できることです。また、本人さえまだ気づいていない価値観やビジョンなども含め、その人の適性を見極めるのは、リーダーの腕の見せどころとも言えます。
AIと違い、こうした力量や素質にはリーダーによって差がありますが、もしもコミュニケーションが苦手だという場合は、コーチングを得意とする人間の力を借りる、という方法もあるのです。
AIにはできない、人間だからこそできる仕事は人間同士でする。人間同士でできないことは、AIを活用する。そしてこの判断をするのは、人間であり、リーダーです。
まとめ
この記事では、AI技術の進化とこの時代における人間の位置づけ、変わりゆくリーダーシップについてご紹介しました。
ChatGPTやVoice Pingなど、近年急速に発展したAI技術により、自分たちの仕事について悩んだ経験がある方もいるでしょう。ですが、そもそも何故AI技術が進化しているか、と言うと、現在の社会課題を解決するためであり、それが解決することで、人間でしかできない仕事に注力できるからです。それなのに、技術進化に怯えていては、本末転倒ではないですか?
人間でしかできない仕事を明確化し、必要に応じてAIを活用すること。そして一人一人が、最適に最大限のパフォーマンスを出せるよう、リーダーは人間に関心を持ち、相手の価値観や考えを知ろうとする姿勢が必要となるでしょう。
まずは今、目の前にいる人を知ろうとすることから始めてみませんか。