失敗しないために!起業・新規事業、ビジネスを始める前に知っておきたいこと

並木将央

並木将央

テーマ:成熟社会の理解度アップ!

時代背景と資本主義の関係を理解しないまま、ビジネスをやるのは、ルールがわからないままゲームを行うようなものです。ですので、ビジネスを始める前に、まずは基本ルールである資本主義とは何か、時代変化と合わせて見直していきましょう。

資本主義とは?簡単に言うと?

辞書には、下記のように書かれています。
“生産手段を資本として私有する資本家が、自己の労働力以外に売るものを持たない労働者から労働力を商品として買い、それを上回る価値を持つ商品を生産して利潤を得る経済構造。 生産活動は利潤追求を原動力とする市場メカニズムによって運営される。 キャピタリズム。“
簡単に言ってしまえば【持っている人から持っていない人に価値を渡したときに、解消したギャップの大きさで対価の量が定まる】というのが、資本主義です。これがビジネスの基本です。ただし絶対価値ではなく、相対価値で決まります。例えば同じ車種でも、中古車と新車では価値が異なります。実際にどの程度差があるのかは専門家が分解でもしない限り、正確にはわからないでしょう。しかし、消費者はこの値段なら良いと決め、取引が成立します。
何に金額はつけられているのでしょうか?年数?型式?ヴィンテージ品と呼ばれるようなものは、古いものでも新しいものより価値を持ちます。このように、金額は絶対的な価値ではなく、相対的な価値で判断されているのです。

資本主義社会では、お金の量で、裕福度合いを測ることができます。安く仕入れて付加価値を多く付けて高く売ることができれば、お金を多く持てるようになります。お金を借りて付加価値を多く生み出し、大きく儲けられれば利潤の中から金利と元本を払っても、裕福になります。これが経済成長の原点です。

時代変化の中で資本主義はどのように変わっていったのか?

人口が増えていた成長時代は、供給より需要が多かったので、「借金して設備投資して利潤を上げて借金返済」が成り立っていました。

かつて、お金は純金との交換券でした。純金の量は採掘が進んでも急激には増えません。単純に言えば、お金の流通量は世界に存在する純金の量と同じだったわけです。しかし1971年のニクソン・ショックから、お金の機能は変化し、概念的なものになりました。純金の量と関係なく、お金を印刷して増やすことができます。お金の量はどんどん増えていき、世界の隅々まで溢れていきます。日本では1980年代後半にバブル経済が崩壊、世界的にも1990年代のアジア通貨危機、2008年にはリーマン・ショックが起きました。消費を上げるために借金をして儲けても、結局弾けてしまうということをどの国でも繰り返しているということがわかります。付加価値の総和であるGDPの世界総額より借金のほうが上回り、その差はさらに広がっています。経済成長における付加価値額より、借金の増加額のほうが上回っているのです。そうして、社会と企業は借金で回らなくなっています。

企業が借金で回らなくなれば、企業で働いている個人にも影響が出ます。給与は下がります。給料が上がらなければ、親が子に学費を出せなくなるので、子供は学生ローンや奨学金を借りて進学をします。就職してから借金を返すことで手一杯になれば、消費も落ち込みます。

このように、成熟社会では、個人も企業も政府も借金で回らなくなっています。借金返済のために前の年より成長しなければならないという活動は持続不可能です。人口が減っているのに前の年より拡大成長するには、他から奪うしかありません。安く奪えば、デフレが進みます。しかし、金融緩和でお金が余るとインフレとなります。

成熟社会の資本主義では儲かるかどうかはわからない

新しいビジネスを行おうとしたとき、まず言われるのは「で、儲かるの?」ではないでしょうか。しかし、成熟社会においてビジネスを始めるときに、本当に需要があるのか、売れるのか、という予測はできません。「儲かるのならそのビジネスをやる」という考え方が、ビジネスを始める際のいちばんの足枷となります。そもそも資本主義の中で確実に儲かるビジネスなどありません。もしあったとしたら、誰もがそのビジネスを始めます。そうなれば需要と供給が崩れ、価格が下がり、誰も儲からないビジネスとなりますが……。

ただ、成長社会ではこれがある視点では正しい考え方だったと言えます。なぜなら人口増加によって新規客が増え続けていたからです。生まれたときには何の製品・サービスも持たずに生まれてくるので、いずれ顧客となってくれる人口が多かったということです。人口増加が前提の社会では、国も社会も企業も、市場がどう伸びるのかを予測し、マーケットサイズを計算することが可能でした。そうして、どのくらい儲かるという予算を立てることができます。ビジネスモデルを考える際の議論が「AとBのどちらがより多く利益が出るか」と言えるくらい、成長社会では儲かることが前提に計算することが可能だったわけです。言ってしまえば、正解がわかる社会だったのです。販売する商品を考えるときに、このくらいの人口の伸び率があるから、このセグメントの人たちに、このビジネスモデルで売っていけば、このくらいの割合の人が買ってくれるだろう、と。しかし、人口が減少していく成熟社会ではどうでしょうか?供給より需要が多い成長社会から、供給より需要が少ない成熟社会に移り変わったにも関わらず、同じように計算できるでしょうか?いえ、できないはずです。いずれ顧客になってくれる人口は激減します。他社と奪い合いとなります。人口増加が見込めない以上、マーケットサイズを測ることはできないので、人口が減少していく成熟社会では儲かるかどうか、はやってみないとわかりません。ビジネスの正解は誰にもわからない時代だということを理解しましょう。

起業・新規事業、ビジネスを始めるには




では、儲かるかわからない中でどう起業・新規事業の立ち上げと言った新しいビジネスをしていけば良いかというと、2つの考え方があります。誰も手を付けていない分野にチャレンジするか、誰かが手を付けている分野で立ち上げるかです。
誰も手を付けていない分野は、誰かがやろうとして失敗したか、本当にいままで誰も気づかなかったかのいずれかです。当然、ハードルは高くなります。自分たちだからできる何かをはっきりと見つけたうえでの投資が必要です。

すでに誰かが手を付けている分野で起業・新規事業の立ち上げと言った新しいビジネスを起こす場合、まず、自分自身または既存事業の価値を高めるシナジーがあるかがポイントになります。例えばパソコンを作るメーカーがプリンターを作る、あるいはパソコンスクールを開く、といったことです。そして、自分たちの持っているものが、その分野の競合他社にとって「異分野」のものであるかも重要です。異分野×既存市場の組み合わせは、他の起業との差となります。

起業・新規事業の立ち上げと言った新しいビジネスを起こす場合は、小さなことから着実にやっていく姿勢が大切です。細々と続けたビジネスでもM&Aで事業を大きくできたり、価値が高まれば売却できたり、ということもあり得ます。ただ、注意すべき点があります。こちらの知識や経験が高まってないときに、「自分たちには知識がないから丸投げしちゃおう」とM&Aを結ぶことはやめましょう。欲しいからといって知らないものを買ってはいけません。相手の企業やその分野に対する知識を持たなければ、結果として利用されてしまうこともあり得るからです。

まとめ

時代変化に気が付かずに成長社会に出版されたものやその当時の常識に従って、起業・新規事業の立ち上げと言った新しいビジネスを起こすのは大変危険です。時代にあった資本主義のルールを確認したうえで、ビジネスを展開していきましょう。

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並木将央
専門家

並木将央(経営コンサルタント)

株式会社ロードフロンティア

人口減少に伴う「成長社会」から「成熟社会」という社会の大きな変化に対応した経営変革を支援。人材獲得、人材育成、業務効率化、資金繰り、売上UPなどの課題を同時解決するコンサルティングサービスを提供。

並木将央プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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