『成熟社会のビジネスシフト 〜10年後も会社が続くために 〜』紹介記事ブログまとめ
「給料が安くてやる気が出ない」「あんなに頑張ったのに、給料これだけか」などと給料日に給料明細を見ながら嘆く社員ばかり。「社員が納得するような給与計算とは何か」と頭を抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。
給料と給与、賃金の違いとは?
そもそも給料と給与、賃金の違いとは何でしょうか?答えられますか?辞書によると、それぞれは下記のように記載されています。
給料:勤労に対して支払われる報酬。特に、その基本給の部分。
給与:金銭や品物をあてがい与えること。特に、官公庁・会社などで勤務する者に対する給料・手当などの総称。
賃金:使用者が労働者に対して、労働に対する報酬として支払う対価のこと。 労働基準法(労基法)第11条では「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」 と定義される。
つまり、基本給が給料で、給料に手当などを含むと給与となります。給与と賃金はほぼ同義と言って問題ないです。しかし、労働基準法・雇用保険法・労働保険徴収法では「賃金」、所得税法・地方税法では「給与」所得と言うように、法律によって表現が異なります。
「終身雇用」が当たり前ではない現在、以前の賃金制度では成り立たない
貴社は給料の取り決めをどのようにしていますか?歴史の長い企業様だと、成長社会型の賃金制度のままというのも多いのではないでしょうか。しかし、コロナ禍の影響もあり、ニュータイプの成熟社会が加速化していますので、従来のままではいずれ難局を迎えることでしょう。
成長社会では「終身雇用」「企業別組合」「年功序列」といったいわゆる「企業の3種の神器」と言われていた雇用制度がありました。しかし、終身雇用が当たり前ではなくなった成熟社会では、経験年数で単価が上がるようにするのは逆効果となります。
エンジニア市場では、経験年数で単価が上がるようにしていると、エンジニアは新たなスキルを学ばなくなるということが明らかになってきています。ただ居るだけで給与が上がる仕組みでは、サボっても、バリバリ仕事をしても1年勤務したという実績は同じとなります。人間は楽をしたがる生き物なので、サボってしまう方が多くなり、結果、スキルが身につかないという事態を引き起こします。サボってしまうのはサボっている人が悪いのではありません。サボってしまえる環境を作っている企業が悪いのです。
給与は何で評価すべきか?スキル?時間?役職?
どの業界でも、身に付けたスキルで測るようにすると良いです。成果主義と言ってしまえるかもしれませんが、「時間」で労働を測らないようにすることが第一です。日本には最低賃金という仕組みがあるので、どうしても時間で賃金を考えがちですが、時間を労働で測ってはいけない理由を考えていきましょう。早速ですが、あなたは同じ仕事を10分で片付ける部下と1時間かかる部下のどちらが優秀だと思いますか?また、同じ問題を10分で片付けるコンサルタントと1時間かかるコンサルタントではどちらが優秀だと思いますか?恐らく、多くの方が10分で片付ける部下/コンサルタントを選んだのではないでしょうか。
そのうえで、成果は同じだけども、よく頑張っているなあと思うのは、10分で片付けて50分遊んでいる部下と1時間かけて終わらせる部下のどちらですか?ここで頑張っていると思うのは1時間かけて終わらせる部下と答えてしまった場合、あなたは時間で労働を測っているといえます。また、10分で片付けたコンサルタントと1時間で片付けたコンサルタントに同額を請求された場合、納得いきますか?ここを気にしてしまうという方は時間で労働を測ろうとしているので意識変革が必要です。時間で測るのは効率であり、効果ではありません。労働の対価は効果で測られるべきであり、時間ではないのです。
また、日本の企業は給与を上げるために余計な役職を作るきらいにありますが、「役職=昇給」という考え自体がもう古いです。役職にお金を払う文化も見直していく必要があります。2020年現在、弊社でも、社長の私よりも給与の高いメンバーは2人います。また、給与は低いけれどもCTO的役割を与えているメンバーもいます。役職と給与は関係ないというのが成熟社会型の賃金制度です。給与は役職順に高くする必要はないのです。成熟社会型の企業は、社員の給与ランキングを【会社にいて欲しい順】に並べると良いです。会社にいて欲しい順に給与額を高くしていくことが重要です。もしも、貴社の給与の高額順が、会社にいて欲しい順でないならば、賃金制度を見直す必要があります。年齢も役職も関係ありません。管理職よりも、支えている平社員の方が、管理職の人より給与が高くても構わないのです。
成熟社会に合った給与計算・賃金制度とは?
ニュータイプの成熟社会に合った給与体制を行うのに適している組織構成でオススメなのが、LLPです。LLPとは、「Limited Liability Partnership(リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ)」の略で、「有限責任事業組合」という事業体のことです。 株式会社は権限=出資した額「金」で決まりますが、LLPでは「人」のアイディアや能力、技術、専門性などを中心に権限が決まります。定時を決めて「この時間にオフィスにいなさい」と時間に対価を支払うのではなく、労働貢献に対価を支払います。弊社は10年間この方式で経営しています。
給与明細は社員全体に公表する
よく給与明細は個人情報と言わんばかりに、金額は秘密の企業が多いです。賃金に差があることがばれると、ギスギスしてやりにくいから見せ合ってほしくないという企業が多いようです。年功序列と謳っている会社で給与に差をつけていくと、仕事ができない人は「同僚なのに!俺が低いのは納得いかない!」となりますし、優秀な人は「あいつよりも仕事をしているのに、たった数万円の差にしかならないのか」とモチベーションが下がります。隠すから知りたくなるし、公表されていないために直談判できず、ぶつけられない思いが募り、不満を抱きます。
弊社では、【会社にいて欲しい順】に給与は高いというのを名言したうえで、給与の額はメンバー全員に公開しています。誰がどれくらいの給与をもらっているか分かるため、額が高いメンバーは「もらっている額に恥じないように」動いてますし、額が低いメンバーは「もっと貢献して、いて欲しいと思ってもらえるようになろう」と奮起しています。仮に「あの人、そんなに働いてないのに、なんで私より給与高いの?私よりいて欲しいってこと?」と不満が出るようならば、評価制度に問題があります。納得のいく賃金制度を作るには、評価制度の構築は欠かせません。賃金制度と評価制度は表裏一体で考えていきましょう。
評価制度とは
評価制度をどのように作っていますか?私は、評価制度は法律と似ていると考えています。法律とは何でしょうか。セミナーで聞くと「悪い人を罰するため」「秩序を守るため」という答えが多いのですが、私は「先人たちの願い」だと思っています。より良く幸せであることを望んで、不完全ながらも日々進歩していくために、作ったものであると思うのです。
会社にとっては就業規則や評価制度が法律だと考えてみましょう。成熟社会では、できたことを評価するのではなく、会社にとってこういう人になってほしいと願って評価制度をつくるべきです。それは与えられる職務や役割によって変わっていくものであり、進化していくものです。多くの会社は評価が曖昧だったり、成果のみの評価だったりします。評価が属人的であることは仕方ないとしても、妥当性と納得性を持つ評価であるべきです。そして社員も自分がどう幸せになるかを語り、それを評価制度に盛り込んでいくよう会社と連携していくと良いです。
まとめ
成熟社会では、まず評価制度を会社にとってこういう人になってほしいと願いから作ります。それに合わせて評価をし、給与を決めていきます。その際に役職は関係ありません。どれだけ会社が求めている人財となれるかが大事です。だからこそ、会社にいて欲しい順に給与は高くなります。得てして会社にいて欲しい順番というのは、周りの社員にとっても「あの人が抜けたら、うちの会社はまずい」と思っている順になるので、納得度が高いので給与明細をオープンにしても問題はないのです。貴社の中で賃金制度がうまくいっていない場合は、まずは評価制度を見直してみませんか。