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ブランディングとは何をすることなのか?
ブランディングとは、ブランドの価値を高めていくマーケティング戦略の1つです。マーケティングの一種ということは、勝手に売れる仕組みづくりということです。ブランディングは勝手に売れるために、あらゆる方面から知られている、聞いたことがあるといった状態にするための外堀を埋めていくことです。「これをやればうまくいく」という答えはありません。とてもキャッチーで、強烈に人々の印象に残るような製品がマインドシェアを一気に塗り替えるということもありますが、ごく一部です。丁寧に外堀を埋めて、地道に信用を積み重ねていくことこそがブランディングの近道と言えます。江戸時代の頃の商売と同じです。老舗の企業は、こうした外堀を埋め、長年の努力でしっかり信頼を積み重ねたからこそ、ブランドバリューがあるのです。多額の資本を投下してあらゆる情報を自社で塗り替えない限り、一朝一夕でブランド価値を上げるということは、どんな技術をもってしても難しい戦略です。時代は変わっても、人の感情は昔から変わっていません。成熟社会では特に、ブランディングには地道な努力を重ねていくことこそが必要となります。
しかし、「ブランド」を勘違いしている人が多いです。プロダクト、ロゴ、デザイン、キャッチコピー、ホームページ、広告は、いずれもブランドではありません。顧客に知られている、理解されている、聞いたことがある状態をどうつくるかといった、環境づくりそのものをブランディングと言います。顧客におけるマインドシェア・LTVと満足度の掛け算がブランドの持つ力となります。ブランド力を高めていくことがブランディングです。平たく言ってしまえば、顧客にどう覚えられているのか、どう知られているのかです。
ブランド力を上げるために高めたい3つの指標
マインドシェアとは、脳内ランキングのようなものです。
「頭痛に飲む薬は?」と聞かれて「バファリン」と答えるのか「イブ」と答えるのかはたまた別の薬なのか、あなたが答える薬があなたのマインドシェアを占めている頭痛薬といえます。マインドシェアが高ければ、他社が新製品を出しても、自社の製品やサービスが選ばれます。「バファリン」をいつも飲む人は、エスエス製薬が「イブクイックDX」を出しても興味を持たないでしょう。
また、LTVとは「Life Time Value」の略で、「顧客生涯価値」と訳されます。1人もしくは一社の顧客が、商品やブランドの顧客となってから終わりまでの期間(顧客ライフサイクル)に、どれだけの利益をもたらすのかという意味です。LTVが高ければ高いほど、自社の製品群やサービス群の一生涯のファンでいてくれます。「バファリン」をいつも飲んでくれる人は、「イブ」「ロキソニン」「セデスハイ」と時によって違う人よりもライオン株式会社の売上に貢献してくれます。
ブランディングを考える際には、マインドシェアとLTVに「満足度」という指標が絡んできます。満足度が高くないと、LTVとマインドシェアが高まりません。成熟社会の製品やサービスはどんどん高品質になっており、満足度は際限なく上がっています。驚き、感動、といったような感情を動かし、記憶に残していく必要があります。
ブランド戦略に騙されないで!消費者が支払うのは、物の価値に対してではない
ブランド戦略の話だとよくスターバックスコーヒー(以下「スタバ」)の例が出ます。「100円高くてもスタバにはブランドがあるから売れる」のだという展開を多く目にしますよね。しかし、容量で比較してみてみると、実際にはスタバのコーヒーは高くありません。以下、著者が調べた結果です。
●スタバ
ドリップコーヒーShort(240ml)¥290
最低単価(入店にあたり一番安いサイズ)¥290
1番安いサイズでのmlあたりの値段¥1.21
●ドトール
ブレンドコーヒーLサイズ (270ml)¥296
Sサイズ (150ml)は¥200
最低単価(入店にあたり一番安いサイズ)¥200
1番安いサイズでのmlあたりの値段¥1.33
●タリーズ
本日のコーヒーShort(240ml) ¥305
最低単価(入店にあたり一番安いサイズ)¥305
1番安いサイズでのmlあたりの値段¥1.27
スタバのSはドトールのLサイズと同じくらい入っています。もっと言えば、タリーズの方がスタバより同量で15円高いです。
しかし、なぜ、スタバは高い、ドトールは安いというイメージが根付いているのでしょうか?
スタバは、ひたすら往来の多い中心街に集中的に出店しています。店舗そのものが広告になるからです。スタバが一番お金をかけているのはロケーショニング(立地戦略)です。スタバが提供したいものはコーヒーという製品だけでなく、洗練された装飾、心地よい音楽、温かい接客で、くつろいだ時間を過ごすという「体験」です。 mlにしたら高くはないけれども、与える体験が、「スタバ=高級」という印象を与えているのでしょう。
ドトールも店舗数を増やすことにお金を最も使っていますが、スタバとは対照的な立地戦略です。ドトールは、外階段の近くや狭いビルに店舗を構えていることが多いです。一見さんでも入りやすい外観にし、入店への心理的ハードルを下げています。
また、mlにしたら安いとは言えないが、最低単価が200円なので、入店へのハードルを下げられています。入店へのハードルの低さが、「ドトール=安い」という印象を与えているのでしょう。
ドトールのコーヒーの方がmlあたりスタバよりも高いのにも関わらず、ドトールは安いという印象でスタバは高いという印象を与えていることから、コーヒーそのものに対しての単価ではない判断基準で、「高い」「安い」と言われているということが分かると思います。決して、スタバにブランド力があるから、ドトールと同じ容量のコーヒーが100円高く売れるわけではないのです。
消費者は何にお金を支払っているのか?
であれば、消費者は何にお金を払っているのでしょうか?スタバの場合は空間にお金を払っているといえます。では、次の例ではいかがでしょうか?
とある人がルイヴィトンの工場で余分に作ったカバンを「廃棄しろ」という命令を無視して持ち帰り、駅前にブルーシートを広げて、半額で売っていたとします。あなたは、彼女へのプレゼントを、駅前で売っている半額のカバンとデパートで売っている正規の値段のカバン、どちらを買いますか?
証明書もつけますよ!と言っても、多くの方は2倍のお金を出してもデパートでの購入を選ぶといいます。なぜなら、人は物そのものではなく、感情価値でお金を払っているからです。同じ物でも、感情的に「良い」と思えなければ、「なし」なのです。
ビジネスにあるのは正解ではなく、思惑
スタバとルイヴィトンの例から、分かるように値段を決めるのは人間です。私はビジネスに正解はなく、あるのは思惑だと伝えています。株価が最も分かりやすいです。株価は「これから上がるぞ!」という人と「これから下がるぞ!」という人が同数いるから、毎日値段が決まるのです。需要と供給が同じ数でなければ、価格はつきません。1986年(昭和61年)12月から1991年(平成3年)2月までの51か月間に、日本で起こった資産価格の上昇と好景気、およびそれに付随して起こった社会現象のバブル景気を作ったのも人間の思惑です。今回、コロナ禍の影響で売上が減少している企業も多いですが、新型コロナウィルスのウィルスのせいで売上が減少したという方は少ないでしょう。売上が減少した企業の多くは、ステイホームで人間の行動が止まったことが原因です。一人ひとりの思惑が経済を作っているのです。
まとめ
人は何にお金を払うのか?物の価値が=値段ではないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。物の価値は、何を価値として認識されているのか?が重要となります。つまりは何がブランドとなっているかです。貴社は顧客にどう覚えられていますか?消費者にどう知られていますか?そこを今一度、考えてみると良いブランディングを行えると思います。