16年前の記事を改めて読む(6) 【海外ETF編】海外分散投資の今後の主流 〜海外ETFについて〜

安東隆司

安東隆司

テーマ:所長解説のおカネ学♫

家計のおカネについて「知っていれば得をするけれど、知らなければ損をしてしまう事柄」は、16年前も今もほとんど変わりません。
筆者が2009年〜2010年、(一社)企業研究会『BUSINESS RESEARCH』に全6回のコラムを寄稿しました。
『おカネ学〜知っておくと得するパーソナル・ファイナンス〜』
投資・マンション・保険・相続・住宅ローン・海外ETFと、家計の関心領域を横断する連載を、16年前の視座から改めて読み直すシリーズです。
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≪連載≫ おカネ学 〜知っておくと得するパーソナル・ファイナンス〜
BUSINESS RESEARCH 2010.3
第6回(最終回) 海外分散投資の今後の主流 〜海外ETFについて〜
テーマ:海外ETFについて
外資系プライベートバンク ディレクター
CFP ファイナンシャル・プランナー
安東 隆司

1.プロの運用者の自身の投資はETF

大手運用会社で投資信託(投信)を運用するファンドマネージャーの発言、「私自身の資産運用先は当然ETF。信託報酬が投信より断然安いから」(注1)というコメントは投資家向けの公の場でまず語られることはないでしょう。
以下にその説明をしてみたいと思います。

2.隠れたコスト、信託報酬

自分で投信を購入した方だけでなく、運用の専門家のアドバイスで運用を行っている多くの投資家の方の実際の運用が「投資信託」で行われています。
気付いていない投資家も多いのですが、投信の信託報酬はいわば、天引きされているコストです。
単純な例で説明すれば、運用の成果が3%あったとしても、信託報酬が2.10%に設定してある投信では、投資家のリターンは0.90%です。
口座手数料や売買手数料の様に別建てで支払っている手数料ではないので、コスト認識していない投資家が多いかもしれません。

3.高コスト=優秀な投信?

日本経済新聞の記事で以下の内容がありました。
「運用評価会社のモーニングスターによれば、2006年以後、運用成績がインデックス型を上回ったアクティブ型投信は毎年25〜38%にとどまる。
理由のひとつは信託報酬と呼ぶ手数料の高さ。
運用成績はこの手数料を差し引いてはじめる。
アクティブ型の手数料はインデックス型の2倍近い」(注2)。
換言すれば、高い信託報酬というコストを払っていながらも、市場の動き=インデックスを下回る投信が6〜7割もあるということです。
高いコスト=優秀な投信とは言えないケースがほとんどであるとも読み取れるでしょう。

4.アクティブ型投信とETFのコスト比較

アクティブ型投信は、市場の指標(インデックス)を上回るリターンを目指すことを目的としているのですが、前述の通り約6〜7割はその目的を達成できていません。
近時注目のブラジルなど、BRICs諸国を含めた新興国への投資では、アクティブ型もETF(上場投資信託(注3))も同じ指数を参考にしているケースも多いでしょう。
しかしそのコストは大きく異なっていることが実態です。
(Business Research 1025号でETF、インデックス、投信のコストについて述べております。
その内容は紙面の都合上、割愛致します(注4)。)
中国をテーマにしたETFと投信を購入する事例で比較してみます。
ある中国インデックスに投資するニューヨーク上場のETFのコストは申込手数料が0、管理報酬が約0.74%であり、合計では約0.74%となります。
(別途株式の売買手数料、外国為替の両替手数料などのコストが掛かります)
これに対してある日本の大手金融機関で販売されている投信では購入時に申込手数料3.15%を支払い、年間の信託報酬が1.596%掛かるとします。
1年間のトータルコストは4.746%となります。
(さらに解約時には別途0.50%の信託財産留保額が別途掛かります)
トータルのコストでかなり大きな差が生じる訳です。

5.投信とETFの実際リターン比較

ある中国インデックスETFと、日本の大手金融機関で販売されている投信の過去5年間のリターンの比較が図表Aです。
総収益としてこのETFは147.85%、投信は128.63%となっています。
1年あたりの収益率ではETFは19.89%、投信17.97%で1.92%の差異ですが、運用の複利効果によって5年間で19.22%の差異を生むことになる訳です(ETF、投信共に通貨USD)。
図表Bでは通貨JPYにて比較しました。
総収益はETFは122.19%、投信は104.96%、1年あたりでETFは17.30%、投信15.42%、5年間では17.23%の差異となっています(注5)。

6.投資家リターンと販売者収益 〜なぜETFは店頭で勧められることが少ないのか〜

コスト面で投信よりも優れているETFが日本の金融機関で勧められることが少ないのはなぜでしょうか?
投資信託の販売手数料が金融機関の収益に少なからず影響を与えているからと思われます。
ETFを販売注力するようになれば、従来得られていた投信の販売手数料(前例の3.15%)などの収益が得られなくなり、収益状況が大きく変化すると思われます。

7.ETFの市場規模、世界全体、米国、日本

ETFの市場規模を比較してみると、全世界では1,939本、資産残高は1兆323億ドル(約95兆円)、アメリカでは772本、7,055億ドル(約65兆円)日本ではETFは68本246.3億ドル(約2.3兆円)とまさにケタ違いの状況です(注6)。
また世界のETF運用資産残高は2004年に3,098億ドルにすぎませんでしたが、2009年には1兆323億ドルと5倍以上の資産額に達しています(注7)。
モルガン・スタンレーが2007年に出したレポートでは、ETFの市場規模は2兆ドルを突破するとの見通しが示されています(注8)。

8.日本での海外ETF届出

海外ETFには日本の金融庁へ投信法上の届出がされているケースが2009年8月末時点で110銘柄あります(注9)。
届出済みの銘柄数、外国ETFを取り扱う日本の証券会社数共に少しずつ増加してきました。

9.年金基金やハーバード大学も注目

ETFの特徴である、低コスト高い流動性、高い透明性は様々な投資家に評価されています。
米国の最大手の年金がアクティブ運用からETFに資金を移したケースがありました(注10)。
ハーバード大学の寄付基金を管理するハーバード・マネジメントが2009年4〜6月期に台湾インデックスのETFを6,900万ドル購入しました。
また同社のETF投資銘柄も公表され、ある新興国向けETFを同社が3億1,300万ドル保有しているとのことでした(注11)。
全世界でETFを利用している機関投資家の数は実に2,000近くとの推計もあります(注12)。

10.ETFの投資対象

以前はETFが投資の対象としていたものは株式に限られていました。
しかし現在では株式はもちろんのこと、国債や社債といった債券、不動産、金・銀・プラチナや原油といったコモディティ(商品)、先進国や新興国の通貨、排出権やイスラム金融、食糧や水にテーマを置くものなど実にさまざまなものが対象になっています。
また、指数が下落した場合に利益が発生するように設計されたショート型のETFも存在しています。
(前述のすべての投資対象が日本の金融庁に届出済となっている訳ではありません(注13))

11.今後の海外ETF

当初、インターネット証券会社や外国為替証拠金取引(FX)は、一般投資家に馴染みが薄かったと思います。
しかし今では知名度が進み、低コストで運用できるメリットを享受する投資家が増加しているように思います。
今後海外ETFの認知度が進むにつれて利用する投資家が急激に増加するのではないかと思っています。
様々なおカネに対する知識を増やすことで、より良いライフデザインを描く一助になれば幸いです。

注1)週刊ダイヤモンド(2009.12.19)負けない海外投資全指南 P46より。
注2)日本経済新聞(2009.07.17)P4より
注3)ETFはExchange Traded Fundsの略。証券市場に上場している投資信託でコストが安い、価格の透明性が高いなどの特徴がある。
注4)Business Research (2009.10.01) 資産運用のコストについて P60-61
注5)筆者作成の図表より。比較期間2004.12.30から2009.12.30まで。データBloombergより。
注6)2009.12.30 1USD=92.10JPY、三菱UFJリサーチ&コンサルティングHPより。
注7)ETF Landscape Industry Preview - Year End 2009 BLACKROCK
注8)Exchange Traded Funds; Year End 2006 Global Review (2007.02.22) Morgan Stanley
注9)ETF投資戦略 P248 日経BP社(2009.11.9)
注10)急成長のETF業界 バロンズ拾い読み (2009.10.19) P7
注11)Bloomberg ハーバード大学:4-6月期の米上場株保有額がほぼ倍増――ETF購入 (2009.08.14)
注12)BlackRock ホームページ、機関投資家のETF活用状況より。データは注8)Morgan Stanleyのレポートより。
注13)米SECはレバレッジ型、ショート型のETFについて1日超保有時のリターン乖離を警告。
当資料は情報の提供を唯一の目的としており、投資勧誘をするものではありません。

(2010.3 BUSINESS RESEARCH 初出)
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注記(参考情報)

本記事は、月刊誌『BUSINESS RESEARCH』2010年3月号に『最終回』として初出したオリジナル版を、改変なく全文で再掲しています。
投資信託・海外ETF・金融商品に関する記述は執筆時点(2010年)の市況・制度に基づく参考情報です。
その後、金融商品取引法(2006年成立、2007年9月30日施行)のもとで関係法令の改正や自主規制団体のルール整備等が進み、海外ETFを取り巻く規制環境は変化しています。
また、少額投資非課税制度(NISA)は2014年1月に始まり、2024年1月からは年360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)・生涯1,800万円・保有期間無期限の新NISAとして再出発しています。
外国為替相場も大きく変動しており、例えば USD/JPY は執筆時の約92円から足元では150円超で推移するなど、為替動向が海外資産の評価額やリターンに与える影響は執筆時点とは前提が異なります。
記載内容をそのまま現在の投資判断や商品選択に当てはめるのではなく、最新の情報とあわせてご検討ください。
個別の投資判断・資産配分・税制活用は証券会社・ファイナンシャルプランナー・税理士等の専門家へご相談ください。
『おカネ学』第6回(最終回)海外分散投資の今後の主流 〜海外ETFについて〜(PDF版)

関連記事・最新データ(参考)

原典執筆(2010年3月)から16年が経過したETF市場の最新規模については、こちらの別稿で詳しく解説しています。
世界のETF資産規模は22兆4,950億ドル・商品数15,501本に到達(2026年6月末時点)
全世界で85ヶ月(7年以上)連続の資金流入が続いており、2026年6月単月で2,587億ドル、年初来(2026年1月〜6月)で1兆3,300億ドルの資金流入を記録しています(含ETP)。
2006年12月末(執筆前年)の5,790億ドル・728本から19年余で、資産規模は約38.85倍、商品数で約21.29倍に拡大しました。
日本円換算は USD/JPY=TTM 162.39(三菱UFJリサーチ&コンサルティング、2026年6月30日)で算出しています。

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安東隆司
専門家

安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

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