16年前の記事を改めて読む(5) 【住宅ローン編】「そんなバカな!」支払っているのに元金が一銭も減っていない

安東隆司

安東隆司

テーマ:所長解説のおカネ学♫

家計のおカネについて「知っていれば得をするけれど、知らなければ損をしてしまう事柄」は、16年前も今もほとんど変わりません。
筆者が2009年〜2010年、(一社)企業研究会『BUSINESS RESEARCH』に全6回のコラムを寄稿しました。
『おカネ学〜知っておくと得するパーソナル・ファイナンス〜』
投資・マンション・保険・相続・住宅ローン・海外ETFと、家計の関心領域を横断する連載を、当時のオリジナル版そのままに再掲します。
※記載内容は執筆時点(2010年頃)の制度・統計・市況に基づく参考情報です。
個別の判断・対策立案は税理士等、各部門の専門家にご相談ください。

********************
≪連載≫ おカネ学 〜知っておくと得するパーソナル・ファイナンス〜
BUSINESS RESEARCH 2010.2
第5回 「そんなバカな!」支払っているのに元金が一銭も減っていない
テーマ:住宅ローンについて
外資系プライベートバンク ディレクター
CFP ファイナンシャル・プランナー
安東 隆司

1.借入残高の減らない住宅ローン

「そんなバカな!滞りなく決められた返済額は払い続けているのに、借入した元金の額は一銭たりとも減っていないなんて!」実際に銀行の窓口であった事例です。
住宅ローンの仕組みを知らないと誰にでも起こりうることです。

2.元利均等返済

一般的な住宅ローンは元利均等返済が用いられています。
元利均等返済の住宅ローンは毎月の返済額が同一で、内訳の元金部分と利息部分の割合が毎月変わっていく形になっています。
返済額が一定であるため、返済の計画が立て易いというメリットがあります。(図表の元利均等額が返済額)

3.返済額5年固定ルールと未払い利息

変動金利型住宅ローンの返済額は5年間変更されません(注1)。
しかし金利は半年ごとに見直しがされています。
例えば、当初1.475%で借入した住宅ローンの返済額は月々103,176円です。
半年後、金利が5.00%(注2)に上昇したとすると、利息相当分だけで122,516円となってしまいます。

しかしローン返済額は103,176円で5年間変更しないため、未払いの利息が発生し、ローン残高は一切減少しないという現象が起こるわけです。
毎月103,176円支払っているのに、ローンの借入残高は減少せず、むしろ本来払うべき利息が積み重なっていくことが起こりうるわけです。

4.返済額125%ルール

未払い利息問題が発生するもうひとつの要因として、返済額125%ルールが挙げられます。
今までローン返済が月々10万円だったところが、いきなり16万円になったら家計のやりくりが付かない方もいらっしゃるでしょう。

5年ごとのローンの返済額の見直しに際し、今までの返済額から増えても+25%に抑えるというルールが存在しています。
図表の例では半年後の本来の返済額は約16万円なのですが、上限が+25%となるため、返済額は約12.5万円までに制限されてしまう訳です。
これでは、元金の返済はほとんど進まないことになってしまいます。

5.未払い利息の解消と金利水準

借入した時の金利が、借入期間の今後30年の金利水準の平均値であれば、金利が上がったり下がったりすることで未払い利息が解消する可能性があります。
しかし、昨今の金利情勢はどうでしょうか? 金利の下げ余地がほとんどなく、金利上昇の可能性がある環境下では、金利上昇局面で発生する未払い利息の解消は望めないと考えるべきでしょう。
未払い利息は「返済の先送り」となってしまい、計画30年のローンがそれ以上の期間でなくては返済できない懸念があります。
その場合は元金の減りが少ない長期のローンを組んでいるようなものなので、ローンの支払総額が大きくなってしまいます。(団体信用生命保険使用時は例外)

6.固定金利選択型住宅ローン

当初の数年間の住宅ローン金利を固定する、「固定金利選択型住宅ローン」という商品があります。
前述の「返済額5年間変更なし」や、「返済額125%ルール」の適用はないため、返済額が大きく変動する可能性があります。
しかし未払い利息問題は発生しません。

7.ライフプランと未払い利息

ある例を考えてみましょう。
子供の受験時期で予備校や入学金などで一時的に資金が必要な時に、住宅ローンの月々の返済が現状の1.6倍になってしまいました。
ローンと学費を両方共に毎月払う資力はありません。
残念ながら、子供の学費を削らなくては立ち行かないということも考えられます。
家族のライフプランを計画して考慮することにより、場合によっては未払い利息が発生してでも変動金利型住宅ローンが家族の夢の実現には欠かせないということもあるかもしれません。
ライフプラン設計を知っている方がより良い生活設計ができる例と言えるでしょう。

8.ボーナス返済の恐怖

不動産業者などのアドバイスを疑わずに、ボーナス返済の割合が多いローンを組むことは極めて危険です。
①ボーナスが出なくなった、②ボーナスが大幅に減少してしまった、③金利が上昇してボーナス返済額が急に増大してしまった、といった理由で、とてもボーナス返済が払えないという事態は回避すべきです。
通常返済が年12回で行うところ、ボーナス返済では、たった年2回で返済するために1回あたりの返済額が想定以上に大きく増加してしまう可能性が高いからです。

9.周りは皆、短期に関わる販売者サイド

∼ローンの審査OKに安心すべきでない∼
過去の拙稿「第2回 マンションについて」でも述べた事柄ですが、住宅購入時に相談する関係者はどんな人々でしょうか? 例えば不動産業者や銀行などです。
共に『不動産を売る』『住宅ローン貸出を増やす』という目的を持つ、いわば販売者側の立場の人々です。
銀行の担当者でいえば、2、3年で転勤してしまう短期に係わる人々です。
ローンを借りに来ている見込み客に、借入をしなくなるかもしれない事実をわざわざ教えてくれることを期待できるでしょうか?
あなたの一生のライフプランまで視野に入れて、「借入しない方が良いです」という銀行員に出会えるでしょうか?
短期間で転勤してしまう担当者に、あなたの一生のライフプランを任せて大丈夫でしょうか?
あなたの一生のライフプランはあなた自身がデザインする必要があります。
ローンがOKになったから安心だと思うことは極めて危険です。
現実に住宅ローンが支払えなくなり、自宅を手放して借金だけが残ったという人々もいるのです。
自分自身で様々な金融に対する知識を知り、リスクに対して自己防衛をすることが必要でしょう。
様々なおカネに対する知識を増やすことで、より良いライフデザインを描く一助になれば幸いです。

注1)本件の事例は一般的なケースを考慮しています。例外が存在する可能性があります。また計算上の数値は実際と異なる場合があります。
注2)未払い利息を説明するために極端に金利上昇する事例を用いておりますが、金利上昇が必ずこのように急ピッチに進むということではありません。

(2010.2 BUSINESS RESEARCH 初出)
********************

注記(参考情報)

本記事は、月刊誌『BUSINESS RESEARCH』2010年2月号に初出したオリジナル版を、改変なく全文で再掲しています。
『おカネ学』第5回 「そんなバカな!」支払っているのに元金が一銭も減っていない(PDF版)
住宅ローンの返済方式・変動金利商品・未払い利息の仕組みなどに関する記述は執筆時点(2010年)の制度・金利環境に基づく参考情報です。
その後、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の制度見直し、変動・固定金利商品の商品性、金利情勢は変化しています。
変動金利の5年ルール(返済額5年ごとの見直し)・125%ルール(見直し時の返済額上昇を前回の125%までに抑制)は各金融機関の約款に基づく商品設計上の慣行であり、法令で一律に定められた仕組みではありません。金利上昇局面では未払い利息が顕在化しやすくなります。
住宅ローン控除の借入限度額・控除期間・所得要件は、2024年1月以降に居住の用に供した住宅について、省エネ性能(認定住宅/ZEH水準省エネ住宅/省エネ基準適合住宅)の区分により異なります(認定住宅等は原則13年、省エネ基準適合住宅は原則10年の控除期間)。なお、2025年4月以降に着工する住宅には省エネ基準適合が義務化されています。
未払い利息の説明に用いた数値例(当初1.475%/5.00%等)は執筆時の極端な上昇を想定した試算です。実際の金利推移は金融市場統計等をご確認ください。
記載内容をそのまま現在の住宅ローン選びや返済計画に当てはめるのではなく、最新の金利水準・税制・金融機関商品設計とあわせてご検討ください。
個別の住宅ローン選び・繰上返済・借換の判断は金融機関・住宅ローンプランナー等の専門家へご相談ください。

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

安東隆司プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

安東隆司
専門家

安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

海外ETF・相続専門家の資産運用管理コンサル、RIA

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京のお金・保険
  4. 東京の資産運用
  5. 安東隆司
  6. コラム一覧
  7. 16年前の記事を改めて読む(5) 【住宅ローン編】「そんなバカな!」支払っているのに元金が一銭も減っていない

安東隆司プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼