iDeCo+企業型DCの助言解禁方向は前進か(2) 商品ラインナップの最低基準明確化と助言業の区分を

安東隆司

安東隆司

テーマ:iDeCo+NISA・つみたてNISA

前編では、iDeCoや企業型DCにおける助言解禁の議論そのものには一定の合理性がある一方で、
助言の自由化より先に、加入者が向き合う商品ラインナップそのものの質を問うべきではないか、という問題提起を行いました。
iDeCoには金融機関を選ぶ余地がありますが、企業型DCでは会社が決めた商品ラインナップの中から選ぶしかありません。
後編では、助言を広げるに当たっての課題を深掘りしてみたいと思います。

加入者本位の制度に近づけるために、本当に必要なのは何でしょうか。
筆者は、助言の要件緩和より先に、
商品ラインナップに一定の最低基準を設け、比較可能にすることが必要ではないかと考えています。

まず必要なのは、商品ラインナップの最低基準ではないか

ここで筆者が言いたいのは、「すべての金融機関やすべての企業型DCラインナップを同じにすべき」ということではありません。
老後資産形成という公的性格の強い制度である以上、最低限ここまでは備わっていてほしい商品群を、
もっと明確にするべきではないか、ということです。

例えば、NISAつみたて投資枠で用いられている「長期・積立・分散投資に適した商品」という考え方を踏まえるなら、
先進国株式あるいは全世界株式の低コストインデックス、
国内株式の低コストインデックス、
複数資産に分散できる低コストのバランス型など、
資産形成の土台となり得る商品群は、どの制度でも一定水準で備わっていてよいはずです。
NISAつみたて投資枠の開始時点では、長期・積立・分散投資に適した一定の要件を満たす商品に対象が絞られていました。

助言の拡大を検討する前提条件として、「投資家にとって資産形成に役立つ商品ラインナップ」を整える。
この優先度が高いと思うのです。

低コストの商品が十分に網羅されていなければ、高コスト商品の中からしか選べない

筆者が特に問題だと思うのは、低コスト商品が「少しある」だけでは足りない、ということです。
低コスト帯に近い商品が、きちんと網羅されていることが重要なのです。

なぜなら、加入者にとって大切なのは、市場のどこかに安い商品が存在するかどうかではありません。
自分が投資する金融機関の商品ラインナップの中に、十分に低コストで妥当な選択肢があるかどうかです。

もし、低コストの商品が十分に揃っていなければ、加入者は自由に選んでいるように見えても、
実際にはコストの高い商品の中から選ばされていることになりかねません。
「自己責任の運用」ではあっても、「十分な選択肢のある運用」とは言いにくいでしょう。

第三者が商品ラインナップに評点を付ける仕組みが必要では?

もう一つ、筆者が必要だと思うのは、第三者による商品ラインナップ評価の仕組みです。

企業型DCでは、会社の担当者が金融機関から提示を受けたラインナップ以外を選択するケースは、ほとんど無いでしょう。
企業の経理担当者や人事担当者が、投資信託のコストや運用商品の質を専門的に比較できるわけではないことが通常だと思います。
そもそも、DC制度の調査をする動機が、人事や経理担当者にはないのです。
目の前の仕事をこなすことが重要で、自ら火中の栗を拾って、仕事を増やして企業型DCのラインナップ調査をする、酔狂な担当者は、ほとんどいないでしょう。

そこで、例えば調査会社や格付会社のような第三者機関、それに準ずる中立的な評価主体が、
一定の評価基準に基づいて、DCやiDeCoの商品ラインナップに対して評点を付ける仕組みがあると、投資家の低コスト運用が実現できるようになると思うのです。

その評価項目としては、
・コスト水準、
・低コストインデックス商品の網羅性、
・系列商品の偏りが無いか、
・商品入替の頻度や姿勢 
などが考えられます。
このように、取引金融機関の低コスト運用の可能性評価が見える化されれば、企業も加入者も、どの金融機関のラインナップが加入者本位に近いのかを比較しやすくなります。

筆者は、これを「あると望ましい」程度で済ませるのではなく、
DCやiDeCoの商品ラインナップ評価を、政府や公的団体の補助のもとで進めてほしいと思います。

第三者評価や見える化がなければ、金融機関はどうしても、自社関連でコストの高い商品を推奨しやすくなる可能性があります。
助言解禁の前に、まずは助言の対象となる商品ラインナップ自体を、中立的に評価可能にする。
これこそが加入者保護、投資家の資産形成に役立つ内容ではないかと思うのです。

助言拡大するなら、現行ライセンスに加えて限定ライセンスを追加すべき

販売者である金融機関に助言を認めるとしても、助言者の立ち位置を一括りにすべきではありません。
筆者は、現行の投資助言業*ライセンスはそのまま維持したうえで、
限定的な助言ライセンスを別途追加する
考え方が必要ではないかと思います。
注* 金融庁への「登録」が正確な表現であるが、わかりやすさを優先し’ライセンス’と表記します

例えば、助言の担い手は、次のように整理できるのではないでしょうか。

まず一つ目は、フルライセンス型助言です。
これは現在の投資助言業にあたるものです。
幅広い商品や資産配分、顧客の個別事情まで含めて助言を行う助言業者です。
当然ながら、高い忠実義務や利益相反管理、情報開示が求められます。

二つ目(仮に2号)は、制度限定型助言です。
NISAやiDeCoのように、制度内の商品に対象を絞る類型です。
例えば、J-FLECの「中立アドバイザー」のように中立性を重視した担い手や、
一定の要件を満たすFP資格保有者などを対象として考える余地があるでしょう。
対象を制度内商品に絞ることで、一定の簡素化は考えられるかもしれません。
ただし、それでも中立性の確保や、販売業者から報酬を受けていないことなど、厳格な条件は必要でしょう。

三つ目(仮に第3号)は、金融機関型助言です。
これは加入者との接点の広さという意味では利便性があります。
同時に慎重であるべき領域でもあります。
なぜなら、商品提供や口座管理などを通じて、金融機関は利益相反を内包しやすい立場だからです。
適合性、コストを含めた情報開示、助言記録の保存、推奨理由の説明など、しっかりとした記録が必要でしょう。

顧客本位が実践されているかを、後日検証できる体制が必要でしょう。

同じ「助言」という言葉でも、フルライセンス型助言と、制度限定型助言と、金融機関型助言とでは、利益相反の度合いが大きく異なります。

フルライセンスの中で、更に重複のライセンスを持たず、商品販売をしない独立系の中立な立場の助言業者は、
・系列に配慮する必要がない
・コスト高の商品を選択する必要がない
・顧客の資産運用の成功のために、最良と思われる選択を顧客に伝えることが可能です。
これこそが
ハイレベルな顧客本位で、顧客と利益相反が少ない助言業者です。

一方で、金融機関勤務で自社ラインナップを進める助言業者の商品選択はどうでしょうか?
実際にもっと低コストで商品ラインナップがある金融機関があることがわかっていても、

当社のiDeCoよりも、A社のiDeCoの方が
お客様の資産運用にとっては有利です
とは、まず言わないでしょう。
自社や自分の成績が優先されるからです。

フルラインの中立な、販売者でない助言業者と、
金融機関勤務の販売者を兼業している助言者では、顧客本位の度合いが違うのです。

それを、単一の「投資助言業」というくくりで片づけてしまうことは、顧客本位の度合いを曖昧にしてしまう危険性があります。

まず整えるべきは、助言の自由度ではなく商品ラインナップ

前編でも触れた通り、筆者は限定的な助言要件緩和そのものを否定するものではありません。
しかし、商品ラインナップの質にばらつきがあり、低コスト商品が入りにくく、高コスト商品が残りやすい構造を放置したまま、助言だけを自由化するのは、投資家・加入者にとって不利益な事柄だと思います。

まず整えるべきは、助言の自由度ではありません。
加入者が向き合う商品ラインナップそのものです。

iDeCoや企業型DCは、老後の資産形成を支える大切な制度です。
だからこそ、そこに並ぶ商品には、最低限、加入者本位で、比較可能で、低コストの王道商品がきちんと含まれる制度が望ましいのです。

助言の解禁を進めるのであれば、その前提として、
・商品ラインナップの最低基準の共通化
・低コスト帯商品の十分な網羅
・第三者による評価と見える化
・助言者の区分(専業か、限定範囲助言者で販売者でないか、限定範囲で販売者か) を同時に進めるべきだと提言します。

加入者にとって本当に必要なのは、助言を受けられることだけではありません。
安心して選べる商品ラインナップが、最初から用意されていることです。


商品ラインナップの最低基準や第三者評価が伴わなければ、助言解禁は加入者保護の前進ではなく、高いコストの商品販売の後押しになってしまう可能性がある
のです。

商品ラインナップの質と透明性が改善されてこそ、助言解禁の議論も初めて加入者本位の制度改革として意味を持つのだと思います。

筆者は、iDeCoや企業型DCの議論が、
「何を勧めるか」より先に、「有利な商品ラインナップ」を問う方向へ進むことを期待したいと思います。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券その他の投資商品についての勧誘や、売買の推奨を目的としたものではありません。
本記事は信頼できると判断された情報等を基に作成しておりますが、正確性、完全性を保証するものではありません。

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安東隆司
専門家

安東隆司(投資顧問)

おカネ学株式会社 Reliable Investment Advisors Japan Co.,Ltd(英文名称 略称 RIA JAPAN)

富裕層の資産の管理や運用、承継などを行う。売買手数料0などお客様と利益相反の少ないサービスを追求。また、海外ETFを中心とした資産形成の知識・経験が豊富。テーラーメードの投資助言を大切にしている。

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