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農林中央金庫の債券含み損が約2兆2000億円との報道がありました。
25年3月期の最終赤字は1兆5000億円規模で当初の3倍規模の見通しです。
そして運用を抜本的に変える方向性を模索しているようです。
約23兆円の外国債券のうち、10兆円を売却する方向性です。
農林中金の今後の資産分散対象は?
代替の投資先としては株式や社債、企業向け融資、プライベートエクイティ(PE)、企業のローン担保証券(CLO)などの証券化商品を検討する。高金利の外債に入れ替える部分もあるものの、多様な資産に分散することで、含み損が再び膨らみ経営の懸念材料となるのを防ぐ目的だ。
日本経済新聞 2024/06/19 『農林中金、外債10兆円売却へ 損失確定
運用戦略を転換、今期最終赤字1.5兆円に』
株式が好調なこの時代に、運用損失を出した要因は、株式投資への配分が低いことでしょう。
農林中金の資産配分を%で表示すると以下です。
株式 2.3%
債券 55.6%
クレジット等 41.7%
出所:農林中央金庫 2023年度決算概要説明資料 2024/05/22
株式がわずか2.3%、株式が好調なこの時期に恩恵を得られていません。
債券55.6%、金利上昇時には債券価格は下落します。
そして「クレジット等」が41.7%です。
非伝統的資産でない、クレジット等に41.7%も投資を行っています。
債券+クレジット等の合計は 97.3%になっているのです。
特定カテゴリーへの集中投資が、失敗の要因だと考えられるのです。
今後、株式に投資を振り向ける、というのは合理的だと思います。
債券も現在の方が高い利回りである、との理由で損失計上し売却し、再投資することも理解できなくはありません。
富裕層の資産分散は慎重、透明性や換金性が重要
富裕層の資産分散でいえば、換金性や透明性が重要だと思います。
経済危機や市場崩壊、大幅な株価下落時にも、その価値を失わないことが重要なのです。
上場商品などは透明性が高く、換金性にも優れます。
一方、「プライベート 何とか」と言われる資産クラスは、この部分で上場商品には遠く及ばないケースがほとんどです。
富裕層のアドバイザーを長年行っている筆者としては
企業向け融資、プライベートエクイティ(PE)、企業のローン担保証券(CLO)などの証券化商品には危険性が伴うと思うのです。
(注 富裕層の中にもリスクを好む投資家も存在するでしょう。しかし非上場商品にばかり集中的に資産配分をすることは稀だと思われます。)
不透明な商品は中身がわかりません。
導入して良いか、良くないかを誰がどのように判断するのでしょうか?
サブプライムローン全盛期を思い起こさせる
いわゆるリーマンショックの大罪はCDO商品(サブプライムローン)でした。
筆者は米系の大手証券で業務をする中で、どうしてもこの商品に投資する意味を見出せませんでした。
「住宅ローンを借りられない層への融資をまとめて、上位の階層分けするとAAA格になる」
金融工学を駆使し、確率的には正しいのだと思います。
しかし、ドロ水はドロ水のままです。表層のキレイな部分であっても、バイ菌がいるかもしれないのです(理解を優先した例えで、科学的に正しいかどうかを保証するものではありません)。
商品部門の担当者、責任者に何度も話を聞き、私が当時出した結論は
サブプライムローンは自分では投資に値しない。
自分の親に勧めらる商品とも思わない。
だからお客様にも勧めない
サブプライムローンがその後どうなったかは皆さんがご存知のとおりです。
投資するべきでなかったと後悔する投資家が続出したのです。
今回、農林中金が追加投資を計画している、CLOはこのCDOに仕組みが似ているのです。
日本銀行と金融庁がローン担保証券(CLO)について採り上げた記事があります。
2020年6月2日に、Bloombergの記事には以下の記述があります。
さらに、CLOは同じ格付けであっても運用担当者によって運用の巧拙や資産の選定などで差異が生じることなどから、過度に外部格付けに依存せず個々のケースに応じたリスク管理態勢を整えることが重要だと強調した。
2020年3月末時点で約7兆7000億円相当のCLOを保有する農林中央金庫の奥和登理事長は5月27日の決算会見で、「金融市場のボラティリティなどから今年度は非常に不確実性が高い」と述べる一方、「CLOと同じようなリターンを得られる投資はなかなかない」として、デフォルト率と回収率などリスクを見極めるモニタリングをしていくと述べた。
『日銀と金融庁、CLO投資などで慎重姿勢呼びかけー二番底リスク警戒』
今後、長期にわたる運用姿勢と、様々なリスクを適切に判断できる組織へと成長し、農林中金が再び日本の農業事業者の期待に応える組織となることを期待しています。
※本コラムは特定の有価証券又は金融商品を勧誘するものではありません。また、特定の資産クラスに対する今後の方向性を保証するものではありません。