大学ファンド収益率マイナス2.2%、GPIF+1.5%と明暗を分けた理由は?【1】
資産運用をFPや資産運用コンサルティングに相談した結果、資産の9割を失った事件が起こっています。
そもそも、FPや資産コンサルティング会社は資産運用の個別銘柄などをアドバイスすることができない業種です。
アドバイスを適法に行い報酬を得る仕事をするには、「投資助言業」の登録が必要です。
画像:NHKニュース
FPや資産コンサルティング会社が資産運用で個別の銘柄を紹介し、アドバイス料などを取ることは、*金融商品取引法違反なのです。
*注 投資助言登録を行っている場合は適法
また、金融商品取引業の登録を受けずに、金融商品の販売は出来ません。
騙されてしまった被害者には気の毒ですが、
金融商品取引法を十分に理解していなかったことが悔やまれます。
「相談する相手を間違えた」ということでしょう。
「投資助言業」の登録を受けていない事業者のアドバイスや、
金融商品勧誘に必要な「金融商品取引業」登録なき業者の勧誘は違法なのです。
無登録事業者を信用をしないことが重要です。
なお、筆者は1994年からFPとして30年の経験を持っています。
FPの業務を否定するものでは一切ありません。
一方、業務範囲を逸脱した業務を行う者への取り締まりは、十分ではありません。
有名人を語った成りすましの投資詐欺も驚くべき被害が出ています。
そもそも、
「経済評論家」「有名人」であっても、
お金を受け取って、投資のアドバイス*をすることは出来ないのです。
*注 投資助言登録を行っている場合は適法
ただし、登録保有者が無条件に信用できるわけではありません。
FPでも、投資助言業者であっても、詐欺をはたらく者はいるでしょう。
80億円以上の被害額が出た事件の概要は?
国の登録を受けずに、高配当をうたう関連会社の社債購入を勧誘したとして、警視庁は15日、金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで、資産運用コンサルティング会社「ザ・グランシールド」(東京都中央区)社長の中村佳敬容疑者(46)=江東区=ら男女8人を逮捕したと発表した。2017年2月以降、全国36都府県の約1300人から約80億円を集めたとみられる。
逮捕された8人は、中村佳敬容疑者の他にいずれも「ザ・グランシールド」元社員でファイナンシャルプランナーの秋元宙美(38)、佐武敬子(35)、鍵井チエ(34)、池田博文(35)と、信用保証会社「トラステール」(千代田区)社長高橋章(61)、同社役員鈴木成樹(71)、法人役員竹井和徳(64)の各容疑者。8人の逮捕は14日付。
出所 東京新聞 2024/05/16 AM6:00 『資産9割失った医師の憤り「だまされた」…無登録で「高配当の社債」勧誘か、男女8人逮捕 その手口とは』
資産の9割、6000万円の被害。関東の男性医師の騙された経緯
大手生命保険会社の営業担当に転職した中村容疑者から勧められ、生命保険に加入した。2022年夏、グランシールドの社長に就いていた中村容疑者から久しぶりに連絡を受け会うと、「資産を増やしませんか」と持ちかけられた。ちょうど満期だった保険を解約し、「家族の将来のために」とトラステール社債など約6000万円分を購入した。
男性は資産の9割を失い、子どもの大学進学費用も消えた。(中略)
「今は後悔しかない」と声を震わせた。
グランシールドを巡っては、運営する歯科医院で「歯科矯正のモニターになれば実質無料で治療が受けられる」とうたい、毎月一定額の報酬を患者に払う事業もしていたが、患者への支払いが停止。昨年1月には損害賠償訴訟を起こされ、現在は破産手続き中。
出所 東京新聞 2024/05/16 AM6:00
うまい話には飛びつかない。元本保証といった途端に詐欺を疑え
社長らは、「コロナ禍で経営難に陥った医療機関などの信用保証の事業で、債権を買えば年利20%の配当を得られる」などと言って出資を勧誘していたということです。
警視庁の捜査で、事業が行われた形跡は確認されず、集めた資金を配当に回す自転車操業の状態だったとみられています。
社長と元社員はいずれもファイナンシャルプランナーの資格を持ち、最近の投資ブームのなか資産形成に関心を持つ顧客などに「NISAやiDeCoよりもお勧めだ」などと説明していたということです。
顧客に対し、「自分は、限られたファイナンシャルプランナーしか取得できない国際資格を持っている」と説明したうえで、「今回の事業は『金の卵を産む鶏』になる」などと出資を持ちかけていたということです。
出所:NHK 2024/05/15 PM17:51『コロナ禍の信用保証うたい約80億円違法集金か 会社社長ら逮捕』
関係者らによると、中村容疑者は「2016年にグラン社を設立するまで、大手生命保険会社の全国トップクラスの営業マンだった」と周囲に説明。製薬会社勤務の経験もあったといい、グラン社ではそれまでに培った人脈を生かし、顧客を勧誘していた。
東京都内に住む男性医師(45)は20年近く前、勤務先の病院に営業に来ていた中村容疑者と知り合った。(中略)
医師によると、中村容疑者は「今までお世話になった人に恩返しがしたい」「自分と縁故のある人にしか紹介していない」と熱心に勧誘。「絶対つぶれないし、年20%のリターンがある」「元本保証する」との説明に、当初は「条件が良過ぎる」と不信感を抱いたが、「詐欺なんてしなくたってお金は入ってくる」と豪語する同容疑者を信じた。
出所:時事通信 2024/05/15 PM13:28 『「絶対つぶれない」と豪語 元トップクラスの営業マン 人脈生かし顧客勧誘・中村容疑者』
繰り返しになりますが、
金融商品のアドバイスを受ける場合は、「投資助言業」の登録を受けているか調査する。
金融商品の購入には、金融商品取引業の登録を受けた者が販売しているか調査する。
せめてこの点だけは確認をしていただきたいと思います。
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以下は筆者が2021年12月27日に投稿した、『実は正しくない金融機関の情報【3】 FPが実際の銘柄助言を行うと処罰される!』から一部抜粋です。
FP協会資料にも 投資先アドバイスができないと明記
日本FP協会が発行しているパンフレット「体験相談とはひと味違う本格的なFP相談をしてみよう」のP10 下段に以下の表記があります。
https://www.jafp.or.jp/book/app/other/fp/files/soudan.pdf
金融商品取引法に基づき、「投資助言・代理業」の資格がなければ、投資助言行為など、具体的なプランや投資先のアドバイスをすることはできません
相談者の立場では、具体的な銘柄をアドバイスしてもらうことを期待するでしょう。しかし、FPは個別銘柄等のアドバイスはできない*のです。
*注 投資助言登録を行っている場合は適法
金商法でいう「助言」を深く理解することが難しく、一般に使われる「アドバイス」の意味が曖昧になっている事が、日本では世界の常識と違う道を歩んでいる要因だと思います。
FPですら、金商法に違反していると認識していない
日本では資産運用の担い手が少ないためか、「アドバイザー」表記がとても曖昧です。
米国においては、日本の投資助言業にあたるRIA(Registered Investment Adviser)の登録が無い者はアドバイザーと名乗ることが制限されています。
販売者(ブローカー、米国ではIC)はRIA登録が無ければ、アドバイザーと名乗れないのです。
世界基準のアドバイザーは、日本の自称アドバイザーとは異なる
日本では IFA(米国でいうIC =販売者 金融商品仲介業者)が自らを「アドバイザー」と名乗っています。
米国や欧州などの多くの国では、違反事象となっている、販売者が自らを「アドバイザー」と名乗り、誤解を与える名称となってしまっています。
米国などでは、アドバイザーはRIA登録者のみです。
日本でも、金融商品のアドバイスを行い、対価を得るには、「投資助言業」の登録が必要なのです。
なお、このコラムは、個別の金融機関を攻撃する目的ではありません。
金融のプロとアマチュアである投資家には、情報の格差があります。
金融機関には顧客に寄り添う姿勢を期待しています。
投資家には、金融機関のセールストークで注意すべき事例があるということを、知っていただきたいと思います。