世界で広がるETF市場、置いていかれる日本のETF市場とは?
2023年11月20日に「金融商品取引法等の一部を改正する法律」が成立しました。
同法では金融経済教育を官民一体となって推進する「金融経済教育推進機構」に関する規定も盛り込まれました。
金融経済教育推進機構とは、2024年春の設立を予定している、学校や企業等の幅広い範囲で金融経済教育を推進する機構です。
さらに、機構では顧客の立場に立った「認定アドバイザー」を認定し、リスト化・公表するとしています。
(参考:金融庁 2023年12月5日「来春の設立に向け動き出した「金融経済教育推進機構」の全容」)
こうした「認定アドバイザー」制度化に伴い、今後は日本でも「中立的なアドバイザー」の広がりが予想されます。
これまでの日本では「アドバイス」や「アドバイザー」に対して認知度が高いとは言えず、
アドバイザーに対する価値が正当に評価されていませんでした。
しかし、海外ではアドバイザーの付加価値は3%以上で4.91%とするデータもあるのです。
2023年4月5日にS&P主催の『第15回ETFコンファレンス』にて、フィナンシャルアドバイザーの重要性について講演しました。
本コラムでは講演要旨を公開します。
個人資産形成におけるフィナンシャルアドバイザーの重要性について
講演の模様はS&Pより公開されています。
https://share.vidyard.com/watch/wpDa1cwfjWMXvJLTytFRET
アドバイザーの重要性と中立性の問題
・個人投資家はもちろん、法人にとってもアドバイザーは重要
・顧客にとって良いアドバイスをするアドバイザーが必要
・2024年に設立される「金融経済教育推進機構」で中立アドバイザーの見える化が検討されている
・言い換えれば現在の日本は「中立でないアドバイザー」が多く存在している
アドバイザーと販売者の区別
・アドバイザーの定義としてアメリカでのアドバイザー事情を説明
・銀行実務2023年2月号寄稿テーマ「顧客本位をハイレベルで実現するには~中立で信頼できる助言業者の日本での確立~」
※編集注:本記事の下部に該当記事全文PDFへのリンクを記載します(発行者許諾済)
・アメリカではアドバイザーと販売者が明確に区別されている
・日本では販売者・金融商品仲介業者は証券会社の収益を一部を受け取るケースがほとんど
・このコミッション型は「頻繁な売買」「高い手数料の商品販売」が高い収益に繋がる特徴がある
・コミッション型ビジネスでは運用コストで顧客との利害が逆方向=中立アドバイザーとは言えない
・日本の「IFA」は証券外務員型、アメリカの販売者「IC」とほぼ同じで、証券の営業部門
・アメリカの「RIA」やイギリスの「IFA」は証券から収益を得ず、顧客からアドバイスフィーを受け取る
・顧客からアドバイスフィーを受け取るフィーベース
・フィーベースでは顧客の資産増加=アドバイザー報酬若干増加のため、低コスト運用助言によるWIN-WIN実現も
・RIAとは登録された投資のアドバイザーで、日本では投資助言業等がこれに当たる
・アメリカではRIA登録をしている者だけがアドバイザーと名乗れる
アドバイザーの付加価値・アドバイザーのアルファ
・アドバイザーの付加価値、アドバイザーのアルファについて紹介
・一例:相場急落時に動揺した投資家に「投げ売りをしない」よう冷静にアドバイスする「行動コーチング」など
・ラッセル・インベストメントが行動コーチングには4.91%の価値があると公表。バンガードやエンバストネットも約3%の価値があると公表
・アドバイザーの価値はこのほかにも様々な要素がある
企業の年金運用とアドバイザーの重要性
・企業は企業年金の運用責任を問われる時代に
・専門家を揃えた運用体制が必要だが、経理担当者が運用のプロという事例はほとんどない
・専門家であるアドバイザーの知見を活用する重要度が上昇
アドバイザーと顧客の信頼関係
・アメリカの調査によると、アドバイザーから助言を受けている個人投資家の63%が、アドバイザーの転職についていく意向
※出典:J.Dパワー 2021年米国個人資産運用顧客満足度調査結果より
・金融機関のブランド力でなく、アドバイザー個人の信頼で顧客と結びついている
・外資系ではマネジメントよりプライベートバンカーの存在が重要視
信頼されるアドバイザーのポイント
・顧客本位で顧客の利益を最優先に考える
・非課税制度を効率的に活用するなど、「資産の置き場=アセットロケーション」を考える
・初心者の資産形成では「低コストのインデックス型」が選択肢に
・世界的にアクティブ型を解約し、インデックス型に資金流入が続く
・とりわけETFの規模拡大が大きく、世界の投資家ツールとしての重要度が増加
・ETFなど優れたツールを活用できることが、信頼されるアドバイザーの要素の一つ
・2、3年での転勤がなく長期にリレーションを構築できることが重要
顧客に寄り添うアドバイザーに相談するメリットは
・世界一のプレイヤーにもコーチやアドバイザーがいる。
・顧客に寄り添うアドバイザーに相談することで複数のメリット享受
・プロの知見を手に入れられる
・投資家の代わりにマーケット注視
・突発事項への対処方法をコーチング
・自分が「その道のプロ」になるには時間と費用がかかり、必ず達成できるとは限らない
・病気やケガで専門医(プロ)へ相談して解決できる事例がある。
・その分野のプロには様々なノウハウが蓄積、プロの知見が重要な場合も
・アドバイザーがどうあるべきなのか、投資家や金融機関など幅広く考えることが必要
参考資料
講演資料公開中
講演にて使用した資料が公開中です。
下記リンクより閲覧が可能です。
https://ria-japan.co.jp/wp-content/uploads/2023/04/20230405-presentation-day2-1150-role-and-importance-of-financial-advisors-for-aset-building-for-individual-investors-jp.pdf
補足資料 銀行実務2023年2月号寄稿記事
アドバイザーの区別について解説時に登場した「銀行実務」の該当記事が全文PDFにて公開されています(発行者許諾済み)
「銀行実務」2023年2月号寄稿記事
「顧客本位をハイレベルで実現するには~中立で信頼できる助言業者の日本での確立~」
https://ria-japan.co.jp/wp-content/uploads/2023/01/20230201ginkojitsumu.pdf