世界の潮流、パッシブ運用比率が伸びているワケ ロバート・シラー氏が触れていないコト
2023年12月15日、ネット証券最大手のSBI証券がIPO(新規株式公開)銘柄の株価を操作したとして、
証券取引等監視委員会は金融庁に行政処分するように勧告したと報じられました。
SBI証券は「初値」が、株式を売り出す際の「公募価格」を下回らないよう、取り引きのある業者などに頼んで実勢を反映しない買い注文を集めていたということで、3つの銘柄の「初値」はいずれも「公募価格」を上回りました。
2023年12月15日 NHKニュースより引用
初値操作はIFA・ヘッジファンドを活用
報道によると、SBI証券は上場日の取引開始前に、買い注文を集める目標を設定していました。
買い注文の指値は公開価格と同水準とし、初値が公開価格を下回らないよう操作していたと報じられています。
また、初値の操作に2つのルートを活用したと報じられています。
・IFA(金融仲介業者)を通じた買い注文
顧客に対し、対面で営業するIFA 3社を通じて、174人の顧客投資家に買い注文を出させたとされています。
・ヘッジファンドなどによる買い注文
機関投資家 営業部長が主導して、社員が投資家9社に対して買い付けの勧誘をしていました。
処分では業務改善命令や業務停止命令が課される可能性も
証券会社が「作為的な相場になる」と知りながら注文を受け付けることは法令で禁止されています。
証券取引等監視委員会は、今回の初値操作が金融商品取引法の「作為的相場形成」で、
公正な価格形成を妨げる法令違反だと判断し、金融庁に行政処分するように勧告しました。
過去、2017年8月に同じ条文で行政処分を受けたヤマゲン証券では、業務改善命令と業務停止命令の両方が課せられました。
多くの大企業の暗部が暴露された2023年。原因は収益至上主義か
振り返ってみると、2023年は複数の大企業の不正が報じられました。
・中古車販売大手業者の保険金不正請求問題
・国内軽自動車販売シェア1位を長年獲得していた自動車メーターの認証不正問題
・損害保険大手4社による企業向け保険の価格調整問題 等
こうした不正に根差している原因の一つに収益至上主義があると考えられます。
収益至上主義は「企業の収益を最重要視する文化」とここでは定義します。
収益・売上を最重要視するあまり、高い販売目標・ノルマを営業部門に課しがちです。
その結果、多くの営業員は顧客が望んでいる物と乖離した商品を強気に営業してしまいます。
また営業面以外でも効率化や時間短縮ノルマもあるでしょう。
開発期間の短縮化を目標とされた結果、手順の省略による不正の事例などがこれに当たります。
2023年以前にも大手企業による不正の問題がありました。
・生命保険会社による不適切な保険勧誘問題
・銀行による「融資基準を満たしていない者」の書類改ざん、不正融資問題
これらも問題が起きた背景に「収益至上主義」があったのではないかと考えられます。
コンプライアンス意識の欠如・高いノルマ・ガバナンスの問題
こうした企業では多くの場合、収益を上げるために上層部が不正行為を推奨・黙認する傾向があります。
その結果、現場では不正行為をしないとノルマが達成できないのです。
更に、ガバナンス態勢に問題があり、不正行為を検知・是正することができず、更なる不正行為が加速してしまうのです。
金融庁長官(当時)「社会的に続ける価値があるものですか?」
確かに資本主義社会の日本では、競合他社より収益を伸ばすことは重要です。
しかし、その結果お客様を蔑ろにする企業風土では、真のサービス提供者にはなれないと我々は考えます。
かつて、日本の金融業界では手数料収益が重視され、金融商品の回転売買が横行していました。
そこで、2017年、当時の森金融庁長官が大きなメッセージを発表しました。
手数料獲得が優先され顧客の利益が軽視される結果、顧客の資産を増やすことができないビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるものですか?
(出典)日本証券アナリスト協会 第8回国際セミナー「資産運用ビジネスの新しい動きとそれに向けた戦略」における森金融庁長官基調講演 2017年4月7日(当時長官)
このメッセージは金融業界を激震させました。
継続的な金融庁からの働きかけも功を奏し、多くの企業で販売手数料低下、信託報酬などのコスト低下潮流が広がりました。
(残念ながら、現在でも回転売買の文化は一部残っていると感じています)
今こそ求められる「顧客本位」
筆者はメガバンクに17年勤務しました。
銀行は社会的な存在である、と信じて入行しました。
しかし、指導者によっては「収益至上主義」を文化とし、
時に顧客の都合よりも成績・ノルマが重視される文化でした。
自分では絶対に買わないモノを、お客様に勧めるのはオカシイ。
私の場合は、ノルマから解放され、別の人事評価体系での評価に繋がったのは「プライベートバンク構想」提案でした。
2023年の今でこそ、多くの金融機関が「ウェルス・マネジメント」に踏み出しています。
筆者が「プライベートバンク構想」を提言したのは1999年でした。
「顧客にとって必要なものを、必要なタイミングで提供する」
販売者が売りたいものを押し付けるのではなく、個客ニーズに合致したサービス、商品を提案する形だったのです。
RIA JAPANは長年にわたり、多くの場所で顧客本位の重要性について、メッセージを発表してきました。
一部を紹介します。
2017年6月17日には日本FP協会 東京支部のスタディグループで「顧客本位の業務運営(フィデュ―シャリーデューティー)」をテーマにFP向けにセミナー講師を務めました。
『顧客本位の業務運営 ~フィデューシャリー・デューティの実践~』 FP向けセミナー
更に2017年9月16日には、「フィデュ―シャリーデューティー 顧客本位の業務運営」を日本FP学会第18回大会にて発表しました。
2020年8月18日には東京国際金融機構(Fincity.Tokyo)にて、
『「投資家・顧客本位」の実現という、社会的課題解決のための提言』を発表しました。
※2023年3月末を以て新興企業会員の期間満了に伴い、東京国際金融機構(FinCity.Tokyo)を退会しました。
「世界基準のアドバイザー育成」~情報開示・利益相反の更なる開示、「金融ケイパビリティ向上」「金融人材の活用」という3つを当時提言しました。
RIA JAPANでは今後も「お客様に対して誠実に正直に」「お客様とWIN-WINの関係を構築する」ことの更なる実践を続けていきます。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の有価証券その他の投資商品についての勧誘や、売買の推奨を目的としたものではありません。
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