RIAとは?公認された投資アドバイザーが米国では中核に
外資系プライベート・バンキング(PB)の強みは何でしょうか。
1999年から富裕層分野を研究し、日系銀行富裕層担当、米系証券PB、欧州系信託PBを卒業した安東隆司が考える最低の要件は以下です。
オープン・アーキテクチャー
転勤のない長期ソリューション
顧客本位の体制
PBの必要要件、オープン・アーキテクチャーとは?
オープン・アーキテクチャーは、「系列に配慮することなく様々な金融機関の商品選択が可能であること」と定義します。
世界の様々な金融機関とのコネクションがあり、同一条件の商品組成で最も有利(と思われる)コストでの組成が可能である場合などです。
仕組み債の圧倒的なコスト差異
EB債のコストが高すぎることで批判を浴びる仕組み債ですが、仕組み債の全てが悪ということではないと考えます。
例えば金利差に着目した通貨の仕組み債などでは、きちんとした組成を行えば投資家がメリットを感じる商品組成もあり得ます。
(筆者はPB卒業後に仕組み債の販売や助言を行っていません。我田引水で申し上げている内容ではないことを明言しておきます)
かつて勤務していた欧州系のPBは、オープン・アーキテクチャーを実践できた数少ない金融機関でした。
日本の金融機関で取引する投資家が、欧州系のPBに同条件で商品組成をするとどうなるかの打診がありました。
オープン・アーキテクチャーを実践できたPBの顧客提案条件は、日系金融機関の条件よりも数%も投資家が有利な条件となりました。
好条件を出してくれるカウンターパーティ(取引相手方)のコネクションがあるため、好条件の提示が可能でした。
日系では、自社の海外拠点を使う前提だったか、限られた相手方だったので、最良の条件提示には”はるか及ばない”という現実があったのです。
系列が価格に優先する日系のグループ運営
日系金融機関が相次いでプライベート・バンク部 などを設立しました。富裕層部門での取引ボリュームが大きいことに着目した経営戦略だと思います。
しかし、前述したとおり、日系はグループの海外会社等の取引を優先するため、価格競争力のない、店頭販売と何ら変わらない条件を富裕層に提示しました。
情報の集まる富裕層は、当時欧州系のPBに同条件で条件の打診を行い、圧倒的に条件のよいPBで商品組成に至る構造がみられたのです。
そもそも、オープン・アーキテクチャーを実践できない日系はPBなのか
富裕層から選ばれるPBは、顧客にとって好条件を出すことのできる金融機関です。
オープン・アーキテクチャーを実践できない「自称PB」は本来のPBとはかけ離れていたのです。
元プライベート・バンカーを語る者でも、日系PBしか経験していない人々や、日系の経営者には未だに理解がされていない事柄だと思います。
そのほかPBに必要な、転勤のない長期ソリューション、顧客本位の体制については今回の詳しい説明は割愛します。
仕組み債組成コストも開示
かつて勤務していた欧州系PBでは、仕組み商品の組成のコストを顧客に全面開示していました。
結果として、組成コストも適正な水準となっていたのです。
この組成コストの違いも、投資家にとっては有利な条件提示だった理由です。
日系との提携後に撤退、PB文化が失われる場合も
日本での外資系PBの歴史では、進出/撤退を繰り返す金融機関があります。
多くの営業担当を採用し、その後日本オフィスを撤退、シンガポールなどにアジア拠点を持っていくケースがそれです。
オフィス撤退で人員整理をする結果、コスト削減が可能という構図です。
完全撤退以外の選択肢は日系との提携や合弁会社設立でしょう。
提携や合併などの当時は、「現在の優れたPB文化を守る」と言っていても、数年経過し日本の金融グループの理論が優先される結果となったケースが多く見られます。
気が付くと、オープン・アーキテクチャーや顧客想いの富裕層に選ばれるサービスは低下や消滅し、日系金融機関の文化に染まる結果となったケースが過去には多くみられました。
そして、実質撤退へ
提携などがあった後に、外資系は実質的に撤退しているケースも過去には多く見られます。
看板は外資系のようですが、中身は外資系PBの文化が失われているケースも多いのです。
そもそも、外資系の「ブランド使用料」が数億円と高額で、立派なオフィスや派手なイベントなど、収益の黒字化が難しい展開が多く見られました。
外資系は撤退の選択を考慮するタイミングで、日系との提携を模索するケースも考えられます。
残念なケースでは段階を踏んで、いずれ外資系PB文化が失われ、日系金融機関のグループ統制の傘下となってしまう歴史が数多く残されています。
日系金融グループ幹部、PB文化を残すか
日系金融機関が外資系PBを買収や業務提携するケースが増えてきています。富裕層に特化してきたノウハウを吸収したいとの意図があるのでしょう。
筆者が思う、PBとしての必須条件は冒頭に挙げたとおりです。
外資系PBのあるべき姿を残せるのか。
看板だけ外資系で中身は日系に変わってしまうのか。
現場の声を理解し、本来のPBを継承できるかは、グループトップの考え方にかかっていると思います。
数年間でグループのトップも変わります。
採算性の低いPB部門はコストカットの標的となっても不思議ではありません。
合理化できると考えて、文化を失う歴史が繰り返されてきました。
日本でのPBの今後の動向は、グループ経営トップの判断次第だと思うのです。
(あくまで筆者の私見を述べたものです。将来が過去と同様に進むと断言するものではありません)
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