2023年度GPIFリターン1.50%。2022年暦年▼4.78%から復活の要因は何だったのか
サブリース事業者の倒産で、ローンの返済に不安を抱える不動産オーナーが増えています。筆者はメガバンク勤務時代に長年、アパート、ビル事業の融資審査の責任者をしてきました。不動産担保で融資を受ける際に事前に知っておくべきサブリースの基礎知識を解説します。
■不動産投資は簡単に得られる不老所得ではない
「年金代わりにお金を毎月受け取れる」、「老後が不安なので不動産オーナーになれば大丈夫」と思ってシェアハウス事業への投資をした人も多いでしょう。しかし、不動産事業は簡単に得られる不老所得ではありません。安易に「販売者」である業者や金融機関を盲信してしまうと、今回のサブリース会社倒産のような被害を被ることにもなりかねないのです。
■サブリースのメリットと事業者の破綻
「直接、アパートの借主募集や、アパートの借主との契約をしなくてよい」「長期間、家賃の保証がされているので大丈夫」「空き家が出てもサブリース(又貸し)会社が保証してくれるから大丈夫」というサブリースの便利な面を信じて、不動産投資を決意した方々もいらっしゃるでしょう。しかし、2018年5月にシェアハウス事業者2社が相次ぎ破産しました。賃料が振り込まれなくなり、借入した金融機関の返済が滞る心配をしているケースもあるでしょう。
■今さら聞けないサブリースとは
サブリース業者は、賃貸アパートや賃貸マンションをオーナー(所有者)から一括で借り上げ、一定の家賃を支払うものです。例えば家賃を100としますと、サブリース業者が手数料10を受け取り、90をオーナーに支払うというような形式です。更にサブリース業者が賃貸物件に空室が出た場合の「家賃保証」を行う場合もあります。
富裕層や著名人が直接不動産オーナーとなり、50戸の賃貸マンションの不動産の募集を行ったり、借主と契約したりする場合を考えてみましょう。50枚の契約書に著名人の住所、氏名が出てしまうので、プライバシー保護の観点から敬遠する場合が多いでしょう。
対して、1棟まるごとサブリース会社に賃貸し、サブリース会社がマンションの入居者との契約を行うのであれば、オーナーが自ら契約する必要がありません。オーナーがその地域の不動産賃貸マーケットに精通していない場合や、自身の事業へ時間を配分したい場合などはサブリース業者を使うメリットがあるでしょう。またサブリース事業者側は、同じ地域の物件をまとめて管理できれば効率性が上がります。オーナー、サブリース業者ともに賃貸物件が安定的に稼働するならば、将来にわたって安定的な収入を得ることもできるでしょう。
■サブリース関連の5つのリスク
ここでサブリース関連のリスクを5つに大別してみましょう。
1)ネコババ、倒産リスク ……サブリース業者が賃料を受領した時点で、オーナーへ支払わずにネコババしてしまい連絡が取れなくなってしまう可能性があります。例えばサブリース業者が倒産するなどして、本来入金するはずの賃料が入らなくなってしまいます。
2)賃料変更リスク ……サブリース契約では2年毎に賃料を見直す契約になっていることが多くあります。この場合「30年一括借り上げ」をうたっていても、賃料水準は2年毎に変更となるので注意が必要です。新築時点では高い家賃水準、稼働率も高く満室であったとしても、年月が経過すると賃料水準が下がったり、賃貸できずに空室であった期間などもあったりするでしょう。すると、当初の家賃水準とは異なる水準に「2年後」は変更されて家賃が支払われる場合もあります。ローンの借り過ぎでは、ローン支払い額よりも家賃が低くなるケースも考えられるのです。
3)空室保障免責リスク ……空室であるのに無制限に賃料を払ってもらうような、「打ち出の小槌」のような方法は存在しません。免責になる条項が契約書に示されている場合もあります。
4)サブリース解約条項 ……例えば30年という期間でサブリース契約を結んだ場合であっても、サブリース期間中に業者が解約できる場合もあります。
5)修繕費用負担リスク ……サブリースに限った話ではありませんが、賃貸物件も経年で劣化してしまいます。長年使用して黄ばんだ壁紙、水道管や外壁の塗装、エレベータの部品交換、エアコン設備の更改など、一定期間で様々な箇所に修繕の必要が出てきます。入ってきた家賃を全て使ってよいわけではなく、将来の修繕に備える必要があるといえるでしょう。
便利なサブリースであっても、不動産賃貸事業を行う時には、このような様々なリスクが存在することを事前にしっかりと認識することが必要です。事前にしっかりと検証をせず、業者のセールストークに酔いしれてしまわないように注意してください。
契約時に不安を感じながらも、もう後戻りができないと思って契約してしまうことは避けた方がよいでしょう。投資は自己責任なので、勇気をもって契約しないリスク回避も必要です。そのために自身の知識を十分に持ち、契約する前に契約内容を十分に検討する必要があります。知識が自分を守ることになるのです。
※本記事は昨年6月に公開された記事を基に再掲しております。
安東隆司 著書に『個人型確定拠出年金iDeCo プロの運用教えてあげる!!』等がある。