投信の手数料打ち切りも 米国投資家に学ぶべきコト
2017年以降の米国の株式市場では、IT関連企業が株価上昇を牽引し、米国株式に良好なパフォーマンスをもたらしてきました。フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル(アルファベット)の頭文字をとった「FANG銘柄」、さらにアップルを加えた「FAANG銘柄」といった造語も登場しています。
この恩恵を得たいと「情報技術セクター」への投資を行ってきた投資家もいるでしょう。しかし、この「情報技術セクター」から、フェイスブックやグーグルが除外されることは日本ではまだ、あまり知られていません。インデックス投資家は注意が必要です。
■2018年9月に予定されているセクター大移動の中身
2018年9月28日の引け後に予定されている「セクター大移動」の影響は大規模なスケールになるでしょう。ポートフォリオの見直しが必要になる投資家、機関投資家は相当数にのぼると考えています。
世界産業分類(GICS)では、様々な会社を現在11の産業に分類しています。その産業分類では2018年8月時点では以下、11のセクターに分かれています。
(1)エネルギー、(2)素材、(3)資本財・サービス、(4)一般消費財・サービス、(5)生活必需品、(6)ヘルスケア、(7)情報技術、(8)電気通信サービス、(9)公共事業、(10)金融、(11)不動産です。
過去のセクターの変更では、2016年に「金融」から「不動産」が分離して新たなセクターが出来た経緯があります。そして2018年8月時点、フェイスブックやグーグルは「情報技術」セクターに分類されています。
「情報技術」分野には様々な側面があります。自動運転やAI、ロボティクス、フィンテックなど、これからの新しいビジネスの多くがこの分野に関わっています。この分野の成長性を期待する投資家もいるでしょう。
■投資家への影響は? 投資信託、ETF保有者は注意?
まず投資信託を保有している投資家への影響をみてみましょう。投資家の中にはテーマ型投信に投資しているケースもあるでしょう。例えば、グーグルやフェイスブックのサービスをユーザーとして使用し、身近な銘柄と感じてこれらの銘柄が組み込まれている「情報技術」テーマの投信に投資している場合です。しかし、これらの2銘柄は2018年9月末からは情報技術セクターからは除外されます。
現在、不透明な部分として、投資信託の運用指針が、以下のどの方針を選択するのか、フタを開けてみないとわからない場合が多いと考えられます。
1) セクターとしての「情報技術セクター」に投資する方針
2) グーグル、フェイスブックを含めたFANG銘柄が含まれるセクターを追いかける方針
3) FANG銘柄など、個別の銘柄をセレクトする方針
次にETFを保有している投資家への影響を確認しましょう。
産業分類を指標(インデックス)としたETFでは、セクターの見直し前後で保有銘柄が変わる見込みです。例えば「情報技術セクター」では、時価評価が大きなグーグル、フェイスブック銘柄が除外されます。除外された部分は、「情報技術セクター」の下位銘柄が買われることになるでしょう。かつてフェイスブック、グーグルをイメージして投資していた、「情報技術セクター」のETFにはこれらの銘柄が含まれないというわけになります。
様々なインデックスを作成している、インデックス・プロバイダーも世界産業分類を採用しています。世界的な大手である、「S&P グローバル インデックス」「MSCI」は共にこの世界産業分類を使用しています。余談ですがMSCIは以前、モルガン・スタンレー・キャピタ・インターナショナルでしたが、現在は「MSCI Inc」を英文社名として使用しています。
■フェイスブックとグーグルは新セクター「コミュニケーション・サービス」へ
では、上記2社はどこのセクターに属するのでしょうか? 今回のセクターの変更や移動はかなり広範囲に行われます。従来の「電気通信サービス」セクターは名称変更を行い、「Communication Services」セクターとなり、ここに分類されることになります。(日本語での名称は「コミュニケーション・サービス」セクター)
そして、従来の「電気通信サービス」セクターでは産業全体へのインパクトは2%程度と言われていますが、新セクター「コミュニケーション・サービス」では約10%のインパクトを持つ重要なセクターとなるでしょう。
■新「コミュニケーション・サービス」セクターに含まれる銘柄は?
新「コミュニケーション・サービス」に分類される銘柄を一部以下に記載します。日本の投資家にも馴染みのあるものが多くあります。
情報技術セクター(2018年8月時点、以下同)
フェイスブック、グーグル(社名はアルファベット)
一般消費財
ディズニー、コムキャスト、ネットフリックス
これ以外には、ベライゾン・コミュニケーションズ、AT&T、チャーター・コミュニケーションズ、アクティビジョン・ブリザードなどです。
■「コミュニケーション・サービス」対応のETFにはまだ投資できない?
新「コミュニケーション・サービス」を投資対象とした海外ETFは、2018年6月18日に運用を開始しています。しかしながら日本の一般投資家は、日本において登録されたETF銘柄でないと投資ができない仕組みとなっています。日本で登録されるかどうかは未だ不明ながら、心待ちにするセクター投資家もいるでしょう。
※注:今回採り上げた債券や投信、為替に対して売買推奨や、今後の見通しを述べたものではありません。また特定の金融機関との取引を勧めるものではありません。
安東隆司 著書に『個人型確定拠出年金iDeCo プロの運用教えてあげる!』等がある。