「褒める・否定しない」の罠。親が我慢をやめると子どものイライラが収まる心理学

大戸明奈

大戸明奈

テーマ:子育て

「子どもをたくさん褒めて育てよう」
「子どもの気持ちを否定せず、ありのままを受け止めてあげよう」

子育て本やSNSなどでこのような言葉を目にし、お子さんのために日々一生懸命実践されている親御さんはとても多くいらっしゃいます。

ですが、子どもの気持ちに寄り添おうと怒りをぐっとこらえて頑張っているのに、

「なぜか子どもが毎回同じようなことでキレてくる」
「不機嫌やわがままがエスカレートして、親のほうが疲弊してしまう」

と悩んでしまうことはありませんか?

実は、偉そうなことを言っている私自身も、かつては全く同じ泥沼にハマり、深く悩んでいた時期がありました。

「否定しちゃいけない」
「子どもを受け止めなきゃ」

と必死になるあまり、自分の限界に目を瞑って我慢を重ね、結果として子どもの不機嫌に振り回されて心がボロボロになってしまっていたのです。

ですが、ある「子育ての罠」に気づいて自分自身の関わり方を変えてから、子どものイライラも私自身の疲弊もすーっと収まっていきました。

これは親御さんの努力不足でも、お子さんの性格の問題でもありません。

そこには「褒める・否定しない」という言葉の捉え方による、大きな勘違いが隠れているのです。

①「否定しない」と「親が我慢する」は違います

真面目で優しい親御さんほど陥りやすいのが、

「否定しない=親が何をされても耐え、子どもの言い分や不機嫌を受け入れること」

という思い込みです。

子どもが理不尽に怒り出したり、機嫌が悪くなったりしたとき、親が無理に機嫌を取ろうとしたり、自分の限界を押し殺して対応し続けたりすると、どうなるでしょうか。

子どもは無意識のうちに、こんなパターンを学習してしまいます。

「キレれば親は思い通りになる」
「不機嫌になれば、自分の不快な感情を親が何とかしてくれる」

親御さんが自分を犠牲にして我慢を重ねるほど、子どもは自分の感情をコントロールする力を育てる機会を失い、他者(親)に依存するようになってしまいます。

その結果として、「同じことで何度もキレる」
という泥沼から抜け出せなくなってしまうのです。


②子どもが「褒めて!」と言うときに本当に欲しいもの

また「褒める」ということについても少し注意が必要です。

子どもから「もっと褒めて!」「私のことを見て!」と言われると、つい「すごいね!」「えらいね!」と評価する言葉をかけてしまいがちですよね。

ですが、子どもが本当に求めているのは「上からの評価」ではありません。

常に評価され続けていると、子どもは

「良い成果を出さないと愛されないのではないか」
「失敗したら自分の価値がなくなってしまうのではないか」

という不安を感じ、かえって感情が不安定になることがあります。

子どもが本当に欲しがっているのは、

「自分の頑張りや葛藤を、大好きな親が見ていてくれる」

という存在の安心感なのです。

評価して褒める:「100点取れてすごいね!えらい!」
事実を見て共感する:「昨日も遅くまで机に向かっていたものね。最後までよく頑張ったね」

「評価」ではなく、「見ていた事実と共感」を伝えてあげること。

これこそが、子どもの心を本当の意味で満たす関わり方です。


③親が我慢をやめると、子どものイライラは収まります

では、不機嫌や暴言を繰り返すお子さんに対して、どのように向き合えばよいのでしょうか。

解決への大切な第一歩は、

「親自身が無理な我慢をやめ、子どもとの間に健やかな境界線を引き直すこと」
です。

子どもが不機嫌になるのは、あくまで「子どもの課題」であって、親が代わりに解決してあげる必要はありません。

親御さんにも、自分の心の平穏を守る権利があります。

具体的には、次のような接し方を意識してみてください。

土俵に上がらず、物理的に距離を置く
子どもが理不尽にキレ始めたら、説得しようとせず

「今は感情が高ぶっているね。落ち着いたら話そうね」

と短く伝え、別室に移動するなどしてそっと距離を置きます。


「私(I)」を主語にして限界を伝える

子どもを責める言葉(YOUメッセージ)ではなく、主語を「私(親)」にして自分の状態を伝えます(Iメッセージ)。

NG:「あなたがそんな態度だからイライラするのよ!」(相手への攻撃)
OK:「お母さんも今ちょっと疲れていて余裕がないんだ。少し休むね」(自分の状態の開示)

親が「これ以上は踏み込ませないよ」という一貫した姿勢を示すと、子どもは最初こそ反発しますが、やがて「怒っても親をコントロールすることはできないんだ」と気づき、自分の感情と自分自身で向き合い始めます。




「否定しない子育て」とは、親が子どもの感情のサンドバッグになることではありません。

私自身、我慢するのをやめて「省エネな親」になってからの方か、子どもとの関係もぐっと穏やかになり、お互いに笑顔で過ごせる時間が増えました。

親が我慢をやめ、自分自身の感情や限界を大切にする姿を見せることで、子どもは「他人の限界を尊重すること」や「自分自身を大切にすること」を学ぶ事ができるのです。

今日から子どもの機嫌を取るのを少しだけお休みして、ご自身の心を休める「省エネ子育て」を始めてみませんか?

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大戸明奈
専門家

大戸明奈(リトミック講師)

合同会社OTOあんどっと

子どもの脳や体の土台を作る「感覚統合」を月齢・年齢に合わせ、リトミックで楽しく導入し、保護者にも理論的に情報を提供。個々の優位感覚に合わせた柔軟な指導で、自分らしく生き抜く力も育みます。

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