「支配型」VS「支援型」~サーバント・リーダーシップのすすめ~

伊東久

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 ビジネスの現場では主に上司と部下の間で「説教」が盛んに行われています。私はこの説教は、「相手を支配する」ことだと思っています。答えの出てこない詰問を使って感情をぶつけたり、否定的且つ限定的な質問や失敗を認めさせる質問など、責任の所在を問いただして相手を支配していると、前回のコラム→「詰問」VS「質問」~ある管理職の悩み~でお伝えしました。今回は、「支配型」から「支援型」に切り替える“サーバント・リーダーシップ”についてお話したいと思います。

部下たちの悩み

 入社2年目から4年目の社員研修の現場で、上司とのコミュニケーションについての悩みを聞いてみました。部下たちの多くは「指示が多くて困っている」「突然、面倒な仕事が入る」「指示に対して『はい』しか言えない」と、上司からの指導にこのように悩んでいます。もちろん、そうならないためにも部下自身がもっと主体性を身につけないといけないのですが、なかなか口に出せず我慢をしてしまっているのが現状のようです。部下たちの悩みに対する突破口はこちらのコラム→上司への不満を解決する方法をご覧ください。
 逆に上司たちはどう考えているのでしょうか。それは「自分からすすんで仕事をしない」「積極性がなく発言が少ない」「指示をしたことの意味を理解していないので、応用が利かない」こんなことを言っています。さて、この上司の意見と部下の悩みの関連性を、皆さんはどう考えますか?

気持ちが晴れた部下

 私の経験談です。評価が良くない一人の社員が、私の部署に配属になりました。人事部から、「この社員は、どの部署でも上司から『使えない』と言われている。退職を勧めても納得しない。君のところで最後の面倒をみてくれないか」とのことでした。どうやら、上司の指示に反発したり従わないことも多く、いわゆる問題児扱いをされていたようでした。私は快く「承知しました」と返事をして引き受けました。

 配属されてその社員と先ずは話をしました。話した内容はこうです。

 私:「今、生活は楽しい?」
 社員:「いや、仕事ばかりで悩んで苦痛です」
 私:「そうか、何か趣味でもある?」
 社員:「はい、釣りが好きなんですが、誰も知らないと思います」
 私:「それはいい、私も少しやったことがある。どんなところが惹かれるの?」
 社員:「釣りをやっていると、集中して心が無になれるんです。竿先をじっとみていると期待に溢れて...」
私:「それ、同じだ!」
・・・少し釣り談義の後、
 私:「ところで、仕事は楽しい?」
 社員:「いや」
 私:「この仕事は好き?」
 社員:「嫌いです」
 私:「どんなところが嫌いなの?」
 社員:「お客さんと接しているとき、上手くこちらの気持ちが伝えられないからです」
 私:「そうか、それは辛いね。ずっと我慢しながらやっているのは、耐えられないよな」
 社員:「上司からいつも無理なお願いばかり頼まれて、上手くお客さんと対応できないと怒られてばかりで...」

・・・会話は約40分続きました。

 この後、社員は気持ちが晴れたのか、気持ちよく仕事を進めてくれました。私からの指示に対し、分からない時は必ず質問し、目的ややり方等を把握した上で、自分なりの工夫をして一生懸命に取り組んでいました。人事部から聞いていた話とは全く違う仕事ぶりでした。
 約1ヶ月過ぎたころ、この社員から退職を申し出てきました。理由はこうです。「やはり私には合わない仕事だと分かりました。でもどうしたら気持ちよく仕事をすればいいのか良く理解できました。次は自分の個性が活かせる仕事を探します」。これに対し私は快く承諾しました。上昇志向はあったのですね。

本人が上手く成果を出せるよう支援する

 先ほどの社員の悩みはこうです。お客さんと上手く話せないことに対し、指示ばかりが多くプレッシャーになっていました。従って、悩みが解決に至らずプレッシャーばかりが増えていきました。このことに上司が気づけていなかったのです。後から分かったのですが、過去の上司は「それくらいは自分で解決しないと強くなれない!」と言っていたそうです。まさに「支配型」で仕事を与え、百戦錬磨の中から解決策は自分で見つけ出すという手法を使っていました。このままではいくら頑張っても辛さだけが残ってしまい、能力があっても活かせないまま終わってしまうことになります。
 
 支援型の指導とは、単純に「本人が上手く成果を出せるように支援する」ことだと思います。成果を出してもらうために、「私は何を手助けしたらいいか?」を常に考えることではないでしょうか。先ずは悩みを解決することから始め、目的の理解なのか、やり方が分からないのか、そもそもやっているつもりだけなのか、そういう観点で手法を指導していかなければならないのです。そのためには自分で答えを出させるための「質問力」が最も有効です。こちらからの答えの提供だけではなく、自分で考えさせて、自分の答えを持った時、ものすごい大きな力を発揮します。これが「サーバント・リーダーシップ」という支援型の指導です。

サーバント・リーダーシップのすすめ

 ある管理職に質問しました。「あなたが過去で一番成長したと思えるのはどんな時でしたか?その時はどういう指導を受けていましたか?」。それに対し「とにかく質問攻めに遭い、自分で結論を考えさせられました」と答えました。まさに上司の支援があっただからでしょう。このサーバント・リーダーシップを発揮すれば、冒頭で述べた「部下たちの悩み」は解決するのではないでしょうか。
 
 おもてなし経営研究所では、リーダーシップのあり方を根本的に支援型で考えています。それは「人の成長の手助け」に他ならないからです。私たちの組織活性化プログラムでは、「エンゲージメントを高める組織づくり」として、目標管理思考を始め、PDCAサイクルの改善や、コミュニケーションツールの見直しなどを行い、社員が組織への愛着心と働きがいを固めるためのお手伝いをしています。

どうぞこちらからお問い合わせください。→おもてなし経営研究所「組織活性化プログラム」

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伊東久
専門家

伊東久(経営コンサルタント)

株式会社おもてなし経営研究所

現場での接客と、組織マネジメントの経験を併せ持った視点から、顧客に愛され支持される「おもてなし経営」を目指した組織づくりを支援。従業員の力を引き出すコンサルティングと豊富な経験談を交えた研修が好評。

伊東久プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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