プロとは?~常にアマチュアの視点を持つのがプロ
【はじめに】
何故か年末が近づくこの時期は
年齢・現職に関係なく起業・独立についての相談が増えてきます。
昨年もそうでしたが年の瀬になると来年は第二の人生を
真剣に考えようと思うものなのでしょうか?
若い世代は現状打破のためには早期退職を辞せず、
思い立ったが吉日、といったアクティブな想いからの相談。
シニア世代は間近に迫った定年を見据えた世代や
既に定年を迎え、選択を迫られる中での相談でした。
いろいろと話を進めていきますと、
若い世代もシニア世代もいろいろな悩みを口にします。
ごく簡単にまとめると
若い世代は「まだ(実行に移すには)早いのでは?」
シニア世代は「この歳ではもう遅すぎるのでは?」
そして共通するのが
「果たして自分にとって本当に起業・独立が最適な選択なのか?」
強い想いを持って、事業計画を練ってきた自負を持ちつつも
上記のような根幹にある不安は完全には払拭出来ていない様です。
今日は私自身の経歴からこの点について思うことを
ランダムに書いてみました。
【資格の取得のタイミングは】
ここからは私自身が体験した一番身近な事例である
資格起業の場合を例にとっていきます。
何度もこのコラムも書いてますが
私は27才の時に営業職の合間に勉強して資格を取得しました。
とは言え、この資格でこういった仕事に就きたい、
こういう仕事で社会に貢献したい等の気持ちは皆無でした。
ただ単に運転免許証以外の公的資格が欲しかった。
後付けの理由として会社を離れても「食い扶持」の
確保が出来るのではというかなりいい加減なものでした。
とはいえ、動機は「不純」なものでしたが
取得を目指すと決めてからは、10か月コースの
通信教育の講座を(当時はネットも携帯もありません)
平日でも2時間、休日はほぼ半日勉強することを徹底しました。
生涯最高?の集中力を発揮し、持続出来た(主観です)結果
半年後の資格試験を強行受験し、1回目で合格になりました。
この勢いで他の関連資格も続けて受験し、ほぼ1年後には
複数の資格を取得することとなったのですが、だからといって
即退職、開業などという気持ちはさらさらなく
ちょうど営業の仕事にも習熟し面白味が分かってきた時期でしたので
その後の長きにわたる「休眠・死蔵」としたのです。
ただ、資格取得のタイミングは、あそこしかありませんでした。
後から振り返れば、先に書いたように中堅どころになってからは
自身の仕事以外にも部下の指導や本社との打ち合わせに出向く等
どんどん多忙になっていきました。
無論資格取得に励んでいた時期も営業の常で多忙でしたが
それでも自分のノルマさえクリア出来ていればそれなりに
時間の融通は可能でした。
仮にタイミングを逸して30代40代になっていたら
結局そのまま資格取得は夢で終わっていたと思っています。
今振り返ってもあの決断を27才でした事が
最大のターニングポイントだったと確信しています。
元来醒めた見方をする性格は自覚してましたが
業績絶好調の時に、将来の不安のためにという考えを
なぜ持てたのか? 未だに明確には分かっていません。
(予言、予知能力があった訳でもありません)
所謂「スイッチが入る時期」に的確にスイッチを押した。
それが、たまたま27才だったということだったのでしょう。
決断のタイミングは当然ながら人それぞれです。
現役バリバリの20代であっても、
折り返しを迎える60代であっても
起業・開業を常に最優先で考える、
積極的に勉強に取り組める意欲が湧き出る。
その時が、貴方にとっての「タイミング」です。
~ヒトから勧められたから
~周りで同世代の成功者がいるから
外部の刺激ではなく
内部から湧き出る意欲だけを意識して
行動を起こすようにして下さい。
【開業のタイミングは?】
私の話を続けますが、
いよいよ開業を真剣に考え始めたのは
残念ながら勤務先の経営悪化からの毎年のリストラでした。
たらればの話ですが、会社が繁栄を維持していたら?
たぶん、資格を活かす機会は訪れないまま定年退職を迎え
再雇用を経て65才前後からようやく稼働するといった
超スロースターターとなったのではないでしょうか?
決断の時は私も50代に突入し、管理職でした。
一番の「金食い虫世代」というのは自覚していたので
割増退職金もあって「時は来た」という想いが湧いたのです。
27才の時に芽生えた「不安要素の発生とその備え」の想いは
遺憾ながら現実となってしまいました。
この結果、50代の新参者、業界の新入生となった訳です。
経験豊富な年下の先輩には自分から挨拶、
基礎知識も不十分なままの登録、それに続く開業は
今思い出しても脂汗が出る思いです。
相談者は無論の事、第三者から見ても
「貫禄だけはあるハリボテ書士」です。
正直、相談の電話が来ないことを祈った時期も
ありました。
もし20代後半、30代で開業していたら
「まだ若いから」「これから勉強すればいい」と
少しは世間も甘い判断をしてくれる可能性が出てきます、
ですが50代のおっさんにはそういう見方は無いと自覚してました。
こういう状況を開業後に痛感したおかげで
ほぼ1年間は模索の連続でした。
「今さら代表的な取扱い業務をウリにしても所詮後追い」
「見た目と中身にギャップのある新人シニアで出来ることは?」
「その他大勢の中でどう存在感を打ち出せる?」
結果として
「差別化できるのは自分の経歴」という
当たり前のことに気付かされたのは
実は第三者の声からでした。
以前にも紹介しましたが
サラリーマンからの転身、50代での異業種転職、
所謂「脱サラ・起業」の経験が当時はまだ少数派だったようで
その点から私に興味を持った方が連絡をくれ始め
さらに日経新聞から週刊誌、月刊ビジjネス専門誌からの取材
あげくに文庫本への記事の掲載にまでに発展したのです。
たまたま始めたブログの飾りのはずだった
プロフィールに関心が集中したことは後から聞きました。
想定外、予想外の「大当たり」は何の変哲もない
自分の経歴だっとは、皮肉というか不思議なものです。
さらにサラリーマン時代の経験や営業の苦労や
楽しみ方、対人折衝の妙味などに関心を持った企業から
新入社員向け、シニア世代向けの講習会や研修の依頼といった
全くの想定外の業務にまで発展していきました。
今ではこちらが本業と言ってもいい有様です。
その後はシニアのおひとり様、という
ごく個人的な私の背景から同じ環境にある方々、
さらに年齢は関係なく同じ様にひとり世帯の方からの
いろいろな悩み相談を受けることとなり、
これが次第に今ではこれも本業の2本柱となった
「終活相談」「終活アドバイザー」へと業務の幅が拡がりました。
結果として、
私の社会に出てからの履歴~サラリーマンからの転職、
私の置かれている家庭環境~おひとり様のシニア、
上記のような背景を持った方々に対し
机上の空論ではない、経験者としてのアドバイスや
同じ世代の相談相手と言った点が
他が安易に真似の出来ない「差別化」となりました。
今では相談の大半は以前の相談者からの口コミです。
無駄な宣伝や効果の期待出来ないタイアップとは無縁です。
ただ、自戒を込めて言いますが
あくまでも結果オーライであり、正直ラッキーだった
という事に尽きます。
自分で熟考して、この方向性を打ち出していれば
もっと宣伝するのですが、あくまでも偶然の産物です。
年代に関係なく、開業前には自分の強み、
自分だけの強みについてはあらゆる方向から
精査しましょう。
私のように1年前後も混迷と模索で
貴方の貴重な時間を浪費することは避けましょう!
【営業時間、事務所の立地】
これもあくまでも私の主観からの見解です。
士業の場合、専用の事務所やオフィスを設けることが
開業の条件の一つとなりますが、個人事務所の場合
どういう場所でどういう形態で開業するかも
大きな意味を持ちます。
住宅街の中、最寄りの場所
戸建ての事務所
商店街の中の事務所
オフィスビル内の一部屋
この点だけは私でも熟考しました、
カタチだけを整えることには長けていましたので…
相談がある方、自分でもそうですが
なかなかデカい看板を掲げた個別の事務所に入るのは
抵抗が大きいです。
誰かに見られていないか?
契約するまで出られないのではないか?
その点から私は商業ビル内のレンタルオフィスに絞って
事務所候補を探しました。
商業ビルであれば食事、喫茶、雀荘、など等
飲食や娯楽で入館したという言い訳が容易です。
例え家族や会社の同僚に見られても何とでも言えます。
さらにビル内ではあっても事務所専用フロアがあり
娯楽や飲食のフロアとは異なればより隠れるに適しています。
事実、開業当初は今も使っている事務所の場所が
決め手と言われたことが何度もありました。
そこは4階までが商業施設が入居しているフロアで
5階以上が各種企業の営業所や士業の事務所などの
専用階となっているので事務所から出た際にも
知り合いとばったり遭遇というアクシデントが
考え難いという感想でした。
同じく強く意識したのはまずは駅から徒歩圏内、
加えて複数の路線が乗り入れている駅前という点も
意識していました。
会社員なら勤め先から、
家庭にいる方なら自宅から
アクセス面でストレスを感じさせないことも
相談先の選択時には意外にポイントと思ったのです。
自宅や会社から行きやすく、分かりやすい場所にあり
抵抗なく事務所のドアを開けられるような立地環境を
用意することは案外有効だと思っています。
もう一つはカスタマーファーストの営業時間です。
私の事務所は新橋駅前の商業ビルです。
そのまま最寄りの勤務先に行く方や
新橋乗り換えで勤務先に行き来する会社員、
こういった方々が当初の目論見通りに
初期段階の相談者になってくれました。
そしてサラリーマンの彼らを取り込めた
もう一つのポイントは、ニーズに合わせて
こちらの営業時間帯を変えただけです。
~会社を退社した後にこっそり相談したい
~出勤前の7時台にしか相談に出向けない
場合によっては月末の相談予定日に
営業部門の打上げが入り、大いに盛り上がった為に
予定時間の変更で22時以降の相談になったケースや
急遽の相談で明日の朝6時半の相談を打診されるなど
さらにレベルアップ?した要請に対しても
当時は二つ返事で受け付けました。
当然、平日は時間が取れないから土日、
それも早朝やら夜更けといったケースもありましたが
これも即断で受諾です。
この成果として、
満足して下さった相談者の方の口コミで
新たな相談者を立て続けに獲得することに繋がりました。
※今はどうか分かりませんが、
当時はHPでも9時から17時までと明記された
事務所が多かった記憶があります。
当然月曜から金曜の平日で、となってました。
新参者、後発者の出来る強みは何か?
たとえ取扱業務が同じでも
ユーザー目線で営業スタイルを変更、
又は新たなスタイルを打ち出せれば
ひとつの差別化になるのです。
【世代共通なのは行動力、営業力】
最後にこれは自信を持って言えることです。
どんな仕事でも言えることですが、
士業等の資格起業でも絶対に欠かせないのは
「営業力」であることに疑う余地はないと思います。
これは昭和でも平成でも令和でも変わることない鉄則です。
営業をかける為には当然「行動力」が伴います。
新参者は全てに飛び込み営業です。
開業当初に師事した先輩からは
士業だから宣伝さえすれば勝手に依頼が来る、
なんてことは絶対にない事を肝に銘じなさいと
言われましたが、全くその通りです。
仮に20代で開業となれば、
より人脈はぜい弱なはずです。
学生時代の仲間、幼馴染、会社の同僚や取引先
使えるのであれば両親にも協力を仰いで
自身の開業を宣伝しましょう。
逆にシニア世代には豊富な人脈があるはずです。
ここで今更彼らに頭を下げるなんて、といった
無意味な世間体やプライドは捨て去りましょう。
どちらの世代でも言えることですが
積極的に集まりには参加することも意識しましょう。
同窓会、同期会、異業種交流会、など等
仲間が集まり一気に宣伝出来るような場には
積極的に足を運ぶことです。
全くの赤の他人だらけの集まりではないのです。
これからの営業は全て初対面の不特定多数の方が
相手になるのですから、知り合いとの集まりは
いい練習台です。考えを変えましょう。
私の経験上、相談者が口にする
起業前後の悩みのひとつは、実はこれです。
30年間事務職で、初対面の人が苦手
大勢の集まる場が苦手
出来れば誘ってもらえればありがたい
これでは最初からライバルに出遅れです。
起業・独立するなら自分の行動力、営業力を
精査することをお忘れなく!
【終わりに】
こうして振り返ってみて思うことは
1)起業を考えた20代で資格を取ることは大いに推奨
2)但しその場合は3~5年以内に資格起業すること
3)シニア世代で資格起業を目指すなら明確な差別化を
4)全世代に欠かせないのは営業力・行動力・人脈
自身が20代で資格を取得し、起業が50代という
変則的なスタイルだったことでいろいろと考えることが
多くあったことはある意味得難い経験でした。
もし、勢いのまま30代で退職し起業・独立していたら?
もし、早期退職直前や直後に資格取得を目指したなら?
開業して10数年経過した今だからこそ、
どちらの場合を選択していたとしても結論が見えてきます。
※ある程度軌道に持った今、本音を言えばあと5年早く
起業・開業を決断していれば、より幅広い仕事が出来たのでは?
と思ってもいます。後からは何とでも言える話ですが…
あくまでも私の場合に限れば、
取得から開業までの長いアイドルタイムは
成功のもとだったとしか考えていません。
起業を目指す方々にとって
この拙い経験談が少しでも参考になれば幸いです。




