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基礎的なことは相談前に

寺田淳

寺田淳

テーマ:起業・独立


【はじめに】

 ここ数年、起業相談に来られる方は男女年齢を問わず多岐にわたってます。
コロナ禍も終息が見えた今年、2024年はその傾向が顕著でした。
中でも最近ではまた50代以降のシニア世代からの相談が増えたのが特徴でした。

 ですが、相談者の中にはわざわざ私に依頼しなくてもいいのでは?
といった内容の相談を持ち掛けるケースも少なくありません。

 その多くは起業・開業に必要な手続きを調べて欲しい、
代行してもらえないか?といったごく基礎的な内容なのです。

 こちらとしては相談されることはありがたいことですが、
いろいろとおカネがかかる起業志望者としてはどうなのか?
起業・独立の業務の第一歩となる手続きはまずは自ら行う事で
より真剣に仕事に向き合えるのではないか?

 今日はこの点について紹介したいと思います。

【今さら人に聞けない?】

 
 例えば、申請や届け出に関する手続きの場合、
その多くは管轄する自治体の窓口で手続きが行われます。

 まだ在職中で日中に自由に動く時間がないというなら
それはそれで仕方ありません。

 ですが既に退職し、時間的には制約がないと思われる方の中でも
どういう訳かこの手の場所に足を運びたくないといった理由で
相談(手続き代行依頼等)をするケースが見受けられます。

 多くは50代以上の男性のシニア世代でした。
全てとは言いませんが、多くの方は「今さら人に聞くなんて」
といった意味不明な見栄?がそうさせていたのです。

 特に気になったのが
一度は窓口に行ったものの、息子のような年代が相談担当で
どうにも恥ずかしい思いが先に立ってしまい相談せずに引き返した。
という話を聞いたときでした。

 長年仕事に携わってきて、
人から頼られることはあってもこの年で教えを乞うなんて!
それも自分の子供と同年代の若造に? 
これは恥ずべきことだ!?
やはりここは自分で何とかしよう!

 仕事に自信があった方ほど自負心が強いのは理解出来ます。
ですが、何十年とサラリーマン生活をしてきた方に
起業や開業に関する知識が無いのは逆に当たり前のことです。

 要は、また新入社員としてゼロから学ぶことをまた始めればいい、
とスパッと気持ちを切替えられればいいのですが、
シニア世代にはそう簡単にはクリア出来ない至難の業のようです。
 
 ですがその為に貴重な時間を空費し、あげくに「有料相談」になる
私へ手続きの相談や依頼をするのではどうにも勿体ないことです。

 以下は起業・開業時のことではなく、起業後の私の業務上の経験談ですが
自身初めての改葬の依頼を受けた際にはゼロからのスタートでした。
まず我が家の菩提寺に出向いて改葬の手順から丁寧に教えてもらい、
言われた通りに当該の自治体窓口などに足を運び必要な資料を収集しました。

 当然役所の窓口でも初歩の初歩から年下の女性職員から教えを受けて
改葬の実務を進めたものです。 その時54才でした。

 今では大抵の情報はネット検索で入手が可能になりましたが、
安易に利用したもののその内容が当該の市区町村の規定とは異なっており
窓口で指摘を受けて二度手間の時間の無駄を生じたケースや、
ネット上の丁寧な内容を信じてその通りに申請書を作成したものの、
その内容が数年前のもので今では書式自体が変わっていたといった
笑えない事態に陥ったというケースも耳にしました。

~細かな事例ですが改葬の申請書の申請者欄で故人との関係を記載しますが
 仮に孫が記載する際には、自治体によって「孫」「長男の子」「長男の長男」「子の子」
 など等、記載方法がバラバラで二重線での取り消しで対応してくれる自治体もあれば
 もう一度申請書自体を書き直すように指示する自治体もありました~
 
 これも事前に確認さえしておけば問題なく済む話でした。

 参考にした記事が今の自分が求める内容そのものだったからそのまま引用した。
ですが投稿された年月日までは確認しなかったことで既に規定が改正されていたり、
適用期間を過ぎている特例だったりすることもあるのです。

そんな過去のものがそのまま残っているなんて思いもよらなかった!
といっても後の祭りです。

【勝手に壁を作ってしまう】

 お役所関係に二の足を踏む中でも特に目立ったのが「税務署」です。
 
 開業一年目、自営業、個人事業主として
初めて確定申告を作成する際に
今一つ理解出来ない項目に遭遇し、自分の判断で記載して
後から間違いを指摘される。
 
 悪戦苦闘の末に深刻はしたものの
数か月後になって自身で計算間違いに気付いたり
計上費目を忘れていた、誤記していたなどが発覚、
ますます税務署に苦手意識を深めてしまった…

 ここでも先の自治体窓口の場合と同じで、
事前に担当者に相談すればいいだけのことなのです。

 なのに何故か税務署に関しては電話相談すら二の足を踏む、
こんな方が少なくありませんでした。

 そういう方が言うことには、
「税務署に電話でも対面でも相談すると住所氏名や個人情報を聞かれるのでは?」
「手の内を見せてしまっては将来税務調査で優先的に選ばれるのでは?」
など等、疑心暗鬼というか邪推から行動に移ることに抵抗を感じるようです。

 ここでも私の体験談ですが、
まさに最初の確定申告作業の際、予め質問事項を取りまとめておき
最初は電話で相談しました。

 この際にこちらの住所や氏名を聞かれることは全くありませんでした。
概ね疑問点や不明点は解消しましたが、いざ記載となった際にまた
数か所確認しておきたい項目が出てきたのです。

 もう一度電話でもよかったのですが、
どうせならと今度は税務署に出向きました。
この時も個人情報を聞かれることはありませんでした。

 電話と同様にこちらの質問にだけ明快な回答をしてもらい
今度こそ完全に確定申告書の作成に自信を持てました。
それ以降は毎年スムースに申告を続けています。
 

 ※ただ最近は窓口業務が繁多になったようで予約制となりました。
  その為、氏名や電話番号など最低限の情報を伝えることにはなりました。
  それでも相談時には一切聞かれることは私の場合ありませんでした。


 どうも、お役所、公的機関に対して苦手意識を持つケースは
年齢や男女に関係なく少なくないようです。
ごく一部でしたが「確定申告の相談料は○○市ではいくらでしょうか?」
といった全くの想定外の心配をしていたケースもありました。 


 ここでもネット情報や初心者向けの書籍に頼ったものの
間違った解釈や項目の区分を拡大解釈してしまい最後の最後に
つじつまの合わない完成品となり、一からやり直しでは
何ともやり切れませんね。 

 まさか初年度から所得隠しや脱税を目論むような猛者はいないと思いますが
自己流での申告で痛くもない腹を探られる方が後々迄のダメージになり兼ねません。

【終わりに】

 起業の際に陥りやすいのは
ここに挙げた公的機関の活用への躊躇だけではありません、
起業動機の時点でも発生します。

 何度も書いてきましたが、
過去の他人の成功譚を今も通用する、
自分なら同じ成功を成し遂げられる
といったイメージを持つことです。

 サクセス本を読んで、
 その人物のブログやコラムを読んで
 講演会でその気になって

 勢いだけで行動に移してしまった。

 もうひとつは、
身近な知り合いが成功したといった情報に
変な対抗意識を持って起業を急いだり、
自分より能力の劣る人物と思っていた
元の会社の同僚や部下の成功で
勝手に自分の成功を確信するケースです。

 いずれの場合も見かけ上の情報収取には熱心ですが
肝心なその裏にあるはずの成功に至るまでの過程を
分析するといった動きが見えてきません。

 ここでも自分に都合のいい情報だけをつなぎ合わせて
自己満足することで大きな失敗を招く事になるのです。

 とにもかくにも
利用、活用できるものは(それも無償で)
遠慮なく利用しましょう!

 自治体も税務署も我々の納税で成り立っている、
だから利用して当然、教えるのは当然といった
多少上から目線で臨んで構わないのです。

 私のところへの起業相談の際にも
まったく丸投げで相談に来る方がいます。

 申請書を取りに行って欲しい
 申請書を作成代行して欲しい
 届出を代わりに行って欲しい

 依頼されれば業務として受けますが
少しの時間とやる気があれば私への報酬は発生しません。

 特に相談内容をまとめないままに相談に来られると
下手をすると2,3回にわたる有料相談となります。

 起業・独立を目指すなら
まずは経費管理、計数感覚をしっかり身に着けること、
そしてまずは自ら行動を起こす事から始めて欲しいですね。

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寺田淳
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寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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