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マイナンバーカードの今

寺田淳

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【今日のポイント】

 2016年に始まったマイナンバー制度もはや5年が経過しました。

 このコラムでも何回も制度の普及率の低迷を採り上げてきましたが、なかでも証券口座へのひも付けに関しては2018年末までを目指したものの6月の時点で40%前後と芳しくない状況で、結局この2021年末まで延期されました。

 マイナンバーカードの現状はどうなっているのか? わかる範囲で紹介したいと思います。

【芳しくない実態とは?】

 もともとマイナンバー制度は行政手続きに必要な個人情報を互いに照会出来る連携システムの構築が一つの目的でしたが、2019年の会計検査院の調査によれば利用目標件数に対しての実績はたったの5,5%だったそうです!

 政府の目標では来年2022年度末にはカード取得率100%を目指すとしているようですが、制度導入は2016年1月で3年経過後の実績が上記のようでは到底実現は不可能な進捗と言えるでしょう。

 具体的には2019年の利用実績を6億4,700万件としていましたが、実績は約3,600万件です。利用対象は「年金・医療系」で1,9%、「福祉関係」で4,2%、「災害対策」はゼロです。

 「マイナポータル」の活用状況も似たり寄ったりでサービスの一つである「ぴったりサービス」~地方自治体の子育て関連サービスの検索や申請が出来る~は2018年度の想定が1,440万件だったものが、実態は8,900件でした。さらに「公的決済サービス」~クレジットカード等で手続きが可能なサービス~については、利用実績ゼロでした。

 どうにも深刻な制度利用の低迷が未だに改善されていないというのが現状と言えるでしょう。

【マイナンバーが繋がる先は?】

 上記と同様にマイナンバーカードと繋がりのある組織や手続きについては今一つ分かっていないことが多いようですが、概ね以下のようなところで既に利用が開始されているようです。

1)勤務先
 サラリーマンの場合、源泉徴収時にマイナンバーを使用。
2)健康保険組合
 給付申請時に使用。
3)ハローワーク
 雇用保険の申請時に使用。
4)税務署
 確定申告時に使用。
5)証券会社
 新規口座開設時や配当金の支払い時に使用。
6)銀行
 非課税口座(NISA等)の開設時や投資信託の分配金支払時。
 ※預貯金口座に関しては後述します。
7)保険会社
 保険金支払い時に使用。
8)その他
 児童手当の申請時に各自治体へ提出等。

 サラリーマンでも個人事業者でも、専業主婦であっても、日常生活を送るうえで何らかの形で既にマイナンバーの提出は必須案件となっているのです。

 私に当てはめてみれば、確定申告、銀行、証券会社では既に提出済みとなっています。

【どうしても気になる税務調査との関連】

 証券会社の場合は新規に口座開設時にはマイナンバーの届け出は必須でも、既存の口座については任意となっていました。特にNISA(小額投資非課税制度)口座開設時には運用益が非課税になるという点から本人確認が厳格化し、マイナンバーの提供を義務としました。

 冒頭で述べた2018年までのひも付けというのは、2015年以前に口座を開設している口座に対してのものでしたが、既述したように今一つの進捗でした。対象の口座数は約2,300万口座! 残り半年の間に全口座のマイナンバーひも付けを目指すわけです。
 
 さらにそれでも口座保有者がマイナンバーの提出を拒んだ場合に対しても「自動的にマイナンバーを取得」出来る仕組みを用意しました。

 「証券保管振替機構」~通称「ほふり」によるひも付けです。

 これは地方公共団体情報システム機構と連携し、「ほふり」は未提出のマイナンバー情報の提出をここへ要請し、マイナンバー情報を入手します。
 未提出の口座を抱える証券会社は「ほふり」へ当該口座の保有者のマイナンバーを要請し、「ほふり」からその情報が証券会社へ提供されるのです。

 先に新規口座を開設しなければマイナンバーは届けなくても構わない、のですが実際は既存の口座保有者もマイナンバーは把握されていると考えてよさそうです。事実昨年12月の時点で2015年以前に開設した口座のうちの約64%が登録済みとなっており、残る半年間のうちに証券会社は個人の全口座をマイナンバーで管理するとしています。

 この結果を受けて、税務署はマイナンバー付きで情報の照会を証券会社に行い、証券会社はそれを受けてマイナンバー付きの支払調書を税務署に提出することとなるのです。

 これで少なくとも税務署は個人の証券口座の資産の正確な把握が可能になり、故意であっても不注意であっても取引口座の申告漏れの指摘が厳格化されることは必至でしょう。

 前項で述べたように日常生活のどこかでマイナンバーは把握されていますから、必ず財産とのひも付けは今後も進むでしょう。その意味からも証券口座の把握だけで終わるとは思えません。残る不動産や預貯金口座に対してもこの流れは進められるでしょう。

 不動産に関しては現在市区町村による「名寄せ管理」がされています。容易にマイナンバーのひも付けが可能な土壌です。

 ただ先に述べた銀行やゆうちょの個人の預貯金口座とのひも付けは容易ではなさそうです。今はあくまでも「任意」での提出となっているのです。

 最大の理由は、その口座数で国内の銀行の個人の総預金口座数は約7億7600万口座! 証券口座が(たったの)2,300万口座でひも付けに悪戦苦闘している現状をみれば、ひも付けは相当なハードワークになることは間違いありません。

 さらに「個人の最重要な情報がそこまでガラス張りにされること」には強固な抵抗が予想されます。とはいえ、その他の資産が把握出来ても肝心の金融資産だけを任意で済ませるほど国も甘くはないでしょう。 

 マイナンバーは本来多岐にわたる行政手続きを公正かつ効率的に実施するための制度です。脱税や資産隠しといった不正行為を見逃しては公正な実施とは言えなくなることからもいずれは預貯金口座へのひも付けは実施されると考えておいた方がいいようです。


 個人的には、少なくとも正確な個人資産の把握と管理を徹底することで、仮にひも付けによってガラス張りになった場合でも臆することのないよう心掛けることが宜しいかと思った次第です。

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寺田淳
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寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

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