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失業率の持つ意味

寺田淳

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【今日のポイント】

 緊急事態宣言の解除、自粛制限の緩和などで、コロナ禍によって低迷を続けて来た経済活動もやや光明が見えて来たかに思えますが、実際は年末に向けてますます深刻化するともいわれています。

 さらに今後の懸念材料としては、現時点では失業にカウントされていない「休業者数、休業率」が今後「失業者数、失業率」にどういった影響を与えるかについて考えてみました。

 私自身が表面的な認識に留まっていた「失業」と「休業」の持つ意味について、紹介したいと思います。

【データの持つ意味】

 この5月末に総務省が発表した4月の労働力調査によれば、
完全失業率は前年同月比でわずか0,1%増(それでも13万人ですが)とありました。

 まだそんな程度だったのか…
 
 確かに身近に失業したという話は聞いたことがないし、このままうまくすれば年内には景気回復の光明も見えてくるんじゃないか?といった楽観論も耳にします。 そうであればうれしい限りなのですが・・・

 ですが、今度は休業者数のデータを調べてみますと、前年同月の177万人から597万人と、実に420万人増となっていました! (ちなみにこの人数は過去最多であるともありました。)

 また、あのリーマンショック時においても、就業者の2%台だった休業者率は、現時点で既に10%近くになっているそうです。

 なぜこの休業者数が失業者としてカウントされないのか? 分類してカウントする意味は何なのか? 実質は同じことではないのか?

 これは、失業者数は「求職活動を行っている人数をベース」として算出するため、基本的に「求職活動をしない休業者」はあくまでも失業者ではないと判断されるのです。 

 端的な例としては、飲食業に努める従業員のケースなどで、店の営業は無期限の休業だが、解雇ではない。いずれ復職の可能性がある為、再就職の為の求職活動が出来ない、またはしないことから、統計上では「非労働力人口」という区分に組み込まれてしまい、失業にはカウントされないのです。

 この結果、4月の「就業者の減少数」という視点から見ると、前年同月比で80万人であるのに、先に書いたように失業者数となると13万人、と大幅減のデータとして算出されてしまうのです。

 あのリーマンショックの時は、主に製造業がその影響の直撃を受けた業種でしたが、今回は宿泊、飲食、物販小売業や接客サービス業と被害を受けた職種の幅がかなり拡大していることと、特に個人事業者、非正規社員、フリーランスと言った労働者に多大な影響を与えている点が特徴となっています。

【気がかりな推移】

 今のまま事態が進んだ場合、非常に気がかりな点があります。
仮に、緊急事態宣言の解除の後、段階的に経済活動の復旧がなったとしても、果たして従来と同じような仕事があるか? 特に長期の休業者やフリーランスが全て従来と同じ職場、同じ仕事に復帰出来て以前と同じ収入を確保出来るかは保証の限りではありません。

 今回のコロナ危機を受けて、ほとんどの企業では従来からの社内組織の見直しや仕事の仕方の変革に取り組んでいます。この流れはいずれは人員配置の見直しに繋がり、その結果としてリストラの断行という結論に至るリスクは否定出来ません。

 こう見てくると、今はまだ非労働力人口とカウントされている休業者が、いずれ復職を諦めて一気に求職活動に転じた場合、失業者数、失業率は大幅に上昇し、社会不安の増幅に繋がることも懸念されるところです。

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寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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