「エンディングノート」のすすめ

西山広高

西山広高

テーマ:終活



日本は少子高齢化、核家族化が進んでいます。

ご実家を離れて移り住み、その後、ご実家には盆と正月くらいしか帰らない、という方も少なくないでしょう。
親と離れて暮らす人は増えています。
なかなか親子でゆっくり話をする機会が持てない人も少なくないのではないでしょうか。
そのような環境下だからこそ「相続対策」は今後ますます必要性を増してきます。

今日は、相続について「気にはなっているけれど何も考えていない」「何から考えればよいかわからない」という方にエンディングノートの活用をお勧めしたいと思います。
相続に関することだけでなく、自分の人生を振り返り、これからの人生をどう生きるか考える機会になるとともに、親に相続について考えていただくきっかけにもなると思います。


後回しにされがちな「相続対策」



「相続対策」は全ての方に必要です。
財産が多く、相続税を支払う必要が発生する相続だけが対象ではありません。
相続税の支払いが必要な方は既にこのような意識をお持ちの方も少なくありません。
むしろ「自分には関係ない」と思っている方の相続のほうが揉めやすいといえます。

親が亡くなる事など考えたくないかもしれません。
親の立場でも自分が死ぬときのことなど考えたくはないでしょう。
「死」というキーワードはどうしてもネガティブに考えられてしまいます。
自分自身、あるいは親が元気な時には「そのうち考えればいい」として、後回しにされがちなのが「相続対策」だと思います。

しかし、相続は必ず発生します。
また、認知症になってしまったりするとできる対策は限られてきますし、たとえ判断能力・意思能力はしっかりしていても体力が低下してくると対策は難しくなってきます。

できることから始めていきましょう。
その第一歩に「エンディングノート」が役立ちます。


財産をリスト化する



相続対策を考えるとき、最初にすべきことは「自分の持つ財産の概要を把握する」ことです。
相続財産は「金銭的な価値があるものすべて」が該当します。
銀行預金や株式、債券、不動産、生命保険、貴金属、自家用車などはもちろんですが、借入金、他社と結んでいる契約、保証などの負の資産も含まれます。
切手やコイン、美術品、骨董品など金銭的な価値があるコレクションなども該当します。

これらの財産をリスト化することから始めましょう。
当然、日常生活をするうえで残高は変動します。
几帳面な方ほど、残高が変動し現在の金額が正確に記載できないため、先延ばしにしてしまう傾向があるようです。
しかし、変動して当たり前。
生きている限り確定することはありません。
多少の数値の差異や把握した時期の違いは気にせず進めましょう。
ここで大切なのは、金額よりも「どこに」「何が」「だいたいどのくらい」あるかです。


どう分けるかを考える



次に考えるのは「どう分けるか」です。
ここで重要なのは揉めそうな資産から考えることです。
多くの金融資産は換金性が高いので分割も容易ですが、不動産や非上場株式などは分割しにくかったり、換金できなかったりするため、注意が必要です。
自営業やオーナー企業などでは後継者の問題とも密接にかかわってきます。
分け方によって揉めてしまう可能性のある財産は「なぜそう分割したいのか」といった理由も含めて整理していく必要があります。

それぞれの家で事情は違います。
ここで悩んでしまう場合には誰かに相談することをお勧めします。
最近は金融機関や弁護士、行政書士、税理士なども無料相談会などを開いていたりします。
しかし、本当にオーダーメイドの相談を必要としている場合、無料相談では限界があります。
日本では相談に料金を払う文化がまだまだ未熟であることもありますし、誰に相談するのが適切なのか悩むこともあるでしょう。
(ちなみに西山ライフデザインでは、ご相談内容、それぞれのケースに応じ適切な専門家と連携して対応しています)

どの資産をどのように分けるべきかを決めるときには遺留分にも配慮する必要がありますが、遺留分については別の機会にご説明することにします。


「遺言書」「遺書」「エンディングノート」



生前の意思を残される人に伝達する方法として「遺言書」「遺書」「エンディングノート」があります。違いがわかりますか?
「遺言書」は法に求められる形式によって、自身の財産をどのように配分して欲しいかを記述した書面。
「遺書」は法的なものではなく自身の気持ちを残される人に伝える手紙
「エンディングノート」は法的な効力はありませんが、自分の生い立ちや考え、財産、想いを形式にとらわれずに残しておくノート。
それぞれに目的が異なります。

遺言書だけでは伝わりきらないこともあるでしょう。遺言書にも「付言事項」として、法的には関係ない「想い」を残すことは可能です。自分の生きた証、残される人たちへの言葉、遺産の分割方法や割合についてどのように考えたかなどを伝えることでスムーズに次の世代に引き継いでいくことが可能になります。遺言書では伝えきれないことを補完する意味で「遺書」や「エンディングノート」は有効です。」


エンディングノートの内容



エンディングノートには
・自分のこと
  これまで住んでいたところ
  働いていたところなど
  印象に残っている思い出
  これまでの人生の振り返り
・家族のこと
・親しい交友関係
・財産のこと
  預貯金、有価証券等とその預け先
  不動産
  年金
  生命保険
  その他の資産
・もしもの時のこと
  病気になった時のこと
  介護の希望
  葬儀・お墓のこと
  大切なものの保管場所
  遺言書のこと
  遺産分割・形見分けの希望
・家族や友人へのメッセージ

などを書きます。

市販のエンディングノートを活用するのもいいでしょうが、書き換えることもあるでしょう。
パソコンで作ったり、レポート用紙などのように一枚一枚別々になっているものを用いて必要に応じて書き換えるページだけ差し替えていくのでもよいでしょう。パソコンで作成する場合は都度プリントアウトしておきます。

形式を気にする必要はありません。
遺言書とは異なり、法的な拘束力はありません。
形にこだわらず、思ったことを書けるところから書いていけばいいのです。

親に遺言書を書いてもらうきっかけにも


親に「相続のことを考えておいて欲しい」と思う子は少なくありません。
しかし、子から親に「相続」の話を切り出すのはなかなか難しいものです。

そこで、私からは遺言書の前に「エンディングノート」を書いていただくことをお勧めします。
私は、エンディングノートの目的は「相続対策」というよりも「自分自身の整理」の意味合いが強いと考えています。
エンディングノートを書くことで
「自分がどのようにして生きてきたのか」
「日頃思っている大切なことは何か」
「これからの人生をどのように生きていくか」
「自分に何かあった時、どのようにして欲しいか」
といったことも考えることができます。

「人生の棚卸し」とでも言いましょうか。

そして、親だけでなく子も書きます。
死ぬときのことを考えるというよりは「生き方」を考えるという意味でも有意義です。

すべてを一度に整理しようと思ってもなかなか思うようにはいきません。
できることから少しずつ進めるのが相続対策の基本です。
さあ、あなたも書いてみませんか?

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西山広高
専門家

西山広高(ファイナンシャルプランナー)

西山ライフデザイン株式会社

西山ライフデザインは「不動産に強いFP事務所」「お金に強い不動産屋」です。不動産取引では「両手取引」を行わず、お客様の利益を最優先します。「上級相続診断士」として相続でもめないお手伝いをします。

西山広高プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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