その「かな」が信頼を削っている!? 語尾に宿る「プロの覚悟」

森田都

森田都

テーマ:話し方のスキル




【はじめに:無意識に漏れ出す「自信のブレーキ」】


「今日はうまくいったかなと思います」
「私はこちらがいいかなと思います」


最近、テレビの街頭インタビューや会議の場で、この「かな」
を耳にしない日はありません。

一見、当たりを柔らかくするクッションのように思えますが、実はこれ、自分の意見から一歩引いて、無意識に責任を回避しようとする「心のブレーキ」の現れなのです。

【分析:なぜ大谷翔平の「かな」は許せるのか?】


今や国民的ヒーローの大谷翔平選手をはじめ、超一流のアスリートたちもよく「かな」を使っていることにお気づきですか?

「今日のピッチングはよかったかなと思います」
「今日はいいパフォーマンスを出せたかなと思います」


結果を出したアスリートなら、「~~よかったです」「~~出せました」と言い切ってもいいと私は思っています。

しかし、それでも、彼らの「かな」なら大目に見ようという気持ちになるのには、理由があります。

それは、「かな」の「裏側」に「圧倒的な実績!」という揺るぎない事実があるからです。

「ホームランを量産する」「ゴールを決めて勝つ」という「揺るぎない事実」により、彼らの「かな」は、相手への責任回避ではなく、さらなる高みを目指す自分への「問いかけ」であり、「謙虚さの表れ」として映るのです。

しかし、実績を積み上げる途上にある私たちが、安易にこれを真似するとどうなるか。

それは「謙虚」ではなく「自信のなさ」と判断されかねません。

「この人は、自分の言葉に責任を持っていないのでは?」という不安を聞き手に抱かせないよう「語尾」まで明確に言い切ってほしいのです。

【実践:無意識の反射を「自覚」し、言葉を制御する】


言葉や話し方の癖を直すのは、フォームの改造と同じです。

単に気をつけるだけでなく、具体的でストイックな訓練が必要です。

3つのポイントをお伝えしましょう。

1.「録音」で自分の現在地を直視する

自分の話し方を本気で改善しようとするなら、録音はマストです。

会議や普段の会話での自分の話し方を録音して聴いてみてください。

自分でも気づかなかった「かな」や不要な接続詞など、自分の癖が客観的に認識できます。

まずは、自分の現実を直視すること。

すべてはそこから始まります。

2. 反射を食い止め、「一拍の無音」を作る

言葉の癖は、脳の無意識な反射です。

これを断ち切る唯一の方法は、言葉が口からでる直前に「一瞬の待ち時間」を作ること。

余計な一言が漏れそうになったら、一拍(コンマ数秒)グッと堪えて、あえて「無音」を作ってみてください。

一瞬の空白を作るのは勇気がいりますが、その「溜め」こそが、聞き手には「言葉を選んでいる誠実さ」と「重み」として伝わります。

3. 「主語」を取り戻す

「私はこう考えます」と主語を強く意識すれば、言葉に背骨が通ります。

主語を立てることは、その言葉の責任を自分が引き受けるという宣言です。

その覚悟があれば、語尾が揺らぐことはなくなります。

ただし、これら3つはあくまで「セルフチェック」であることを忘れてはいけません。

自分一人で行うトレーニングには、どうしても限界があります。

自分の声や癖は、脳内で補正されて聞こえてしまうため、録音を聴いても「本当の違和感」に気づけないことが多いのも事実です。

スポーツ選手にコーチが必要なように、言葉の癖もまた、プロの耳による客観的なフィードバックがあって初めて、真に「自分のもの」になります。

独りよがりの修練で「変な型」がつく前に、プロの視点を取り入れる。

それが、最短距離で言葉に命を吹き込むための賢い選択だと私は考えています。

【結びに:言葉の責任を、自分で引き受ける】


どんなに素晴らしい内容も、最後に「かな」がつくだけで、それは「他人事(ひとごと)」になってしまいます。

パッションを持って伝えるとは、自分の発した言葉に最後まで責任を持つということ。

「〜です」「〜ます」。


そう言い切る勇気こそが、相手の心を動かす一番のスパイスになるのです。

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森田都
専門家

森田都(アナウンサー)

美・言の葉サロン

元FM東京局アナとしての知識、美しく正確な日本語、落ち着いた快活な語り口が評判。「話し方・言葉遣い・態度」のトータルアドバイスで、好感を持たれる話し方の習得と、アンチエイジングにも効果的な手法を指導。

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