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中島雅生

伝統的な「数寄屋建築」の技法を受け継ぐ現代の工匠

中島雅生(なかしままさお) / 一級建築士

株式会社工匠常陸

コラム

大工の平均年収は378万円。これって低いの?それとも分相応?

2019年8月5日 公開 / 2019年8月9日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 退職 手続き退職金制度 導入

 厚生労働省の調査によると、大工の平均日当は12700円だそうです。そして平均年収は378万円ほどとなっています。そして、一生大工としてどこかしらの会社に勤めた場合の推定生涯年収は1億5000万円程度といわれており、生涯年収が約2億円と言われている一般のサラリーマンと比較するとかなり低いと私は思います。

 また、一般のサラリーマンは週休二日が当たり前ですが、大工の場合は土曜日と祝日をしっかりと休む会社は殆どありませんので、大工の方が年間で約60日も多く働いていることになり、一般のサラリーマンが1年間で12カ月働くのに対し、大工は1年間でサラリーマンの14カ月分働いていることになります。
 さらに、一般のサラリーマンはボーナスを年間で基本給の三カ月分程度もらえますが、大工の場合はボーナスも退職金も無くて当たり前で、寸志を頂ければ良い方です。それでいて、基本給が特別高いというわけではありません。これを聞くと、大工は5カ月分の給料を損しているかのように聞こえる若者もいるのではないかと思います。また、大工は仕事を覚えるまでは安い給料が当たり前で、仕事を早く覚えて一人前の給料を手にするためには、仕事時間外に毎日2,3時間は自分なりに何かしらの努力を積み重ねなければなりません。

 ちなみに、私が大学卒業後に地元の工務店に弟子入りした際の給料は朝七時から夜七時まで働いて日給5000円でした。仕事が終わると9時頃まで刃物を研ぎ、休日も工場に行き何かしらしていました。休日は日曜日以外は無く、祝日の名前など2,3年で忘れてしまいました。忙し時期は現場で9時頃まで仕事をして休日は月に1日ということもありました。これは、私が特別なのではなく、一世代前の大工なら誰もが経験していることなのです。大工という仕事を本当に気に入っている人間でなければ長くは続かない仕事だと私は思います。

 働き方改革が騒がれている昨今に「この業界は昔からこうなのだ」という聞き飽きた言葉はもう通用しなくなりつつあります。しかし、馬鹿正直に働き方改革を実行に移せば、大半の小さな工務店は経営に行き詰まり潰れてしまうでしょう。そうなっては元も子もありませんのでこの問題は個人が解決できる問題ではないような気が致します。
 
 次回 「建築現場って大工無しで成り立ちますか?」と題して、大工の社会的地位が低いのではないか、という話をさせて頂きます。

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