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中島雅生

伝統的な「数寄屋建築」の技法を受け継ぐ現代の工匠

中島雅生(なかしままさお) / 一級建築士

株式会社工匠常陸

コラム

それでも大工はやめられない

2019年8月7日 公開 / 2019年8月9日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物

 過去三回にわたり、大工人口が激減し、人材不足が深刻化している建設業界の現状と私が考えるその要因について書かせて頂きましたが、これを世の若者が読んでしまっては益々大工の成り手が減ってしまうのではないかと同業者からお叱りを受けてしまいそうですので、今回は大工という職業の魅力を私なりにお伝えできればと思います。

 大工はまじめにやればやるほど楽しい職業です。ですからこのような良いとは言えない境遇でも、年収や社会的地位など細かいことなど気にせずに、ひたむきに仕事に打ち込む職人が現に沢山存在しているのです。ほとんどの職人の顔つきは低い年収とは似つかわしくない自信に満ちた顔をしていると思います。それだけやりがいがあり、一つ一つ積み重ねた努力が決して裏切らない職種だということです。
 私自身、一瞬たりとも大工の道を選んだことに後悔をしたことはありません。そして、この道に入ったことを後悔している一人前の大工に出会ったこともありません。一人前になれた大工は皆、大工という職業を気に入っているのです。ですから、どうか若者には夢を持って、大工の世界に飛び込んできて頂きたいと願っています。
 
 大工の道に弟子入りするには相当な覚悟が必要だというイメージを持たれている方も多いと思います。しかし、実際には全くそんなことはありません。むしろ、何の覚悟もなく親の稼業を世襲した二代目、三代目の職人がたくさんいる業界です。余計なことは考えずにやってみたいと感じたらやってみれば良いのです。どんな仕事を選択するにせよ、未知の世界に足を踏み入れる以上、それなりの覚悟は必要であり、居心地が良くなり始めるまでには2,3年はかかるものです。ならば好きになれそうな予感が少しでもする職業を選択するべきです。「自分の手で家を建ててみたいな」と一度も頭によぎらず死んでいく人なんて果たしているのだろうかと、単純な私は思ってしまいます。

 私の経験上確実にいえることは、約40年間という長い仕事人生でのあらゆる競争において圧倒的に有利であるのが「仕事が大好き」な人たちであるということです。スポーツ選手など早く結果を出さなければならない業種は、生まれ持ったセンスや幼少期の育ち方、指導者との出会い、時代の流れなど自分自身の力だけではどうにもできない要素が結果を左右することもあるかと思います。しかしほとんどの仕事は地道に積み重ねられるかどうかでほぼ結果がきまると思います。好きになれない仕事を続けているかぎりは「仕事が大好きな人たち」に勝つ可能性は限りなく低いというのが仕事の世界の定説のように思います。
 若者は趣味でDIYなんて考えるくらいなら大工の世界に飛び込んでみることをお勧めします。

 次回は私がどのような決意でこの世界に飛び込み今に至るのかを少しだけ書かせて頂き、大工の世界に飛び込もうか飛び込むまいか、迷っている若者の背中をそっと押してみたいと思います。

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