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日本が誇る「数寄屋建築」…その技術を受け継いだ職人の信念

伝統的な「数寄屋建築」の技法を受け継ぐ現代の工匠

中島雅生

伝統的な「数寄屋建築」の技法を受け継ぐ現代の工匠 中島雅生さん
中島雅生さん作業風景

#chapter1

研ぎ澄まされた大工道具が物語る“ものづくり”への愛情とこだわり

 2018年、地元である茨城県に自身の会社を設立した中島雅生さん。会社設立前の17年間で4つの工務店を渡り歩き、国宝や重要文化財に指定されている建物、超高級数寄屋建築の建設現場などで経験を積み、高い建築技術を習得してきた大工職人です。

 「施主様の希望に合った提案で、心のこもったものづくりをさせていただきます」。そう話す中島さんの工場内は、手入れが行き届いた機械や道具類がきちんと整頓され、湿気や気温の変化に敏感な木材は、毛布とビニールシートをかぶせて丁寧に保管されていました。

「万が一、道具を落としてしまった時も床板が木材ならショックを吸収してくれるため、傷みにくく道具の持ちも良くなります」と、工場内の床は杉材で敷き詰められています。

 職人一人一人に割り当てられた収納スペースには、驚くほどたくさんの大工道具が専用ケースにきちんと納められていました。鑿(のみ)ひとつとっても100はあるだろうという種類数。大きさや長さ、形も多様で用途ごとに使い分け、時には一から自分で作ることもあると言います。

「大工道具というのは鍛冶屋さんが作ったものに、職人が手を加え、『使える道具』へと仕上げて初めて現場で役立つもの。沢山の道具を持ち、そのすべてを常に良い状態に保ち使い続けるということは、多くの時間と根気を必要とします。しかし、その日々の積み重ねが仕事の効率と精度を上げるんです」

 仕事の休憩時間や終業後は、各々で使用した道具を研ぎ、最適な状態の維持を徹底しているとのこと。物に対する「礼」で満ちた工場内からは、ものづくりへの愛情と、丁寧な仕事への姿勢を感じることができます。

 鑿だけで仕上げたという柱の仕口部分に触れてみると、その切り口は歪みがなくまっすぐで滑らかな仕上がり。手入れされた道具の精巧さと職人の技術の高さを物語っていました。

#chapter2

最高峰の数寄屋建築職人から学んだ確かな技術

 大学卒業後、茨城県の工務店で一般住宅や数寄屋建築、社寺建築の現場に携わった中島さんは「本格的に数寄屋建築を学びたい」と、京都の名門・中村外二工務店へ。

 そこではたくさんの職人が、住み込みで技術習得のために切磋琢磨していたそうです。「自分よりも早くきれいな仕上がりを見ては、質問やアドバイスをもらいに行きました」と話す中島さんの上達への原動力は「他の職人に負けたくない」という強い思い。空き時間には手製の墨壺を作り、わずかな時間も惜しんで努力を重ねました。

 独立後は鹿苑寺(金閣寺)、慈照寺(銀閣寺)、北野天満宮などを手掛ける社寺建築で有名な北村誠工務店に常用で出入りし、研鑽を積んだ中島さん。京都での仕事は、さまざまな職人との人脈も構築でき、今に生かされていると話します。

「確かな知識と技術、経験を持ったプロ同士が尊重し、勉強し合いながら進む工事は、完成度が高くなるだけでなく、作業効率も良く費用も安く収まります」

 現在施行中の日蓮宗一乗山無二亦寺(茨城県ひたちなか市)の山門と透かし塀、手水舎の新築工事では、奈良の木材屋から上質なものを直取引で仕入れ、飾り金物や特注の瓦についても、国宝や重要文化財の工事に携わった一流職人に依頼をしているそうです。

 「大工は積み重ねの仕事。得た技術の精度をどう高めるか、築いた人脈をどう生かすかは、その後の自分次第です」と、一貫した学びの姿勢は、変わることなく今日に至ります。

中島雅生さん施工事例

#chapter3

職人として、そして棟梁として。今後の大工業界を担う若手職人を育てる

 「心を込めて作ったもの、心を一つにして作ったものは間違いなく完成度が高い。ものを造る上で最終的な完成度を左右するのは『作り手の心』です」。良い仕事をするためには協力関係にある職人同士はもちろん、同僚や弟子との信頼関係も不可欠だと中島さん。

 「棟梁は木組みよりも人組が大事」とは、伝説的な宮大工・西岡常一の言葉。腕の良い棟梁は人を育てるのも上手いというその言葉の意味を、会社を立ち上げた今、しみじみ実感していると中島さんは話します。

「職人が経験とともに成長するのは『技と心』です。尊敬する親方が自分にそうしてくれたように、私も棟梁として弟子を平等に評価し、正しく褒めるよう心がけています。技術と心を磨いて大工という仕事に誇りを持って向き合って欲しい」と、今後の建築業界を担う若い大工へ期待を寄せます。

 「良いものを作りたい」という中島さんの職人魂から生み出される建物は、美しく、調和のとれた佇まい。それはきっと、高い技術力や質の良い素材を使ったからだけでなく、「心を込めて」作ったものだからなのでしょう。

 「数寄屋建築を洋風デザインと融合させたり、鉄筋コンクリートのRC造りの建物にお茶室をつけるなど、現代の需要にあった家作りもしていきたい」と、今後の展望を語る中島さんの眼差しは、職人としての熱い思いと、ものづくりへの飽くなき探究心で満ちていました。

(取材年月:2019年6月)

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専門家プロフィール

中島雅生

伝統的な「数寄屋建築」の技法を受け継ぐ現代の工匠

中島雅生プロ

一級建築士

株式会社工匠常陸

数寄屋建築の名門・中村外二工務店で得た技術と経験を活かし、茶室や数寄屋住宅、社寺建築を手がける。また古民家などの修復工事や、和モダン、洋風デザインの住宅設計など、さまざまな案件に柔軟に対応。

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