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中島雅生

伝統的な「数寄屋建築」の技法を受け継ぐ現代の工匠

中島雅生(なかしままさお) / 一級建築士

株式会社工匠常陸

コラム

暇つぶしのアルバイトから始まった私の大工人生

2019年8月8日 公開 / 2019年8月9日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物

 私のコラムを読んで下さった方々は私にどのようなイメージを持たれたでしょうか。今回は、大工の道に飛び込むか、飛び込むまいか、迷っている若者に、飛び込んでから考えることをお勧めするために、私が大工の道に入るに至った経緯をお話したいと思います。

 当時、大学卒業後の就職先すら決められなかった私は、ふらりと実家に戻り、何の夢も無く、何の覚悟もなく暇つぶしの小銭稼ぎ感覚で地元の工務店にアルバイトに行きました。この時点ではまだ正式な弟子入りはしていません。
 アルバイトをして一カ月が経った頃、仕事着として履いていたズボンが破けたのを機に、ワークマンできちんとした作業着を買い、それを着て出勤したところ、当時の親方が私の格好を見て、
「おぅ、おめぇ、やっとやる気になったか。」と言い、
「おぅ、おめぇら、今日からこいつ正式に弟子入りしたから、そのつもりで使ってやれ。」
と先輩職人等に言い放った時に私の大工人生が始まったのです。
 皆様がお気付きの通り、私は大工になるための決断すら自分でしていません。当時の親方が勘違いして勝手に言い放った言葉を、「まぁ、いいか。」とただ受け入れただけに過ぎないのです。ですから、当時、先輩職人から頂いたおさがりの鑿を初めて一時間くらい研いだ時に、その先輩から居眠りをしなかったことを褒められたくらい期待値の低い若者でした。

 しかし、大工という仕事が思いのほか気に入ったことを機に、私の中でそれまでに入ったことのないスイッチが入り、そこから16年間で4つの工務店を夢中で渡り歩き、地道に努力を積み重ねてくることができました。その間、国宝や重要文化財に指定されている建物の修繕工事や坪単価数百万の数寄屋建築などの現場にて職人としての知識と技術の向上に努める一方で、一級建築士や宅地建物取引士などの資格も多数取ることができました。そして去年、社会的には何の信用もない一介の大工でありながら、数千万円の創業融資をして頂き法人を設立するに至りました。

 小さい頃からこれといった取り柄もなく努力家でもなかった私ですが、たまたま大工という職業を気に入ったことで、職人としてだけでなく社会人としても一定の信用をして頂けるまでに成長できたと自分では感じています。若者にとって良い仕事との出会いは、それまでの良し悪しのすべてを帳消しにするくらい重要なことなのかもしれません。

 次回は「工務店の経営者になって思うこと」と題して、大工が激減してしまった要因をもう少し深く掘り下げてみたいと思います。
 

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