3人の娘が、それぞれ別の小学校に通うまで〈後編〉本人たちの理由を聞いてみたら
今年、受験体操の運営と指導を引き継いでからのことです。ある男の子が、突然僕の方に寄ってきました。
「体操にハマってる」
そう言ってくれたのです。
うれしかったのはもちろんですが、なぜそう思ったのかも気になりました。わざわざ寄ってきた姿に、僕に伝えたかったのかなと感じました。
受験体操を教えていて、子どもから「ハマってる」と言われる。なかなかうれしい言葉です。
回数と、休憩の組み方を見直した
今年の1月から指導を始め、6月頃には手応えを感じるようになりました。
見直したことの一つが、1人あたりの体操の実施回数です。同じ課題に複数回取り組めるよう、練習を組み直しました。
ただ、回数さえ増やせばよいとは考えていません。その間に、どのくらい休憩を取るかも考えていました。
ヒントになったのは、僕自身のトレーニング経験です。
筋トレでは、重い重量を扱うことも負荷になります。実際に取り組むと、筋肉の疲れを感じます。だから、次のセットに向けて意味のある休憩を取るのです。
この考え方を、子どもたちの体操にも生かせると思いました。
子どもたちが取り組むのは、自分の体重で行う運動です。僕の筋トレから持ち込んだのは、重い器具ではなく休み方でした。
同じ課題に繰り返し取り組み、その間に休憩を挟む。その長さも考えながら、セットを組みました。
幼児教室では、順番を待つ時間がその休憩に当たると考えたのです。
順番を待つ姿にも、違いが見えてきた
以前、子どもたちは順番待ちによそ見をしたり、壁を触ったりしていました。
僕には、手持ち無沙汰になっているように見えました。待っている時間を、うまく使えずにいたのではないかと思います。
1人あたりの実施回数を増やし、休憩も含めて練習を組む。その中で、子どもたちの待ち方に違いを感じるようになりました。
呼吸をして、次の順番に備えている。そんな姿が見られるようになったのです。
これだけで、集中力が高まったとまでは言えません。それでも、以前との違いとして僕の印象に残っています。
順番待ちを、何もしていない時間と見るか。次の取り組みに備える時間と考えるか。僕自身も、その時間の捉え方を見直しました。
評価だけでなく、指導の過程も見てもらう
授業を見直す中で、保護者への伝え方も意識しました。
こちらが客観的な評価を伝えるだけではなく、指導の様子も見ていただく。一人ひとりの成長を、保護者にも確かめてもらいたいと考えました。
できるか、できないかを見るだけでなく、タイムを計ることもありました。
また、その子だけが取り組む場面では、保護者に撮影してもらいました。その際は、ほかの子どもたちへの配慮もしています。
指導する側が見たことを伝える。それに加えて、保護者自身にも取り組む姿を見てもらう。その両方を大切にしたかったのです。
授業後に、親子で練習する時間を
授業後には、10分程度の延長練習も設けました。希望するご家庭が参加する、任意の時間です。
そこでは、子どもと保護者が一緒に練習します。
授業を参観していただくことに加え、親子で取り組む時間もつくる。これも、今年見直したことの一つでした。
実施回数や休憩だけでなく、保護者にどう関わっていただくか。体操の授業を、そのようなところからも考え直しています。
「ハマった理由」は、まだ分からない
男の子の言葉を聞いた後、ほかの子からも似た言葉がありました。
何がそう感じさせたのでしょうか。
取り組む中で得られる達成感が、理由の一つなのかもしれません。ただ、これは今の僕の仮説です。あの男の子本人の理由は、まだ確認できていません。
実施回数を増やしたから好きになったとも、今は言い切れません。
指導する側としては、つい自分の工夫と結びつけたくなります。早くも、自分に丸をつけそうになります。そこは少し、立ち止まっておきたいところです。
確かにあったのは、男の子が自分から寄ってきてくれたこと。そして「体操にハマってる」と言ってくれたことです。
まずは、その言葉をうれしく受け止めています。
子どもの姿と、子ども自身の言葉から
小学校受験の体操では、何ができるようになったかも大切です。
一方で、次の順番をどう待っているか。授業について、どんな言葉を伝えてくれるか。そうしたところにも、目を向けていたいと思います。
保護者にも取り組む姿を見てもらい、親子で練習する時間をつくる。そんな工夫を重ねながら、授業を考えています。
「体操にハマってる」
あの言葉はうれしい知らせであり、僕にとって新しい問いでもありました。
次に機会があったら、何にハマったのかを聞いてみたいと思っています。


