知育の意味とは。効果は?
幼児期に知育で育成するべき子どもの能力は「認知能力(読み書きや計算といった力)」よりも、「非認知能力(自制心や協調性などテストで測れない力)」が大切であることがわかってきています。また、幼児期の過度な知育は子どもの発達に影響を及ぼすこともわかってきています。そのため、知育に目が行き過ぎることで、幼児期に大切な親子の愛着関係がおろかになっていないかも注意したほうがいいでしょう。知育は幼児期の子どもにとってよいものです。日常生活に無理なく取り入れることで、子どもの知的な能力の発達を促すことができます。
過度な知育は子どもの発達によくない
知育は、子どもの発達に合わせて適度に行えば効果的であることがわかっています。より効果があると言われているのは、非認知能力と言われる自制心や協調性などテストでは測れない力です。
非認知能力には2種類あります。1つは自尊心や自己肯定感、自制心などの「自分に関する力」、もう1つは協調性、思いやり、共感する力など「社会性と呼ばれる力」です。近年、幼児期の知育によってこれらの非認知能力を身につけることの重要性が注目されています。認知的能力と呼ばれる測ることができる力(読み書きや計算といった力など)はどうでしょうか。早期教育や知育と聞くと、認知能力の育成を想像する方が多いと思いますが、幼児期の認知的能力の育成はあまり意味がないことがわかっています。代表的な調査として、アメリカのノーベル賞受賞学者であるヘックマンの「ペリー就学前プロジェクト」と呼ばれるものがあります。ヘックマンは123名の子どもを就学前教育を受けるグループと受けないグループに分けて、数十年にわたって追跡しました。結果、就学前教育をうけたグループは受けなかったグループに比べて、高卒資格を持つ人の割合が20%高く、離婚率も低く、生活保護に頼る率も低いなど、社会的に成功している確率が高いことがわかりました。
なお、就学前教育の内容は、子どもの自発性を大切にする活動が中心で、年齢や個々の能力に応じて調整されました。興味深いのは、認知的能力(IQスコア)に関して、就学前教育を受けた子どもたちは最初のうちは優位でしたが、中学生になる頃にはその差はほとんどなくなってしまっていたことです。つまり、認知能力に関しては幼児期に行ったとしてもあまり意味がないことが証明されたということです。そのため、子どもに対して勉強を少しでも有利に進めてあげようと、早期に認知的能力(読み書きや計算といった力)を育成する教育に力を入れてもさほどの効果は望めないでしょう。
さらに、最近の研究では幼児期の早すぎる知的刺激が、子供の発達にとってトラブルを引き起こす可能性が高いことも明らかになっています。例えば、脳が急激に発達する乳幼児期に、記号化された知識を記憶するなど強すぎる刺激が与えられると、脳の発達に影響がでると考えられています。ほかにも知育のやりすぎのデメリットはあります。乳幼児期は親子の愛着形成が非常に大切な時期です。親との愛着形成がほかの人に対する信頼感を育み、その後の心の発達や人間関係に大きく影響を及ぼします。親が子どもの知的な能力育成ばかりに目がいくと、そのままの存在を受容してもらいたい子どもとすれ違い、愛着の形成がうまくいかないことがあります。
◆次回◆知育は大切だが気を付けなければならないことも