会社員のまま起業準備する方法|「動けない99%」を抜け出す3つの壁と乗り越え方
断ったら、次の依頼は来なくなる?
――会社勤めを続けながら資料作成の仕事を受けている方が、予算や納期の合わない依頼も断れずにいます。「断ったら、もう仕事を頼まれないのでは」と心配しているそうです。
新井:声をかけてもらえるとうれしいですし、始めたばかりならなおさら断りにくいですよね。ただ、受けた後で納期に間に合わなかったり、約束した範囲を仕上げられなかったりすれば、次の依頼にも響きます。依頼を全部受けることと、相手との関係を大切にすることは、同じではありません。まず、自分が引き受けられる条件を決めておくと、返事をするときに迷いにくくなります。
――条件というのは、報酬の額だけですか?
新井:金額だけでは足りません。着手まで何日あるか、平日の夜と週末に何時間使えるか、どこまで作るか。これも一緒に見ます。同じ報酬でも、資料のページ数や修正回数が違えば、必要な時間は変わりますから。たとえば「この金額なら修正は1回まで」と範囲を決めておけば、その条件で引き受けられるかどうかを、相手にも伝えられます。
見積もりの前に聞く三つの条件
――依頼の内容が曖昧なまま、先に見積もりを求められたら、何を聞けばいいでしょうか?
新井:まず、作る資料と、完成の状態を聞きます。相手が材料を渡してくれるのか、こちらが調べて書くのかで、作業の重さがまるで違います。次に、希望する納期を聞いて、自分が使える時間と比べます。そして最後に予算を確認する。報酬の額だけを聞いても、何回修正があるのか分からなければ、判断はできません。作業の内容、納期、金額。この三つがそろってから見積もりを出すのが自然です。
――聞き返すと、仕事を選り好みしていると思われませんか?
新井:相手も、何をいつまでにいくらで頼めるのかを知りたいはずです。受けられない条件を先に伝えれば、依頼する側も、仕事の範囲を変えるか、別の人に頼むかを決められます。曖昧なまま「できます」と返すほうが、後から相手を困らせてしまいます。拙著『会社で働きながら6カ月で起業する』では、「『1人でできるサイズ』にすればスムーズにいく」と書きました。ひとりで引き受けるなら、仕事の範囲を、自分の使える時間に合わせることが大切です。
――予算が想定の半分で、着手まで2日しかない依頼なら、どちらを先に伝えますか?
新井:まず、自分が実際に対応できない条件を伝えます。2日では作業時間を確保できないなら、金額を上げてもらっても引き受けられません。納期を延ばせるかを聞いて、延ばせないなら早めに断ります。納期には対応できても予算が足りないなら、ページ数や修正回数を減らした案を出せます。理由を分けて話せば、相手にも「選べる」ことが伝わります。
断るときは、代案を一つ添える
――条件が合わないと分かったとき、角が立ちにくい返事の仕方はありますか?
新井:まず、声をかけてくれたお礼を伝えます。そのうえで、受けられない条件を具体的に言うのです。「今週中に10ページを仕上げる時間は取れません」というように、難しいのが納期と作業量だと分かれば、相手も判断できます。できる案があるなら、一つ添えてください。「5ページまでなら今週中にできます」「来週の納品なら10ページ作れます」という具合です。代案が思いつかないなら、無理に作らなくて大丈夫です。今回は引き受けられない、と伝えれば十分です。
――「忙しいので無理です」だけでは、次にどんな条件なら頼めるのかが相手に伝わらないですね。
新井:そうなのです。相手の予算を責める必要もありません。こちらができる作業と、必要な時間を説明すれば、条件が合うときに声をかけてもらいやすくなります。返事を先延ばしにすると、相手が別の依頼先を探すのも遅れてしまいます。受けるかどうかまだ決められないなら、いつまでに答えるかを先に伝えておきましょう。
引き受ける条件は、自分で決めておく
――最後に、断れずに悩んでいる方へ伝えたいことはありますか?
新井:最初から、金額、納期、修正回数を完璧に決める必要はありません。これまで受けた仕事で、いちばん困ったのはどの条件でしょうか? 金額が低すぎたのか、着手までの時間が足りなかったのか、修正が増えたのか。そのうちの一つについて、次の依頼ではどこまでなら引き受けられるかを決めてみてください。断ること自体を目標にするのではなく、引き受けた仕事を約束どおり仕上げるために、条件を持っておくのです。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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