扶養は130万円と136万円のどちら?税金と社会保険を分けて見る

新井一

新井一

テーマ:起業

扶養の数字がそろわないのは制度が違うから

――新井さん、今日は扶養の相談です。パートをしながら自宅で受けられる仕事も少しずつ始めた方が、130万円、136万円、106万円など数字がいろいろ出てきて、どれを見ればいいのか分からないそうです。

新井:扶養は、調べれば調べるほど混乱しやすいですね。理由は、同じ「扶養」という言葉で、税金と社会保険の二つを話しているからです。どちらか一方に入る、という選択ではありません。それぞれ別々に判定されます。

――まず、税金と社会保険を分ける。

新井:はい。税金の扶養は、1月から12月までの所得をもとに、年末調整や確定申告で見ます。社会保険の扶養は、配偶者の勤め先が入っている健康保険が、これから先1年の収入見込みで判断します。過去一年ではなく、これから先を見るのが大きな違いです。

136万円は税金の配偶者控除の話

――136万円という数字はどこから出てくるのでしょうか。

新井:税金の配偶者控除の話です。令和8年分からは、配偶者控除の対象になる配偶者の合計所得金額が62万円以下とされています。給与だけで働く場合、給与収入136万円以下にあたります。昔から言われる103万円は、令和6年分までの金額です。令和7年分は123万円以下、令和8年分から136万円以下という流れですね。

――では、136万円を超えたら全部なくなるのですか?

新井:そこも誤解されやすいです。配偶者控除が外れても、配偶者特別控除の対象になる範囲があります。税金のほうは、壁というより坂に近いです。収入が増えるほど控除額が段階的に下がっていく。だから「1円超えたら全部損」と見ると、判断を間違えます。

――税金の扶養から外れると、負担が増えるのは誰ですか?

新井:扶養している配偶者のほうです。所得税や住民税に影響します。ここが社会保険と違います。社会保険の扶養から外れると、健康保険と年金の保険料を払うのは自分です。同じ「外れる」でも、お金を出す人が入れ替わるのです。

130万円は社会保険の扶養で見る

――130万円は社会保険の話ですね。

新井:そうです。健康保険の被扶養者、国民年金第3号被保険者に関わる線です。原則として年間収入130万円未満。60歳以上や障害者の場合は180万円未満です。ただし、ここでいう年間収入は、過去の実績ではなく、認定時点から先の一年の見込みです。

――今年の合計がまだ少なくても、これから増えるなら外れる可能性がある。

新井:あります。給与なら月額108,333円以下という目安もあります。さらに雇用保険の基本手当、年金、傷病手当金、出産手当金なども、社会保険の扶養では収入として見られます。税金とは数えるものが違うのですよ。

――配偶者の健康保険によっても違いますか?

新井:扱いが違うことがあります。協会けんぽなのか健康保険組合なのかで、確認先が変わります。だから「ネットで見た130万円」だけで決めず、配偶者の勤め先が加入している健康保険の名前を先に聞いてください。

130万円未満でも社会保険に入ることがある

――106万円の話も出てきます。これはまた別ですか?

新井:別の入口です。扶養の範囲内かどうかとは別に、勤め先の条件しだいで、自分自身が健康保険と厚生年金に入ることがあります。被保険者数が一定以上の企業で、週の所定労働時間などの条件を満たす場合です。

――勤務日を1日増やす相談を受けたときは、金額だけでなく時間も見る。

新井:その通りです。年収が130万円に届いていなくても、週20時間以上になるかどうか、勤め先の規模がどうかで、自分が社会保険に入る側へ移ることがあります。令和8年10月には月額8.8万円以上という賃金条件が撤廃される予定ですし、令和9年10月からは企業規模の範囲も広がります。制度の線そのものが動いています。

――自宅の仕事が増えるだけでなく、パート先の契約変更も影響するのですね。

新井:そうです。自宅で受ける仕事の入金記録と、パートの労働条件通知書を別々に持っておくと聞きやすいですよ。金額だけでなく、月ごとの入り方、週の時間、契約期間を見せられるようにしておくことです。

聞く先を二つに分けると迷いが減る

――相談者の方は、どこへ聞けばいいのでしょうか。

新井:税金の扶養は、国税庁のタックスアンサーと、扶養している配偶者の勤め先の年末調整担当です。住民税は市区町村の窓口も関係します。社会保険の扶養は、配偶者の勤め先が加入している健康保険です。協会けんぽなのか、健康保険組合なのかを確認してください。

――一つの窓口で全部分かるわけではない。

新井:はい。ここを一つにしようとするから混乱します。僕の勉強会でも、源泉徴収票、月ごとの入金記録、労働条件通知書を持って、税金と社会保険を別々に聞いた方は、そのあと迷いにくいです。答えを持っている窓口が違うと分かれば、数字の違いにも驚かなくなります。

――最後に、扶養が不安で勤務日を増やせない方へ、どう伝えますか。

新井:まずは、怖いから断るのではなく、自分の数字を分けて見てください。税金は1年の所得、社会保険はこれからの収入見込み、そして勤め先の社会保険加入条件。この三つです。130万円と136万円は、同じ線ではありません。分けて聞けば、働く日を増やすのか、自宅の仕事を月ごとに調整するのか、自分で社会保険に入る側へ移るのかを考えられます。

――数字を一つに決めようとせず、制度ごとに見るのですね。

新井:そうです。扶養の話は、損か得かだけで見ると苦しくなります。自分の働き方をどう変えたいのか、そのうえで税金と社会保険がどう動くのか。順番をそこへ戻すと、返事もしやすくなりますよ。

――ありがとうございました。

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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