会社員のまま起業成功の秘訣!「努力しないで成果を出す」起業術を新井一氏が語る
退職前の有給は会社の都合だけで消せない
――新井さん、退職前に有給が20日以上残っていて、最終出社日のあとに全部使いたいと伝えたら「引き継ぎが終わらないから無理」と言われるケースがあります。会社は断れるのでしょうか?
新井:結論から言うと、退職日までに残っている年次有給休暇を消化する請求を、会社が単に「困るから」で消すことはできません。会社にあるのは、労働基準法第39条第5項の時季変更権です。つまり休暇を別の日に移す権利であって、休暇そのものを無くす権利ではありません。
――在職中なら別の日に移せても、退職前だと移す先がなくなるわけですね。
新井:そうです。退職日を過ぎれば年休の権利は消えるので、移す先がない。ここが通常の有給申請と大きく違います。引き継ぎが必要なら、話し合うべきなのは退職日や最終出社日、引き継ぎ範囲です。有給の日数を返上する話ではありません。
まず残日数を正確に数える
――「全部使いたい」と言う前に、何から確認すればよいですか?
新井:最初は残日数です。今年度に付与された分だけでなく、前年度から繰り越された分も見ます。年次有給休暇の請求権は2年で時効になりますから、まだ消えていない前年度分が残っていることがあります。
――給与明細に出ている日数だけでは足りない場合もありますか?
新井:会社の表示方法によります。だから、人事に「今年度分、繰り越し分、すでに使った分」を分けて確認するといいですね。6年6カ月以上働いている通常勤務の方なら、1年に20日付与されるのが上限です。週4日など所定労働日数が少ない方は比例付与になるので、そこも就業規則で見ます。
――日数が曖昧なまま交渉しない、ということですね。
新井:はい。感情で「取らせてください」と言うより、残日数の内訳を紙にしてから話すほうが強いですよ。
退職日は最終出社日に残日数を足して決める
――実務上は、どの順番で日付を決めればよいのでしょう?
新井:退職日を先に決めないことです。まず引き継ぎを終える最終出社日を置く。そこに残っている有給日数を、所定労働日で足していく。土日祝が休みなら、20日の有給はだいたい1カ月分の期間になります。
――退職日を先に書いてしまうと、入りきらない分が消えるのですね。
新井:そうです。起業準備の相談でも、ここで損をしている人を見ます。「退職日は月末です」と先に言ってしまい、あとから有給が残っていることに気づく。すると会社側も日程を組み直しにくい。順番は、最終出社日、有給残日数、退職日。この順です。
――引き継ぎが終わらないと言われたら、どう返せばよいですか?
新井:「では、引き継ぎ範囲と最終出社日を相談しましょう」でいいと思います。会社が調整できるのは作業量や出社日であって、法定の休暇を消すことではありません。後任が決まっていないことも、休暇の可否とは別の問題です。
買い取りを前提にしない
――「使えないなら買い取ってください」という考え方はどうでしょう?
新井:そこは注意が必要です。法定の年次有給休暇をあらかじめ買い上げて、取れる日数を減らすことはできません。金銭を払っても休ませたことにはならないからです。
――退職時に残った分を買い取ってもらうことはありますよね。
新井:あります。ただし、それは会社の制度しだいです。労働基準法に、残った有給を必ず買い取れという条文はありません。法定を上回る会社独自の休暇の扱いも就業規則によります。買い取りを当てにするより、消化できる日程を先に組むほうが現実的です。
――お金で済ませる話に見えて、実は日程設計の話なのですね。
新井:そうですね。退職前の有給は、独立前に落ち着いて準備する時間にもなります。ただし、休みが取れるから起業がうまくいくわけではありません。空いた平日に何を進めるかを、面談、見積り、試作品、告知文など具体的な作業に分けておくことが大事です。
折り合わない時は管轄の労基署へ相談する
――どうしても会社と話がかみ合わない場合、どこに相談すればよいですか?
新井:勤務先の所在地を管轄する労働基準監督署です。住んでいる場所ではなく、勤め先の所在地で見ます。持っていくなら、就業規則、残日数が分かる給与明細、人事とのやり取り、退職日や最終出社日の案ですね。
――準備する書類も、感情的に訴えるためではなく、事実を並べるためですね。
新井:その通りです。退職時の有給消化でもめる時、多くは権利の有無ではなく、日付の置き方で混乱しています。残日数を数える、最終出社日を置く、有給を足して退職日を決める。そのうえで引き継ぎ範囲を相談する。この順番に戻すだけで、話し合いはかなり整理されます。
――会社を辞める前の最後の調整ほど、順番が大事なのですね。
新井:はい。焦って「辞めます」だけを先に出すと、使える制度も時間もこぼれます。起業する人ほど、退職前の制度を丁寧に確認してください。辞め方は、その後のお金と時間の持ち方に直結しますから。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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