交流会に参加し始めたら名刺は必要か? 起業準備中の「正しい名刺の作り方」
失業手当は、起業の支度金ではない
――新井さん、今日は「起業準備をしながら失業手当を受け取れるのか」という相談です。認定日に起業の話をしたら、すぐ手当が止まるのではないかと不安な方が多いようです。
新井:多いですね。ここは怖くて黙ってしまう人がいます。でも、制度が見ているのは「準備をしているか」だけではありません。求職中なのか、事業の準備や事業そのものに専念しているのか、ここが境目です。
――調べたり、人に会ったり、見積もりを取ったりしただけで止まるわけではないのですね。
新井:そうです。失業手当は、次の仕事を探している間の生活を支える制度です。起業の支度金ではありません。だから、就職する意思と能力があり、求職活動を続けている状態なら、起業準備と並行する余地はあります。逆に、就職活動をやめて準備だけに時間を使うなら、話は変わります。
起業準備と求職活動は、予定表を分けて考える
――「起業準備をしています」と言うと、求職活動をしていないと思われそうで怖いです。
新井:そこは予定表を分けるといいですよ。職業相談、応募、面接、就職支援セミナーなど、認定日に必要な求職活動実績は別に確保する。起業準備で資料を読む、知人に話を聞く、サービスの形を考える。この時間はそのまま求職活動実績にはなりません。
――準備を進めた分だけ実績になる、とは考えないほうがいいのですね。
新井:はい。ここを混ぜると危ないです。次の認定日までに職業相談を1件入れる。求人への応募も検討する。そのうえで、空いた時間に起業の準備をする。こう分ければ、窓口でも説明しやすくなります。隠すより、求職活動と準備の線を引いて話すほうが安全です。
「専念に変わった日」は自分で決めつけない
――では、どこから「専念」になるのでしょうか。開業届を出した日ですか?
新井:開業届だけで全部が決まるわけではありません。実際に仕事を始めた日、準備だけに切り替えた日、受注を受けた日など、状況で見られます。大事なのは、自分で「たぶん大丈夫」と決めないことです。判定するのは本人ではなく、受給資格を扱うハローワークですから。
――契約期間満了で離職した人も、自己都合退職の人も同じですか?
新井:離職理由によって待期や給付制限の扱いが変わることがあります。契約更新を希望したのに更新されなかった場合は、特定理由離職者として扱われる可能性があります。自己都合退職なら給付制限が置かれることもある。だから、離職票の理由欄と、受給資格決定後の離職理由コードは必ず確認してください。
事業を始めるなら再就職手当の順番を見る
――準備が進んで、実際に事業を始める日はどう考えればいいですか?
新井:そこで確認したいのが再就職手当です。再就職手当は、会社に就職した場合だけの制度と思われがちですが、事業を開始した場合も対象になることがあります。待期が終わっていること、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っていること、1年を超えて事業を続ける見込みがあることなど、見る点があります。
――開業を急ぎすぎると、対象から外れることもあるわけですね。
新井:あります。特に給付制限がある人は、待期後すぐではなく、一定期間を置いてからでないと対象にならない扱いがあります。だから「早く開業届を出せば得」という話ではありません。先に窓口で残日数と開始日の扱いを試算してもらう。この順番を守ってください。
受け取らずに先送りする選択肢もある
――再就職手当を受け取る以外の道もあるのでしょうか。
新井:あります。事業を始めた人向けに、基本手当の受給期間を後ろへずらせる特例があります。事業を続けている期間を、原則1年の受給期間に算入しない扱いにできる場合がある。簡単に言えば、先に事業へ踏み出し、うまくいかなかったときに再就職活動へ戻る余地を残す考え方です。
――再就職手当と両方使えるわけではないのですね。
新井:そうです。再就職手当を受けるか、受給期間の特例を考えるかは、残日数、事業の見込み、生活費の余裕で変わります。ここも自己判断で選ばないほうがいいですね。失業手当の話は、聞く相手を間違えるとすぐ不安が増えます。ネット検索で決めず、窓口で具体的に聞くほうが早いですよ。
起業準備中は、増やすより「やらないこと」を決める
――起業準備をしながら受給する期間は、何に気をつければいいでしょう。
新井:僕なら、最初に「やらないこと」を決めてもらいます。事務所を借りない。高い設備費をかけない。届出を先回りで出さない。名刺やソフトをそろえる前に、誰のどんな困りごとを受けるのかを1つに絞る。これだけで、求職中として説明しやすい範囲に収まりやすくなります。
――準備を止めるのではなく、準備の範囲を小さくするのですね。
新井:その通りです。起業は、勢いで会社を作れば進むものではありません。会社を辞めずに小さく始める場合も、離職後に制度を使いながら進める場合も、考え方は同じです。大きく構えず、仕事になる一点だけを試す。不安を減らすには、隠すことではなく、事実を整理して伝えることですよ。
――最後に、今まさに認定日が不安な方へ一言お願いします。
新井:次の認定日までに、求職活動実績を別枠で確保してください。そのうえで、起業準備をしていること、まだ専念には切り替えていないこと、切り替わる日は届け出るつもりでいることを窓口で確認する。手当が止まるかどうかを自分だけで抱えないことです。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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