「すごい人」で終わってしまう自己紹介は何を変えたらいい?

新井一

新井一

テーマ:起業

実績が多いほど申し込みが増えるとは限らない

――新井さん、独立して半年ほど経った方から「プロフィールに実績や資格を並べているのに、申し込みにつながらない」という相談があります。読んだ人からは「すごいですね」と言われるのに、その先に進まない。これは何が起きているのでしょうか。

新井:とてもよくある相談です。まずお伝えしたいのは、実績が悪いわけではないということです。問題は、実績そのものではなく、読み手との距離です。プロフィールを読んだ人が「この人はすごい。でも自分とは遠い」と感じると、申し込みの前で止まってしまいます。

――褒められているのに、申し込みにはならないわけですね。

新井:そうです。「すごいですね」は、必ずしも前向きな反応とは限りません。相手が質問を返してこないまま終わるなら、それは会話がそこで閉じた合図かもしれません。自己紹介の役割は、自分を大きく見せることではなく、相手が自分の悩みを話し始められる入口を作ることです。

強みがそのまま距離に変わることがある

――なぜ実績を並べると、距離ができてしまうのでしょうか。

新井:読み手は、あなたの経歴を採点したいわけではありません。自分の困りごとが、その人に頼める範囲に入っているかを知りたいのです。ところが、前職の大きな案件、資格、表彰、業界での経験が上から順に並ぶと、読み手は「自分のような小さな相談をしていいのだろうか」と感じます。

――専門性が高く見えるほど、頼みにくくなることがあるのですね。

新井:あります。特に個人で仕事を始めたばかりの方は、信頼してもらおうとして、持っている実績を全部出したくなります。その気持ちは自然です。ただ、強みを強いまま出すだけだと、相手が自分を重ねる余白がなくなります。大事なのは、実績を減らすことではありません。実績を、相手が受け取れる言葉に置き換えることです。

実績を消さずに相手の言葉へ置き換える

――では、プロフィールはどう直せばいいのでしょうか。

新井:3つあります。1つ目は、完璧ではない部分を1つだけ入れること。2つ目は、業界の中でしか通じない言葉を、相手が普段使う言葉に直すこと。3つ目は、自分が何をしてきたかではなく、相手の現場で何が変わるかに言い換えることです。

――たとえば、どんな言い換えになりますか。

新井:たとえば「店頭スタッフの教育を22年担当しました」だけだと、読み手はすごいとは思います。でも、それが自分に何をしてくれるのかまでは分かりません。これを「新しい人が入った月でも、店長が教える時間を増やさず接客の質を落とさない状態を作ります」と書くと、急に自分の店の話として読めます。

――実績は残したまま、先に相手の変化を書くのですね。

新井:その通りです。資格や経歴は下げなくていい。ただ、最初に置くのは肩書きや受賞歴ではなく、相手が受け取る変化です。「私は何者か」より先に、「あなたの何を軽くできるか」を書く。これだけで、プロフィールの読み味はかなり変わります。

完璧ではない一行が相談の入口になる

――完璧ではない部分を書くのは、少し怖い気もします。

新井:怖いですよね。でも、弱みを全部さらす必要はありません。いまも少し苦手な作業、昔つまずいたこと、最初は分からなかったことを一行だけ添える程度でいいのです。たとえば「私も店頭に立っていた頃、クレーム対応だけは最後まで苦手でした」とあるだけで、読み手は少し話しやすくなります。

――それがあると、「この人も自分の困りごとを分かってくれそう」と感じますね。

新井:そうです。専門性を下げるのではなく、相手が近づける場所を作るのです。相談する側は、完璧な人に圧倒されたいのではありません。自分の未整理な悩みを、安心して出せる相手を探しています。だから、立派さだけで埋め尽くされたプロフィールは、意外と入口がありません。

「すごいですね」で終わる面談を見直す

――申し込みにつながらない人は、どこから見直すとよいでしょうか。

新井:まず、これまでの面談や問い合わせを思い返してください。相手が「すごいですね」と言ったあと、質問が続いたかどうかです。もし質問が出ずに終わっているなら、実績は伝わっていても、相手の悩みに接続できていない可能性があります。

――質問が出るプロフィールに変える、ということですね。

新井:はい。プロフィールを読んだ人が「うちの場合はどうなりますか」「こういう小さな相談でもいいですか」と聞ける状態にする。それが申し込み前の距離を縮めます。実績を足す前に、まず一つだけ相手の言葉に直してください。難しい専門用語を、家族や友人に口で説明するとしたらどう言うか。その表現をプロフィールに入れてみるのです。

――最後に、今日できる一歩を教えてください。

新井:プロフィールの中で、いちばん立派に見せようとしている一文を選んでください。そして、その一文の前に「相手が受け取る変化」を一行足します。さらに、完璧ではない部分を一行だけ添える。これで、読み手はあなたの経歴ではなく、自分の相談を思い浮かべやすくなります。実績を消す必要はありません。順番と言葉を変えるだけで、申し込み前の距離は縮まります。

――実績を増やす前に、相手が話し始められる入口を作る。ありがとうございました。

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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