友人と2人で起業する前に決めたい役割・お金・退出の線引き

新井一

新井一

テーマ:起業

友人と組むこと自体が危ないわけではない

――新井さん、学生時代からの友人に「二人で会社をやらないか」と誘われた場合、共同創業は避けたほうがいいのでしょうか?

新井:避けたほうがいい、と最初から決めつける必要はありません。友人が声をかけてくれるということは、あなたの仕事ぶりや人柄を見込んでいるわけですから、それ自体は大切にしていい話です。ただし、仲がいいから大丈夫、という始め方だけは危ないですね。問題は友人と組むことではなく、意見が割れたときに誰が最終的に決めるのかを決めないまま走り出すことです。

――「二人なら心強い」と思う反面、仲間割れが怖いという不安もあります。

新井:その不安は自然ですよ。二人で始める強みは、相談相手がすぐ隣にいることです。片方が苦手な工程を、もう片方が支えられる。でも、何もかも50対50で対等にしてしまうと、判断が食い違った瞬間に事業が止まります。友情を守るためにも、最初にビジネス上のルールを分けておくことが大事です。

共同創業で先に決める三つのこと

――具体的には、何を決めておけばいいのでしょうか?

新井:大きく三つです。1つ目は、株式や出資の持ち分と最終決定権。2つ目は、出資、利益、報酬をどう分けるか。3つ目は、どちらかが辞めたくなったときの持ち分や清算方法です。この三つを口約束にしたまま始めると、うまくいっている間は見えませんが、少しつまずいたときに一気に問題になります。

――株式を半分ずつ持つのは、公平に見えますが危ないのですね。

新井:公平に見えますが、経営判断では止まりやすい形です。株式会社では、株式の割合が議決権に関わります。50対50で意見が割れると、普通の決議ですら前に進めないことがあります。リーダーを決めるなら、最低でも51%、重要な変更まで考えるなら67%以上を持つ設計が一つの目安になります。もちろん、定款や株主間契約の作り方は専門家に確認してください。ここを「まあ、友達だから」で済ませないことです。

一緒に会社を作らない組み方もある

――友人とやりたい気持ちはあるけれど、一つの会社を作るのは重く感じる人もいそうです。

新井:そういう人は、一人で事業を始めて、必要な部分だけ友人に業務委託する形でもいいのです。たとえば、あなたが資材調達のサポートを商品にして、友人には見積書作成や特定メーカーとの折衝だけを依頼する。役割ごとに報酬を決め、仕事ごとに書面を交わす。これなら、二人が一体で会社を背負わなくても、友人の力を借りられます。

――それは、友人を遠ざけるというより関わり方を整えるイメージですね。

新井:その通りです。現場でも、共同創業の形をやめて、それぞれ独立した事業者として組むように変えた方がいました。電機メーカーで資材調達を15年ほど担当していた方で、最初は友人と会社を作るつもりでした。でも、株式や退出時の清算を決めないまま進む危うさに気づき、一人で調達サポートを始め、友人には得意な作業を外注しました。公開情報から中小メーカーに案内し、最初は月3件ほど。16ヶ月目には月7件、月14万円ほどまで広がりました。

仲がよいうちに紙へ残すことが関係を守る

――友人同士だと、お金や辞めるときの話を先にするのは気まずそうです。

新井:気まずいですよ(笑) でも、関係が悪くなってから話すほうが、もっと大変です。仲がよいうちに、出資比率、報酬、利益配分、辞めるときの買取りや清算方法を紙に残す。これは相手を疑う行為ではなく、二人の関係を長く守るための準備です。決めごとがあるから、意見のぶつかり合いを事業の材料に変えられるのですよ。

――共同創業するか、一人で始めて友人に手伝ってもらうか。どちらを選ぶかは何で決めるとよいですか?

新井:最後は、二人が「対等に何でも相談したい」のか、「役割と最終責任を分けられる」のかで見てください。前者なら、一人で始めて必要な部分だけ頼むほうが続きます。後者なら、共同創業も選択肢になります。起業は勢いだけで始めるより、あとで揉めそうなところを先に言葉にしておくほうが強い。友人と過ごしてきた時間も、これから作る仕事も、同時に守るための一歩になります。

小さな仕事で二人の相性を試す

――「友人だから話さない」のではなく、「友人だからこそ先に話す」ということですね。

新井:そうです。二人で始めるのも、一人で始めて手を借りるのも、どちらも間違いではありません。大切なのは、納得して選んだ形にすること。そこまで決めてから始めれば、共同創業は怖いだけのものではなく、力を分け合える現実的な選択になります。最初の1件だけでも、誰が窓口になり、誰が請求し、どちらが最終確認をするのかを決めて試すといいですね。小さな仕事で二人の癖を見てからでも、会社化を考えるのは遅くありません。

――共同創業の前に、実務で相性を見ておくわけですね。ありがとうございました。

新井:こちらこそ、ありがとうございました。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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