いつの間にか自分の土地が他人のものになってしまっている 「取得時効」

後藤一仁

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テーマ:家(マンション・一戸建)・土地と法律

通常、「時効」といえば、「お金を貸して返済してもらえる権利は10年で時効になる(10年経つと失う)」などといった意味合いの、権利を一定期間で失う「消滅時効」が思い浮かびます。
しかし、忘れてはならないのが、反対に、一定期間で権利を得る「取得時効」です。

実は、『自分の所有ではないことを知っていても、所有の意志をもって、平穏・公然に20年占有すれば、自分のものとなる』のです。
そして、『自分に所有権がないと知らないまま(自分のものだと思ったまま)、平穏・公然に所有の意志をもって、物を占有している場合では10年』です。

この、取得時効(しゅとくじこう)は、他人の物または財産権を一定期間継続して占有する者に、その権利を与える制度です。

今回、ある方は、そのことを知らず、自宅敷地の一部を他人に取られてしまいました。
隣人が敷地の境界をずらして塀を作ってしまっていたのに気づかず、そのまま数十年が経過し、気づいたときには取得時効が成立していたのです。

隣地所有者に境界線を少しずらされていて、売却する時に測量して初めて気づいた時や、「おかしいな?」と思ってはいたが、「近所付き合いを円滑にする為に、波風たてるのは良くないし、まぁ、大丈夫だろう」と、言う機会がないまま数十年が経過してしまったなどという時に「取得時効が成立」していたことはよくあることです。

よく、「隣の方は良い方だから大丈夫。心配いらない」などと言われる方がいらっしゃいますが、仮にその方が良い方でも、代替わりして、息子さん・娘さんの代になったとたんに揉めるケースや、所有者本人は良い人でも、その方の配偶者(又はその家族)が口を出し揉めるケース、どなたかに相談に行かれて「取得時効」を知り、金銭が絡んできますと、もらえるものはもらっておこうと思い直すケースなど、色々あります。

では、賃貸マンションに平穏・公然に20年以上住み続けた場合は自分のものになるのでしょうか?
さすがに、この「借りたことによる占有」は、所有の意志にあたらないので、もちろん取得時効にはなりません。

しかし、この「取得時効」はドラマの中だけの出来事や、人ごとではありません。

他人の土地に勝手に家を建てて20年間住み続けた(占有した)場合、時効が完成すれば、本来は他人のものであった土地でも、所有権を取得することができてしまいます。
この、取得時効により権利を取得することを「時効取得」といいます。

ポイントは、『自分の所有ではないことを(他人のものと)知っていたとしても、20年間、自分のもののように、平穏・公然に、占有すれば、自分のものになる』ということです。

土地所有者から見れば、代々受け継がれてきて、大切な財産である土地を、「取得時効」という手段によって、簡単に他人に取られてしまうことは絶対避けたいことです。

この取得時効を防ぐために大切なことは、自分の土地を占有されているという事実に一刻も早く気づくことであり、その時点で、内容証明郵便で退去を求めた記録をとっておいたり、専門家にご相談するなど、打てる手をしっかりと打っておくことです。

例えば、越境している隣地の方と「隣土地へ造作物が越境していることは認めるが、そのまま無償で使用してもよい。但し、将来、増改築や再建築の際は越境物を撤去すること」などの内容が書かれた「覚書」を交わしておくということもよいと思います。
「覚書」を交わした時点で時効のカウントがストップするからです。

法律は、知らないと恐ろしいものです。気を付けなければいけませんね。

後藤 一仁




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後藤一仁
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後藤一仁(不動産コンサルタント)

株式会社フェスタコーポレーション

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