英語プレゼン、子どもの視点で世相鋭く映し出す!
プレゼン報告No2:思春期入り口編

前回のプレゼン報告コラムでは、ジャン・ジャック・ルソーの教育思想、とりわけ『エミール』に基づき、幼少期においては「野人の感性」を大切にし、五感を通して自らの幸福を身体全体で感じることの重要性について述べました。
低学年の子どもたちは、
好きなことを全力で語る
身体全体で感情を表現する
「I like」「I love」をまっすぐに発する
まさに主体の原型を育てる時期です。
しかし、ルソーは思春期に入ると人間は「他者」を意識し始めると述べています。
自己の幸福が、他者の幸福とどう関わるのか。
ここに社会的視野が芽生えます。
思春期とは、自分の内面だけでなく、「他者」や「社会」へと意識が開かれていく時期です。
自分の幸福だけでなく、「その幸福は他者とどのようにつながるのか」という問いが自然に芽生え始めます。
さらに、ルソーは、フランス革命の思想的土台ともなった『社会契約論』において、人間の根源的な問いを提示しています。
それは、
「私は私らしく自由でありたい。」
同時に
「人と調和し、うまく関係を築きたい。」
この二つをいかに両立させるか。
250年以上前に投げかけられたこの問いは、現代においてもなお、人間の本質に深く響く普遍的なテーマです。
思春期の子どもたちが見せる社会性の芽生えは、まさにこの問いへと自然に向かっていく過程なのです。
現代は、Al が瞬時に“最適解”を提示する時代です。
しかし、人間は葛藤します。そして、その葛藤の中でしか「自分の言葉」は生まれません。
だからこそ今、ルソーの問いが改めて重みを持つのです。
前回のプレゼン大会で、その問いにつながる思春期の入り口(小学高学年)の具体的な事例をご紹介します。
1)1000年の伝統を担うという誇り
日本舞踊について発表した小5の生徒。
低学年であれば、稽古の大変さや踊る楽しさを語るでしょう。
しかし彼女はこう述べました。
“I am proud to be one of the people who carry on a Japanese dance tradition that has continued for over one thousand years.”
自分の習い事を「個人的な楽しみ」としてではなく、
歴史の継承者として位置づけている。
ここに、個から社会への視線があります。
2) 故郷愛という問い
函館旅行について発表した小5の生徒。
彼女は観光の楽しさだけで終わりませんでした。
特産物を紹介する人々の熱意、美しい景色を誇らしげに語る姿に注目し、こう問いかけました。
“When people in Hakodate talked about their food and beautiful views, I could feel how much they love their hometown.
We live in Tokyo, but do we love our city in the same way?”
旅の思い出が、
「私たちはどう生きているのか」という問いへと昇華しています。
3) 利他の循環
ヘアードネーションを経験した小6の生徒は、こう語りました。
“When I imagine that my hair will become a wig and someone who lost their hair because of illness will wear it and go outside with confidence, I feel that their confidence comes back to me as my own.”
(私の髪の毛がやがて、かつらになり、病気で髪をなくした方がそのかつらをかぶり、外に出ていく自信につながった様子を想像した時、その自信は、髪を寄付した私の自信にかえってきた。)
これは利他の精神の本質を突いた表現です。
自己犠牲ではなく、
幸福の循環としての他者貢献への気づきがあります。
4)好きから社会へ ― 日本アニメという文化
日本のアニメについて発表した小6の生徒。
彼女は、ただ「好き」と語るだけではありませんでした。
“I love Japanese anime, especially JoJo’s Bizarre Adventure, Attack on Titan, and Demon Slayer.
They are not only interesting, but also teach us how to overcome difficulties in life and show the importance of family and friendship.
I can enjoy them with my parents and grandparents.
Compared to American animations like SpongeBob or Minions, Japanese anime has deeper messages.
Today, Japanese anime is even used in universities overseas to study ethics and Japanese culture.
I believe Japanese anime is a culture that Japan can proudly share with the world.”
ここには、
個人的な「好き」
内容の分析
他文化との比較
世界における位置づけ
がすべて含まれています。
「好き」が「文化理解」へと発展しているのです。
5)個人的関心から人類規模の課題へ
さらに、宇宙とサッカーが大好きな小6の男子は、宇宙博物館での体験から次のように語りました。
「僕は地球人であると同時に宇宙人でもあると感じました。惑星にも寿命があることを知り、地球の寿命を人間の活動で縮めているかもしれないと考えました。将来は、その寿命をできるだけ守る仕事をしたいです。」
個人的な興味が、人類規模の課題へとつながっています。
6)個人的体験から社会問題へ ― 労働と生き方への問い
小6の男子生徒は、父親のある出来事をきっかけに考え始めました。
仕事で帰宅が遅くなり、終電を逃し、2時間かけて徒歩で帰宅した父の姿に衝撃を受けたのです。
そこから彼は、日本の労働環境について調べました。
そして、「過労死」という現象が日本に特徴的であることを知ります。
彼は英語でこう語りました。
“One day, my father came home very late because he missed the last train and had to walk for two hours. I was shocked.
I started to wonder why people have to work so long in Japan.
When I researched, I learned about karoshi, or death from overwork.
I thought about moving to countries like Australia or Canada, where people seem to have a better work-life balance.
But I also think we need to change the way people work in Japan.”
さらに彼は、United Nations の掲げるSDGsの目標にも触れました。
「すべての人に健康と福祉を」
「働きがいも経済成長も」
個人的な体験が、社会問題への問いへと発展し、
最終的に「自分はどう考えるか」という立場の表明に至っています。
低学年であれば、父親の出来事は単なるエピソードで終わるかもしれません。
しかし思春期の入り口に立つ子どもは、それを自分事として捉え、社会と結びつけるのです。
そして、最後にこう会場に問いかけました。
「仕事も確かに大事です。でも一番大事なのは命じゃないですか?」
あまりに自明でありながら、なぜか、大人がいつのまにか見失ってしまう問いです。
主体を明確にする言語で語る意味
これらの発表に共通しているのは、
Iで語る
自分の立場を明確にする
感情と考察を結びつける
という点です。
英語という言語は、主語を曖昧にできません。
“I think.”
“I believe.”
“I am proud.”
主体を立てて語る構造そのものが、
思春期の自己確立を後押しします。
ルソーとAI時代
AIが情報を瞬時に生成する時代。
必要なのは、情報量ではなく、
自分はどう感じるのか
それは他者や社会とどうつながるのか
を言語化する力です。
幼少期の「野人の感性」が、
思春期の入り口で社会的視野へと発展する。
そしてそれを、主体を明確にする英語で発する。
これこそが、自己確立期における英語教育の意義です。
AIが答えを提示する時代だからこそ、人間は問いを持ち続けなければなりません。
思春期の子どもたちは、その最も純粋な形で、すでにその営みを始めているのです。
この小さな教室から生まれている言葉が、やがて社会を変えていく力になると、私は確信しています。
Global kids英語会代表
(株)ダイバース・キッズ代表取締役
豊田朋子
Global kids英語会
http://globalkids-eigokai.com/
Global youth英語会
http://youth.globalkids-eigokai.com/
朝日新聞系広告web豊田コラム
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