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豊田朋子

子どもたちの「自己発信力」を引き出す英語スクールの経営者

豊田朋子(とよだともこ) / 英語講師

株式会社ダイバース・キッズ / Global kids英語会

コラム

東京都知事選を中高生たちが英語で模擬選挙。その結果は?

2024年7月2日

テーマ:今週の授業(Global youth)

コラムカテゴリ:スクール・習い事

精神的幸福度の低さは政治リテラシーの低さと関連する?


 当会、中高生クラスでは、今週、7月7日の都知事選に向けて、英語での模擬選挙(mock election)をします。
 実は、中高クラスの今年の基調テーマ、日本の子どもの「幸福のパラドックス」に関連しています。
 
 これは、ユニセフの子どもの幸福度調査で、民主的な先進国の38か国中、日本子どもは、身体的幸福は1位ですが、精神的幸福度が37位とほぼ最下位との結果が出た点について、様々な角度から、その理由を英語で解明していこうというプロジェクトです。
 詳しくは、下記コラム参照ください。↓
https://mbp-japan.com/tokyo/globalkids/column/5160680/
 
 よって、今回の模擬選挙もその一環です。
 日本の子どもや若者が精神的幸福が低い理由は様々あると思いますが、その一つは、政治や社会に対する無関心、それ以前の「無力感」ではないかとの意見が以前からありました。

新聞減少で消え去った昭和の家庭の風景


 私の子供時代、昭和の後半頃、郵便受けから新聞を取りに行くのが、子どものちょっとしたお手伝いでした。
 私はこのお手伝いが大好きでした。
 朝、新聞を父に渡すと、父はそれを居間の机にバンと広げるや否や、あれこれと政治や社会問題について論評し始めます。

 母も、朝食の準備をしながら父の意見に応戦していました。
 両親が新聞を通して対話するのを、私は耳をそばだてて聞いていたものです。

 父親がいかにもいばっているのも昭和風ですが(笑)、私は、こうして、世の中の動き、ダイナミズム、そして大人たちがそれをどう捉えているかを、子どもなりに伺い知ることができました。

 思えば、それが私自身の社会的関心への原点でした。

 ですが、紙の新聞の部数は激減し、ネットニュースを、スマホでそれぞれ関心あるイシューしか見なくなった今、こうした家庭の風景も消えつつあるのでしょう。

 では、一体子どもたちは、どこで政治、社会問題について教えてもらえるのでしょう。
学校や塾でしょうか?
 否!
 残念ながら、日本の教育界は、終戦以降、思想的な分断(*特に憲法9条と自衛隊について)が起きました。
 
 結果、教育現場において、逆に政治色を極力排除する状態が今でも続いています。
 教師は思い切って政治や社会問題について生徒に教えることや、議論させることはできません。

 よって、「良い国作ろう」などと、鎌倉幕府成立の年代を1192(いいくに)と覚えるなど、知識をインプットさせること、AIに早晩代替される授業しか事実上できません。
 (その知識も、皮肉にもAI技術によって覆えされ、昔歴史の授業で必死で覚えた事項のいくつかが、今の教科書から消えています。)

 にもかかわらず、現在、選挙権が18歳に引き下げられています。
 当会の英語プレゼンでは、都立高の2年の女子が、「The importance of the right to vote.」(投票権の重要性について)という課題で以下のような内容をスピーチしました。


「選挙権を得るまで、後2年しかないけれど、私には、政治というものに実感が湧かない。
都立高では、教師の数も少なく、先生たちはいつも疲弊している。
学校の校舎も環境も昔のままで、今のIT時代に対応しているとはとても思えない。
大学も国立でさえ学費が非常に高く、多くの家庭が奨学金をあてにしている。
2年後に、教育のことを本当に考えてくれる政治家に一票を投じたい。
でも、それを見極める力がこれから私に備わるかは、疑問である。」


 この訴えは、今の多くの高校生の政治に関するイメージに共通したものでしょう。

 このように、日本は、実は、教育において政治的・社会的に過度に中立を保っている世界的にも珍しい国です。

 教師としてはその方が楽だという方も多いでしょう。
 しかし、その代償は決して小さくはないと思います。

 日本の若者の投票率は世界的にも極めて低く、これは、政治に関心があるなし以前に、基本的な政治的リテラシーを育む場がないことの現れです。

日本でありえない授業、ディベイトでファシストのグループになって見えてきたこと


 では、海外では、政治、社会問題についてどんな教育をしているのか?
我が子が留学していたカナダの公立高校での授業の課題事例を紹介します。
 模擬選挙はもちろん、下記のようなユニークな授業も多々あり、それらは成績にしかと反映されます。

<理科の授業 プレゼン>  
各政党のホームページを閲覧、熟読し、気候変動対策において、科学的に政治的に、最も有効な政策を打ち出しているのはどこの政党かをリサーチし選ぶ。その理由も含め、各自授業でプレゼンをする。


<社会の授業 ディベイト>
 トルドー政権が打ち出している移民政策について、「社会主義者」「リベラル」「保守」「ファシスト(国粋主義者)」の4つのグループに分かれ、その妥当性についてディベイトをする。


 上記ディベイトのグループ分けは、くじ引きで行われます。
 娘は、本人的には「政治的にはなんとなくリベラルで、留学生にも寛容な、トルドーの移民政策は素晴らしい。」という立場でしたが、ディベイトでは、「ファシスト」のグループになりました。
 結果、「なぜ、国粋主義の人たちが移民の受け入れを頑なに反対しているのかが見えてきた。」と言います。

 政治リテラシーを学びつつ、同時に決して「分断」でなく、意見の相違を超えて、互いが見いだせる「共通項」をさぐる教育方針とその手法が見えてきて、親としても教育関係者としても参考になりました。

 さて、当会の模擬選挙は、時間の関係上、略式で開催。
 小池百合子さん、蓮舫さん、石丸伸二さんの背景と政策を英語と日本語で理解し、この3人から選んでもらいます。

 選択によってグループに分かれ、英語で議論(日本使用可能)。
 その候補者を選んだ理由を三点、英語でグループ発表いただきます。

 早速、昨日、月曜クラスで実施しましたが、予想以上に明確な理由を述べていることに驚きました。
 
 私は、幸福感は、例え困難や苦労があっても、「生き生きとしていること」から生まれると考えます。

 人間が社会的生き物である以上、「自分は、この社会に生き、参加し、そして、この社会を変えていくことできる。」
 
 という実感がなければ、生き生きとした感慨は持てません。
 いくら物質的に恵まれても、精神的な幸福感は得られないと思うのです。

 なので私は、「英語は世界に自己発信する道具、世界をより良くする道具の一つだ。」という信念の元、この英語スクールを運営している次第です。
 
 当会の都知事選模擬選挙結果、お楽しみに!

 
 

 

この記事を書いたプロ

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