2023年施行|共有物に関する民法改正のポイント
不動産を共有名義で購入した時に考えられるリスクやその回避方法を紹介します。
共有名義の不動産とは
不動産を購入したいが自分の資金が足りない場合、夫婦や両親とお金を出し合って購入することがあります。
この場合、出した金額の割合によって不動産を所有します。これを持分割合と言います。
このようにして取得した不動産は、お金を出した人たちの共有名義の不動産であり、それぞれが共有持分を持っています。
例えば5,000万円の物件を、Aさん3,000万円、BさんとCさんがそれぞれ1,000万円ずつ出して購入したとします。
この時、Aさんの持分は5分の3、Bさん5分の1、Cさん5分の1となります。
その後、共有者がそれぞれ自分の持分について登記を行い、費用もそれぞれ負担します。不動産を共有名義にすると、その後の維持管理費用や税金についても持分の割合に応じて負担することになります。
共有名義のルール
共有名義の不動産には、いろいろなルールがあります。
例えば不動産を売却する時は、共有者全員の合意が必要になります。つまり、一人でも反対すれば売却はできません。売りたい共有者と、売りたくない共有者の間で意見が対立するリスクがあります。
もし共有者の誰かが死亡すれば、その人の持分は相続の対象となります。法律に基づき、相続人がその持分をさらに分割して受け取ります。
夫婦が共有名義で家を購入し、その後離婚をした時、どちらかが家を所有して住み続ける場合は、一方が相手の持分を買い取ることになります。
その際、もし夫婦共に住宅ローンを組んでいれば、一方が相手の住宅ローンの残額を引き継がねばなりません。
しかし、現実は、1人で2人分の住宅ローン借入額を支払うことができない場合が多く、家を持ち続けることは不可能になります。大半の場合は家を売却し、当初の持分の割合で売上代金を分けることになります。
離婚をしなくても、もし夫婦それぞれが住宅ローンを組んでいるが、どちらかが仕事を辞めて収入が無くなると、もう一人が相手の分の住宅ローンを支払うことになります。これが共有者への贈与とみなされて、贈与税の対象となる可能性があります。
共有名義の不動産に潜むリスクとは
不動産を共有名義にすると、その後の管理や運用面において共有者全員、もしくは過半数の同意をとらなければいけないためトラブルがよく発生します。
実際にある例では、代々受け継いだ不動産の共有者の人数が多くなり、建て替えや売却といった「変更行為」の相談をしたくても連絡先がわからないために、全員の合意を取るのが困難といった問題が出てくることがあります。
また一人でも反対すればこれらの変更行為はできません。
賃貸借契約の締結や解除は、共有者の過半数が同意すれば実施できますが、共有者が2人の時は、両者の同意が必要になります。
このように共有名義で相続した不動産は、共有者の人数が増えれば増えるほど、運用や管理・維持が難しくなり、そのまま放置されてしまうリスクが高くなります。
共有名義のリスクを回避するには
相続する遺産は、法律に基づき公平に分割されるべきとはいえ、代々引き継がれていくうちに共有者が増えて利害関係が複雑になりすぎてしまうと、運用ができずに税金だけを支払うだけの「お荷物」になってしまいます。
このような事態を避けるには、相続をする前に専門家に遺産分割方法を相談しておく方がよいと言えます。
相続人たちの間でトラブルになるのを避けるために、親が生きている場合にできる回避策と、亡くなってからできる回避策について説明します。
親が生きている場合のリスク回避策
親が生きている間に不動産を受け継ぐには、「生前贈与」という方法があります。
親が生きている間に遺産分けをすることで、共有者間のトラブルを防ぐ方法です。
親から子どもに財産が移るため贈与税が発生しますが、相続税よりも安く済めば節税対策になります。
生前贈与をするには、相続する対象の不動産の価値や贈与税と相続税の比較など、司法書士、税理士、弁護士のアドバイスを受けながら実行するのがベストです。
親が死亡後に相続する場合のリスク回避策
遺言がない時のトラブル回避で最も重要なポイントは、相続の対象となった不動産は最初から共有状態にしないことです。
例えば親の住んでいた家を複数の相続人で相続する時は、この不動産を売却し、その代金を相続人で分け合う「換価分割」をすればトラブルになることが少なくなります。
換価分割をする手順は、まず実際に売却手続きをする人、一人を相続人として選びます。そして遺産分割協議を行い、売却代金の分け方やその期限を決定しておきます。
相続する不動産を一旦一人の相続人の名義にして売却手続きを進めます。売却が済んだら、所有権移転登記を申請し、売却代金を相続人同士で分配します。
この他に、相続した不動産が土地であれば、土地の評価額を持分割合で分けて相続し、相続人それぞれが相続登記をする方法もあります。
相続人が多いと、互いに会ったこともないような親族と連絡をとり協議する必要も時には出てきます。住所を調べるところから始めることもあり、とても手間がかかります。
そして「不動産を売却したい」といった連絡についても、伝え方や協力の依頼の仕方について迷うことも多くなります。
このような時は、弁護士に依頼して間に入ってもらい手続きを進めることをおすすめします。
共有持分のリスクについては、下記の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
共有持分のリスクと対策~共有状態の解消方法も解説~