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  1. 不動産が「時効」により、他人のものになってしまう危険性とは
松原昌洙

共有名義不動産の売買、仲介に強い不動産会社社長

松原昌洙(まつばらまさあき) / 相続アドバイザー

株式会社中央プロパティー

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コラム

不動産が「時効」により、他人のものになってしまう危険性とは

2018年7月19日

テーマ:よくある共有不動産トラブル

コラムカテゴリ:住宅・建物

不動産には「時効取得」という制度があります。いったいどういう制度なのでしょう。

時効取得

不動産の時効取得とは

Aさんの土地にBさんが家を建て、その土地を自分の土地としてごく普通に生活していたとします。Bさんはその土地がAさんのものであることを知らずにそうしていたのです。Aさんも何の措置も講じませんでした。
さて、そうした状態が10年経過すると「時効」が完成し、Bさんが土地の所有権を取得します。
単純化した例ですが、これが不動産の「時効取得」の一例です。

不動産の時効取得とは、土地や建物を長期間(10年間、あるいは20年間)占有している人が、その所有権を取得するという制度です。と言って、賃貸アパートの一室に10年、あるいは20年住んでいたから、その一室の所有者になれるということではありません。

不動産の時効取得について、民法第162条は次のように規定しています。

1.二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

不動産の時効取得について(20年)


2.十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開 始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

不動産の時効取得について(10年)


民法が何を示しているか

法律の用語は難しいですね。もう少し分かりやすい言葉で、民法第162条の条文を解釈してみましょう。まず第1項です。

1.二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

まず、「所有の意思をもって」ですが、これは、AさんとBさんの例で言えば、Bさんが、Aさんの土地を自分の土地だとおもっていた、ということです。賃貸アパートの一室を借りている場合とはこの点が大きく違います。賃貸アパートの一室を「自分のもの」とは言えません。

次の、「平穏に、かつ、公然と」の「平穏に」とは、BさんがAさんを暴力で威嚇したり、強迫したりすることなくそうしていた、ということです。「公然に」とは、BさんがことさらAさんに隠れてAさんの土地に家を建て住んでいたわけではない、ということです。

続く「他人の物を占有した者」の「他人」はAさんのこと、「占有した者」とはBさんのことです。「占有」とは、BさんがAさんの土地を使っていたということです。

そして、そうした状態が20年間経過すると、「時効」、つまり、時の効力によって、Aさんの土地がBさんの所有になるというわけです。続いて、第2項です。

2.十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する

この「所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は」については、第1項と同じですね。
さて、「その占有の開始の時」ですが、これは、BさんがAさんの土地に家を建て住み始めたとき、のことです。
次の「善意であり」の「善意」は、「知らずに」と解釈して良いでしょう。Bさんは、その土地がAさんの土地であることを「知らずに」家を建て住み始めたということです。続く「過失がなかった」とは、Bさんには特別な落ち度がなかった、ということです。

そして、そもそもの始めに「Aさんの土地ということを知らなかった」ということがあり、その後の経過が上のような状態で10年という時が過ぎたなら、Aさんの土地はBさんの所有になるというわけです。

どうして民法にはこうした規定があるのでしょう。その理由として、よく、「永続した事実状態の尊重」や「立証困難の救済」ということがあげられますが、もう一つ「権利の上に眠る者は保護に値しない」という法格言もあげられます。つまり、権利を主張しない者は保護に値しないという考え方です。Aさん、Bさんの例で言えば、Aさんが自身の権利を主張しなかった、ということです。

時効取得はレアなケースではない

不動産の時効取得は珍しいケースかと言えば、そうではありません。

たとえば、長い間、隣地との境界線に沿って塀を建て問題なく住んでいたところ、最近になって地中から境界杭が出て、自分の家の塀が隣地の土地にはみ出していたことが分かったというケースがあります。
この場合、隣地にはみ出していた経緯が、これまでお話した民法第162条の要件を満たしているのであれば、時効取得を主張できる可能性があります。

また、親から土地を相続し、法定相続人は自分1人とばかりおもい、その土地に家を建て住んでいたところ、10数年経って、実はもう1人、法定相続人がいたことが分かったというケースもあります。

時効取得によって、自分の土地が他人のものになってしまう危険性は、「権利の上に眠る者は保護に値しない」の格言があてはまるケースにあります。とくに不動産の相続にあたっては、名義人、権利関係を明確にしておくことが重要です。

この記事を書いたプロ

松原昌洙

共有名義不動産の売買、仲介に強い不動産会社社長

松原昌洙(株式会社中央プロパティー)

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