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松原昌洙

共有名義不動産の売買、仲介に強い不動産会社社長

松原昌洙(まつばらまさあき) / 宅地建物取引士

株式会社中央プロパティー

コラム

共有不動産について、共有分割請求訴訟が行われる場合とは?

2018年7月15日 公開 / 2023年5月19日更新

テーマ:よくある共有不動産トラブル

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 共有不動産

共有分割請求訴訟が行われるようなトラブル事例と、それがどのような訴訟なのかを解説します。

共有不動産について、共有分割請求訴訟が行われる場合とは?

共有持分を勝手に第三者に売却されたトラブル事例

Aさん兄弟(Aさん、Bさん)は、それぞれ独立し家庭を持っています。お父さんが亡くなり、実家は遺言通り、一緒に住んでいた長男のAさんが相続しました。一方、別荘については2人の共有という形にしておきました。別荘を使う場合は、それぞれの予定を按配すればいいと考えたからです。

ところが数年後、Bさん所有の別荘全体の共有持分を、Bさんが第三者に売却したことが判明しました。Aさんに断りなく売却したのです。理由はBさんが経営する会社の資金繰りのためでした。別荘は、Aさんと第三者との共有という状態になったわけです。

Aさんはまず、Bさんが売却した持分を買い戻そうとしました。しかし、相手は応じません。そのときの相手の印象はAさんにとって非常に嫌なものでした。Aさんは別荘に行く気にもなれず、以後、シーズンの大半は第三者が使用している様子です。

そこでAさんは共有状態を解消するため別荘の売却を提案しましたが、相手はこれにも応じません。そのうちに相手側から、Bさんを通して、別荘についてAさんが所有している持分を買い取りたいと申し込んできました。この話に乗ればAさんは共有状態から解放されるわけですが、相手が提示した買取価格は法外に安いものでした。Aさんは承諾せず度々、協議を重ねましたが、価格について相手は頑として譲りません。

しかし、Aさんとしては、いつまでも共有状態を続けるのは嫌です。そのため共有分割請求訴訟を行うことにしました。Aさんは、この訴訟で裁判所が別荘を競売にするよう決定した場合、売却価格が市場価格にくらべ安くなることは知っていました。しかし、裁判所の決定という法的に確かな仕方で共有状態を解消することを望んだのです。

第三者との持分解消

トラブルを整理してみるとAさんの行動はどう評価できるか

ここでAさん兄弟の共有不動産(別荘)について起こったトラブルを整理してみると次のようになります。

(1)Aさんの弟のBさんが自分の持分を第三者に売却し、別荘は第三者との共有になった
(2)Aさんが、Bさんの持分を買い戻そうとしたが第三者は応じなかった
(3)共有解消のため別荘全体の売却を提案したが、第三者はこれにも応じなかった
(4)Aさんの持分の買い取りを申し込まれたが価格が低いためAさんが応じなかった
(5)協議を重ねたがいつまでも共有状態が解消されないため共有分割請求訴訟を起こした

Aさんは共有解消のため手を尽くしたと言えます。一つだけ抜け落ちているのは、「自分の持分を適正な価格で購入してくれる人を探し、自分の持分を売却する」ということです。しかし、こういった状態にある不動産について、一般の人が自分の持分のみを購入する人を独力で探すのは困難でしょう。それに、いつまでも続く共有状態はAさんにとって大きなストレスになっています。

共有分割請求訴訟とは

共有分割請求訴訟は裁判所を通じて共有状態を解消するための訴訟です。ただ「訴訟」とは言っても、通常の訴訟のように裁判によって勝ち負けを決めるというより、裁判所の合理的な裁定を仰ぐという面が強いのが特色です。

そのため、まず、協議による和解が求められますが、和解できない場合、次のような裁定になります。

・土地のように分割できるものであれば土地を分割するという「現物分割」
・共有者の誰かが然るべき金額を支払い他の共有者の持分を買い取る「代償分割」
・不動産を競売し売却代金を持分に応じて分割する「競売」

Aさんの事例の場合、和解が成立しなければ「代償分割」か「競売」ということになるでしょう。その決定は裁判官の裁量に任せられます。Aさんが「代償分割」を求めても「競売」になる可能性もあり、その逆になる可能性もありえます。これも共有分割請求訴訟の特徴の一つです。裁判官の裁量の範囲が非常に広いのです。

共有物分割請求が認められない場合

しかし、共有分割請求訴訟は、「権利の濫用」として認められないケースもあります。たとえば次のようなケースです。

Cさん夫婦は現在、別居中です。夫のCさんに愛人ができ、家を出て行ったからです。Cさんは会社を経営しており、収入もあります。ところで、Cさん夫婦の家は、土地と建物が共有になっています。そして、現在はCさんの奥さんが子供たちと一緒に住んでいます。

こうした状態で、Cさんが共有物分割請求を起こしたとしましょう。もし家が「競売」ということになれば、奥さんと子供たちは住む場所を失うことになります。この場合、裁判所は、Cさんが家庭を捨てて行ったこと、Cさんには十分な収入があること、競売になった場合、奥さんや子供たちが住む場所がなくなることなどを理由に、Cさんの請求を権利の濫用とし、共有物分割請求を棄却することになる可能性が高いと考えられます。民法には「権利の濫用は、これを許さない」という条項があるからです。

共有物分割請求については、下記記事でもわかりやすく解説しています。
共有物分割請求とは?

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