正しい共有持分の範囲と共有持分の決め方!
今回は共有名義の持分交換について、事例をもとに解説します。持分交換は、不動産の共有解消の一つの方法です。
持分交換の例・その1(土地のみ)
Aさん、B子さん兄妹が二つの土地を相続したとしましょう。一つはX市の郊外に、もう一つはY市の郊外にあります。二つの土地の価格は、ほぼ同じです。
相続のとき兄のAさんがX市の土地を、妹のB子さんがY市の土地を相続する案もありましたが、B子さんが、不動産のことはよく分からないので二つとも共有のほうがいい、と言うので、兄妹で共有する形にしてありました。
ところが、相続後5年経って、兄のAさんからB子さんに相談がありました。いつまでも土地を遊ばせてもおけないし、やはり共有名義は後々、問題になる、そこで、Aさんが持っているY市にある土地の持分1/2と、B子さんが持っているX市にある土地の持分1/2を交換したいと言うのです。つまり、
X市の土地=Aさん1/2・B子さん1/2、Y市の土地=Aさん1/2・B子さん1/2
という状態から、
X市の土地=Aさん1/2・Aさん1/2(持分交換による)→Aさん1人が所有
Y市の土地=B子さん1/2・B子さん1/2(持分交換による)→B子さん1人が所有
という形にしたいというわけです。
共有名義不動産の「持分交換」の一例です。B子さんは兄の申し出を承諾しました。兄のAさんも妹のB子さんもいますぐ土地をどうしようという気はなく、そのまま持ち続けるつもりですが、気になるのは持分を交換した場合の税金です。
固定資産の交換特例
この例では、AさんとB子さんにお金のやりとりはありません。物々交換のイメージですが、こうした場合も原則として譲渡所得税の課税対象になります。
しかし、次の要件を満たしている場合には課税対象にはなりません。「固定資産の交換特例」が適用されるからです。その要件は次のとおりです。
①譲渡する不動産、取得する不動産が同じ種類の不動産であること。
※「土地と土地」または「建物と建物」のように、同じ種類の不動産の交換ということです。
Aさん兄妹の例では、土地の持分を交換したわけですからこの要件をクリアしています。
②譲渡する不動産、取得する不動産をそれぞれの所有者が1年以上所有していたこと。
※Aさん兄妹の例では、相続後5年経ってからの交換ですから要件をクリアしています。
③交換のために取得した不動産ではないこと
※Aさん兄妹の土地は相続したものですから、この要件もクリアしています。
④双方の不動産の時価の差額が20%以内であること。
※Aさん兄妹の例で言えば、X市の土地とY市の土地の時価がほぼ同じですから、この要件もクリアします。
⑤取得する不動産を譲渡する不動産と同一の用途に供すること。
※AさんもB子さんも土地をそのまま持ち続けるつもりですからこの要件もクリアしています。
Aさん兄弟の例では、「固定資産の交換特例」が適用されることになります。
持分交換の事例・その2(土地+建物)
もちろん共有名義不動産の持分交換は、土地のみではなく、土地と建物、あるいはマンションなど収益不動産の持分交換というケースもあります。Cさん、Dさん兄弟は、親から2棟のアパートを相続しました。そして、それぞれ共有持分1/2ずつとして相続登記しました。
しかし相続後、数年経って、兄のCさんから弟のDさんに、会社の資金繰りのためアパートを売却したいと相談がありました。弟のDさんとしては、アパート経営を続けたいと考えています。
この場合、兄のCさんが2つのアパートに有している自分の持分のみを売却することも可能ですが、第三者に共有持分を売却するのは難しいうえ、購入希望者が現れても買い叩かれるおそれがあります。そこで全部を売却し、売却代金を兄弟で分けたほうが得と考えたようです。
しかし、Dさんとしてはアパート経営を続けたいわけですから、このケースではそれぞれの持分を交換することができれば最善の解決となります。
アパート1=Cさん1/2・Dさん1/2→Cさん1/2・Cさん1/2(持分交換による)
アパート2=Cさん1/2、Dさん1/2→Dさん1/2・Dさん1/2(持分交換による)
という形にし、その後、兄のCさんは自分の単独名義になったアパートを売却し、Dさんは自分の単独名義になったアパートを経営し続けることにするわけです。
持分交換の注意点
ところで、持分交換については「④双方の不動産の時価の差額が20%以内であること」に対する注意が必要です。それには土地の適正な時価評価が重要になります。
Aさん兄妹の事例で、たとえばX市の土地の時価が2000万円、Y市の土地の時価が2100円とした場合、この特例の範囲内ですが、この数字(時価評価)が説得力を持つ必要があります。誰に対する説得力かと言えば税務署に対してです。税務署の調査が入り、X市の土地とY市の土地の時価評価に差があり、それが20%を超えることが判明すれば特例は認められません。
持分の交換については、下記記事でも解説しています。
共有持分の交換について