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松原昌洙

共有名義不動産の売買、仲介に強い不動産会社社長

松原昌洙(まつばらまさあき) / 宅地建物取引士

株式会社中央プロパティー

コラム

共有名義の収益は分配することが原則!

2018年7月27日 公開 / 2023年5月19日更新

テーマ:共有名義不動産について知っておくべきこと

コラムカテゴリ:住宅・建物

賃貸アパートなど収益不動産を共有している場合のトラブルについて考えてみましょう。

共有名義の収益は分配することが原則!

賃貸料を払ってくれない!

B子さんは、兄のAさんと賃貸アパートを1棟、相続しました。名義は二人の共有名義とし、持分はそれぞれ1/2です。ただ、アパート経営については兄のAさんに一任していました。「経営と管理は私に任せなさい」という兄の言葉に従ったのです。

しかし、兄のAさんはアパート経営の経験はなく、実際の運営は管理会社に任せています。何度か賃料収入について兄のAさんに問い質しましたが、「管理会社に任せているといっても、委託費もあるし、入居者の募集とか、細かな修繕とかいろいろ大変なんだよ」と言うだけで、まともに取り合ってはくれません。

B子さんがご主人に相談すると「賃料収入について、どのくらいの割合で分配するかは決めてなかったの?」と言います。確かに、アパートの経営と管理は兄のAさんが行うことまでは話し合いましたが、賃料収入の分配についてはなにも決めていませんでした。

しかし、アパートの持分はそれぞれ1/2なので、B子さんはなんだか釈然としません。

収益は持分に合わせて分配するのが原則

共有名義の不動産から上がる収益については、共有者それぞれの持分の割合に応じて分配するのが原則です。B子さん兄妹の場合、仮に部屋数10室、家賃5万円として月に50万円の賃貸収入があるとすれば、兄のAさん25万円、妹のB子さん25万円ということになります。

収益は持分に合わせて分配するのが原則

B子さんの事例では、B子さんのご主人が言うように家賃収入の分配について兄のAさんと具体的な取り決めをしていなかったことが問題です。

もちろんこの場合、管理会社への委託費、また、アパートの補修費など必要経費についても共有者それぞれが負担することになります。そうした点についても、具体的に話を詰めておく必要があったと言えるでしょう。

しかし、兄のAさんが、共有名義のアパートから入る賃貸収入を独占しているのは明らかに不法行為です。
民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」としています。

B子さん兄妹の事例に合わせれば、兄のAさんは「賃料収入の分配を受ける」というB子さんの「権利又は法律上保護される利益権利」を「侵害」している、ということになります。
そして「これによって生じた損害」、つまりB子さんに分配されるべき賃料相当額を「賠償する責任を負う」ということになります。

分配されていない場合、返還請求が可能

また、民法703条は「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」としています。

B子さん兄妹の事例に合わせて言い換えれば、「正当な理由もないのに、B子さんに分配されるべき賃貸収入で利益を受けた兄のAさんは、そのためにB子さんに損失を及ぼしているので、B子さんに分配されるべき賃料収入相当の額を返還しなければならない」ということになります。

「正当な理由のない利得」のことを法律では「不当利得」と言います。そして、この不当利得を返還するよう請求する権利が「不当利得返還請求権」です。

B子さんは、兄のAさんに不当利得の返還を請求する権利があるわけです。

収益不動産を共有する際の問題点

収益不動産の共有にはさまざまなトラブル要因がひそんでいます。

収益不動産はお金と直結しているからです。B子さん兄妹の事例のように、家賃がもらえないのもその一つですが、そのほかに、家賃の分配割合が納得いかない、経費の分担について意見が一致しない等々、収益不動産の共有には、お金がらみのトラブルが発生する可能性が非常に高いのです。

よくあるトラブルの一つに、共有している収益不動産の一室に、共有者の一人が住んでいるケースがあります。その場合、その共有者の家賃はどうするのか。賃貸収入の分配と相殺にするのかどうか、という問題が起こります。

あるいは、共有者の一人が他の共有者に断りなく改修を施し、その工事費の分担金の請求が送られた、また、工事費の分担を要求されたが実際に工事したのかどうか分からないなど、トラブルの要因はいくらでもあるのです。

収益不動産を共有する際は、家賃の分配などについて協議し、その結果を書面として残しておくなど、トラブルが発生しないよう十分配慮する必要があります。

しかし、それでもなおトラブルが発生する可能性が高く、事実、その例は少なくありません。
このように収益不動産の共有は難しく、トラブルの解消にあたる専門家の多くが、共有をおすすすめしないのには、多くの事例からくる理由があるのです。

共有名義不動産の税金については、下記の記事でも詳しく解説しています。
ぜひご覧ください。
共有名義は危険!?共有不動産の税金とトラブルを解説

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共有名義不動産の売買、仲介に強い不動産会社社長

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