共有不動産について、共有分割請求訴訟が行われる場合とは?
相続が「争続」にならないためには、遺産分割の基本を知っておく必要があります。今回は、遺産分割の基本や相続放棄について詳しく解説します。
遺産分割について
遺産分割には「指定分割」と「法定分割」があります。
「指定分割」とは、遺言書の指定どおり遺産を分割することを言います。
たとえば、一人暮らしの父親が亡くなり、相続人は長男のAさん、次男のBさん、末っ子のCさん兄弟のみとします。遺言書に「自分が住んでいた家と土地は長男のAに、次男のBには郊外の土地を、末っ子のCには預貯金を取得させる」という指定があった場合、遺言書どおり長男のAさんは家と土地を、次男のBさんは郊外の土地を、末っ子のCさんは預貯金を取得するということです。
ただし、遺言書に「遺産はすべて長男のAに遺す」と指定してあっても、民法では、一定の範囲の相続人に遺留分、つまり「最低限これだけの遺産を貰うことができる権利」を定めていますから、弟のBさんとCさんは、遺留分の限度までは長男のAさんに遺産の返還を請求することができます。
一方、「法定分割」とは、民法で定めている遺産の分け方によって、遺産を分割することを言います。たとえばAさん兄弟に遺言書が残されていなかった場合、民法では、Aさん、Bさん、Cさんそれぞれに遺産の1/3を取得する権利があるとしています。そこで遺産をどのように1/3ずつにするか、Aさん、Bさん、Cさんで遺産分割協議を行うことになります。
遺産分割協議の進め方
遺産分割協議では、原則として民法で定められているルールに従って、相続人がそれぞれの取り分を決めることになります。ただ、遺産分割協議は、相続人が全員参加して進める必要があります。相続人のうち誰かが参加しないまま協議を進めても、無効になってしまう可能性があるからです。
具体的な進め方としては、まず、相続財産目録を作ることをおすすめします。現金、預貯金、不動産、動産、有価証券、また、負債、未払金などを一覧にしておくと、どのような遺産があるのかが分かり、分割協議をスムーズに進めるうえで有効です。
相続人同士で話し合いがまとまったら、協議の内容を文書にまとめると良いでしょう。相続人全員の同意を得た上で遺産分割を行った証明ですから、後々トラブルが発生した際、役立ちます。
相続の3つの選択肢「単純承認」「限定承認」「相続放棄」とは
ところで、相続が発生した場合の選択肢は3つあります。
一般的なのは被相続人(亡くなった人)が残した財産のすべてを法定相続人の間で分けるケースです。この場合の財産とは、預貯金、不動産などのプラスの財産だけではなく、負債、未払金などマイナスの財産も含みます。これを「①単純承認」と言います。
これに対し、「②限定承認」という選択肢もあります。プラスの財産とマイナスの財産を相続するものの、負債、未払金などの債務に対する責任はプラスの財産を限度とするということです。
遺産については、相続後、被相続人に多額の借金があったことが見つかり、プラスの財産よりマイナスの財産のほうが多いということもあります。
こうした際、限定承認を選択していれば、相続したプラスの財産より多いマイナスの財産の部分は返済しなくてもいいのです。
マイナスの財産よりプラスの財産のほうが多かったとしても、プラス分の財産はそのまま引き継ぐことができます。しかし、この限定承認には相続人全員の同意が必要ですし、たとえば相続した土地と家について「みなし譲渡所得税」がかかるというデメリットがあり、限定承認を選択するケースは少ないのが現状です。
さて、3つめの選択肢が「③相続放棄」です。プラスの財産もマイナスの財産も相続しないということです。一切を相続しないということですから、他の相続人と遺産についてトラブルが生じることはありません。
相続放棄の流れ・放棄理由について
相続放棄の流れは、まず、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出します。その後、家庭裁判所から送られる照会書に回答し、家庭裁判所に提出。審議の上受理されたなら、家庭裁判所から相続放棄を受理した旨の通知書が送付されるという段取りになります。
「相続放棄申述書」には、相続放棄をする理由について、あらかじめ「1相続人から生前贈与を受けている」、「2生活が安定している」、「3遺産が少ない」、「4遺産を分割させたくない」、「5債務超過のため」などの項目があげられており、そこから選択するようになっています。しかし、選択されるのは「5債務超過のため」が一番多いようです。
ただ、申述書には「その他」という項目もあります。そして、そこに記入されるのは「相続に関する手続きに関わりたくない」、また、「相続に関するトラブルに関わりたくない」というものが多いのも事実です。
なお、相続放棄の期限は「自己のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内」とされています。また、相続した不動産の名義変更などをしている場合、相続したことを承認(単純承認)したとみなされ相続放棄はできなくなります。
遺産分割については、下記の記事でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
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