心の安心から、挑戦する力に

仁田楓翔

仁田楓翔

「やればできるのに、なぜやらないのだろう」

子どもの学習に関わっていると、こうした言葉を耳にすることがあります。
問題を解こうとしない。分からなくても質問しない。
「別にいい」「やりたくない」と言ってしまう。

一見すると、やる気の問題に見えるかもしれません。
しかし、子どもの心理と実際の学習場面を丁寧に見ていくと、その行動の背景に
「できない自分を見せたくない」「間違えるのが怖い」という気持ちが隠れていることがあります。

「挑戦しない」は、自分を守る行動でもある


人は、安心できない状況では新しいことに挑戦しにくくなります。
特に、勉強で失敗する経験が続いた子どもは、
「また間違えるかもしれない」
「どうせ自分にはできない」
「できないと思われたくない」
と考えるようになることがあります。
すると、問題に取り組む前から「分からない」と言ったり、ふざけたり、興味がないように振る舞ったりすることがあります。
これは単純な怠けとは限りません。

失敗する前に挑戦そのものを避けることで、傷つくことから自分を守ろうとしている場合があるのです。

教育心理学では、こうした学習行動を考えるうえで「自己効力感」という概念が重要になります。
自己効力感とは、簡単に言えば「自分ならやれそうだ」という感覚です。
この感覚が低下すると、能力があったとしても、最初の一歩を踏み出しにくくなります。

「正解したか」だけを見ない


学習支援で大切なのは、正解・不正解だけで子どもを評価しないことです。
例えば、数学の文章題が苦手な子どもがいたとします。
いきなり、「式を作ってみよう」と言われても、文章から状況をイメージすること自体に難しさを感じていれば、手が止まってしまいます。

そこで、買い物や人数、時間など本人にとって身近な場面に置き換え、
「何が分かっている?」
「何を知りたい?」
「ここまでは分かる?」
と、一つずつ整理していきます。
そして、小さな部分でも自分でできたときには、その事実をきちんと本人に返します。

「自分で見つけられたね」

この積み重ねが重要です。
大人から見れば小さな一歩でも、本人にとっては「自分にもできた」という新しい経験になります。

安心は「甘やかすこと」ではない

ここで誤解してはいけないのが、心の安心を大切にすることと、子どもに何も求めないことは全く違うということです。

できないことをすべて避けさせる。嫌だと言えば何もしなくてよい。
それでは、挑戦する力は育ちません。

必要なのは、安心できる場所を土台にして、その子が届きそうな一歩を求めることです。

難しすぎれば「どうせできない」になります。
反対に、簡単すぎれば成長につながりません。
その子の現在地を見極め、「少し頑張ればできそう」という課題を設定する。
そして、失敗しても、「間違えて大丈夫。どこで違ったか一緒に見てみよう」
と言える環境をつくる。

安心とは、失敗しない環境ではありません。
失敗しても、もう一度やってみようと思える環境です。

心が安心すると、子どもは前を向き始める

教室では、最初は「分からない」とすぐに諦めていた子が、少しずつ問題を見る時間が長くなることがあります。
やがて、「これって、こういうこと?」と自分から聞くようになる。
私は、この変化をとても大切にしています。
点数にはまだ表れていなくても、これは学習における大きな成長だからです。
「分からないからやらない」から、分からないけれど、考えてみる へ。

その変化の先に、学力の伸びがあります。

子どもに挑戦する力を身につけてほしいのであれば、最初から「もっと頑張れ」と背中を押すだけでは十分ではありません。
まず、
「ここなら間違えても大丈夫」
「分からないと言っても大丈夫」
「もう一度やってみても大丈夫」
と思える場所をつくる。

心の安心が生まれると、子どもは少しずつ自分から一歩を踏み出します。
教育に必要なのは、安心か、厳しさかという二者択一ではありません。
安心できる土台があるからこそ、適切な負荷をかけ、挑戦を求めることができる。
子どもの心の状態と学習の現在地を丁寧に見ながら、その一歩を具体的な行動へ変えていくことが、教育に関わる大人の重要な役割の一つだと考えています。

心の安心から、挑戦する力へ。

その小さな挑戦の積み重ねが、やがて子ども自身の「自分ならできる」という力になっていくのです。


葛西で、子どもが安心して挑戦でき、結果として成績につながる塾へ。
ステップアップ塾BesQは、一人ひとりの『できる』を積み重ねていきます。

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仁田楓翔
専門家

仁田楓翔(塾講師)

BesQ

自己肯定感を育て、子どもが自ら学び始める仕組みをつくる教育。小さな成功体験を丁寧に積み重ねることで、「できない」から「できた」に変わる瞬間を設計し、やる気に頼らず成績と意欲を同時に伸ばします。

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