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感情を整理するには、まず名前をつけることから

下坪壮介

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テーマ:心を整えるケア



こんにちは。
薫風堂の下坪です。

気持ちが乱れている時、私たちはよくこう言います。

「なんだかつらい」
「モヤモヤする」
「気分が重い」
「うまく言えないけれど、しんどい」

この「なんだか」「モヤモヤ」「うまく言えない」という状態は、とても苦しいものです。
なぜなら、何に困っているのかが分からないまま、感情だけが大きくなっていくからです。

感情を整理する時に、最初から前向きに考えようとしなくても構いません。
無理に納得しようとしなくてもよいのです。

まず必要なのは、感情に名前をつけることです。


名前のない感情は、大きく見えやすい


感情は、名前がつかないままだと、実際よりも大きく、得体の知れないものに感じられます。

たとえば、胸の奥がざわざわしている。
でも、それが怒りなのか、不安なのか、寂しさなのか、悔しさなのかが分からない。

そうすると、自分でも扱いようがなくなります。

「私は何にこんなに反応しているのだろう」
「なぜこんなに落ち着かないのだろう」
「こんなことで動揺するなんて、自分は弱いのではないか」

そんなふうに、感情そのものに加えて、自分を責める気持ちまで重なっていきます。

けれど、そこに少しでも名前がつくと、感情との距離が変わります。

「これは怒りかもしれない」
「これは不安に近い」
「これは悲しさというより、悔しさだ」
「寂しいのではなく、置いていかれた感じがしているのかもしれない」

名前がつくと、感情は“正体不明のかたまり”ではなくなります。
まだ苦しさは残っていても、向き合う対象が少し見えてきます。


感情に名前をつけることは、感情を決めつけることではない


ここで大切なのは、正確な答えを一発で出そうとしないことです。

「これは怒りだ」と断定しなくても構いません。
「怒りに近いかもしれない」
「不安もあるけれど、悔しさも混じっている」
「寂しさと疲れが一緒にある気がする」

その程度で十分です。

感情は、きれいに一種類だけで存在しているとは限りません。
むしろ、いくつかの感情が混ざっていることの方が多いものです。

怒っていると思っていたら、本当は傷ついていた。
不安だと思っていたら、本当は準備不足への焦りだった。
悲しいと思っていたら、本当は大切に扱われなかったことへの悔しさだった。

感情に名前をつけるというのは、自分を分類する作業ではありません。
自分の中で起きていることを、少し丁寧に見ていく作業です。


「出来事」と「感情」を分けてみる




感情が混乱している時は、出来事と感情が一体になっています。

「あの人があんなことを言ったから、嫌だった」
「予定が変わったから、腹が立った」
「返信が来ないから、不安になった」

もちろん、出来事は感情のきっかけになります。
ただ、整理する時には、出来事と感情をいったん分けてみることが役に立ちます。

たとえば、紙にこう書いてみます。

起きたこと。
自分が感じたこと。
頭に浮かんだ考え。
本当はどうしてほしかったか。

これだけでも、混ざっていたものが少し分かれます。

「起きたこと」は、相手の言葉や出来事です。
「感じたこと」は、怒り、不安、寂しさ、悔しさなどです。
「頭に浮かんだ考え」は、「軽く扱われた」「また自分だけが損をしている」などの解釈です。
「本当はどうしてほしかったか」は、自分の願いです。

ここまで分けると、感情は少し扱いやすくなります。


感情の奥には「守りたいもの」がある


感情は、ただ邪魔なものではありません。

怒りの奥には、守りたい境界線があることがあります。
不安の奥には、大切にしたいものを失いたくない気持ちがあります。
悲しみの奥には、本当は大事だったものがあります。
悔しさの奥には、認めてほしかった努力があるかもしれません。

そう考えると、感情は自分を困らせるだけのものではありません。
自分が何を大切にしているかを教えてくれるものでもあります。

たとえば、誰かの言葉に強く腹が立った時。
それは単に短気だったのではなく、自分の仕事や思いを雑に扱われたように感じたのかもしれません。

不安が強い時。
それは弱さではなく、失敗したくない、迷惑をかけたくない、きちんとやり遂げたいという責任感が背景にあるのかもしれません。

感情に名前をつけることは、自分の弱点を探すことではありません。
自分が何を大切にしているのかを知ることでもあります。


身体の感覚から名前を探すこともできる


感情が言葉にならない時は、身体の感覚から見てみる方法もあります。

胸が詰まる。
喉が固くなる。
肩に力が入る。
胃のあたりが重い。
呼吸が浅い。
目の奥が熱い。
身体が動きにくい。

感情は、頭の中だけで起きるものではありません。
身体にも表れます。

胸が詰まるなら、悲しさや緊張があるのかもしれません。
肩に力が入っているなら、警戒や怒りがあるのかもしれません。
胃が重いなら、不安や負担感があるのかもしれません。

もちろん、身体症状が続く時は医療機関に相談することも大切です。
ただ、日常の中で自分の状態を知る手がかりとして、身体の感覚に目を向けることは役に立ちます。

「今、私は何を感じているのか」と聞いても分からない時は、
「今、身体のどこに力が入っているか」
から始めてもよいのです。


名前をつけたからといって、すぐ解決しなくてもよい


感情に名前をつけると、次にすぐ解決策を探したくなることがあります。

怒っているなら、どう鎮めるか。
不安なら、どう消すか。
悲しいなら、どう切り替えるか。

けれど、感情はすぐに消さなくてもよいものです。

まずは、
「私は今、不安なんだ」
「悔しかったんだ」
「本当は寂しかったんだ」
と認めるだけで十分な時があります。

感情は、無視されると強く主張することがあります。
逆に、名前をつけて見てもらえると、少し落ち着くことがあります。

これは、感情に振り回されることとは違います。
感情をなかったことにせず、しかし感情そのものと自分を同一視しすぎないことです。

「私は怒りそのもの」ではなく、
「私は今、怒りを感じている」。

この言い方の違いだけでも、少し距離が生まれます。


言葉にすることで、人に伝えやすくなる


感情に名前をつけることは、自分のためだけではありません。
人に伝えるためにも役立ちます。

ただ「嫌だった」と言うより、
「責められたように感じて、悲しかった」
と言えた方が、相手に伝わりやすくなります。

ただ「腹が立つ」と言うより、
「大切にしていたことを軽く扱われたように感じて、悔しかった」
と言えた方が、話し合いにつながりやすくなります。

もちろん、いつも冷静に言葉にできるわけではありません。
感情が強い時は、まず距離を置くことも必要です。

それでも、自分の中で感情に名前がついていると、相手にぶつけるだけではない伝え方を選びやすくなります。


感情の整理は、きれいに片づけることがゴールではない


感情を整理するというと、すべてをすっきり片づけることのように思われがちです。

でも、実際にはそう簡単ではありません。

怒りも残る。
悲しさも残る。
納得できないこともある。
すぐには許せないこともある。
どうしてよいか分からないこともある。

それでも、感情に名前をつけることで、少なくとも「何があるのか」は見えてきます。

散らかった部屋でも、何がどこにあるか分かれば、少し動きやすくなります。
感情もそれに似ています。

完全に片づかなくても、
「ここに怒りがある」
「ここに不安がある」
「ここに寂しさがある」
と分かるだけで、次にどう扱うかを考えやすくなります。


小さな言葉から始めてみる


感情に名前をつけるといっても、難しい言葉を使う必要はありません。

つらい。
重い。
こわい。
悔しい。
寂しい。
不安。
焦る。
疲れた。
悲しい。
腹が立つ。
がっかりした。
ほっとした。
安心した。

最初は、このくらいで十分です。

慣れてきたら、少し細かくしてみます。

不安なのか、焦りなのか。
怒りなのか、悔しさなのか。
悲しさなのか、寂しさなのか。
疲れなのか、諦めなのか。
緊張なのか、警戒なのか。

感情の言葉が増えると、自分の状態をより細かく見られるようになります。

それは、自分をコントロールするためというより、自分を乱暴に扱わないための言葉です。


感情に名前をつけることから、心のケアが始まる




心を整えるというと、穏やかになることや、前向きになることを思い浮かべるかもしれません。

けれど、その前に必要なのは、自分の中で起きていることに気づくことです。

今、何を感じているのか。
何に反応したのか。
何が傷ついたのか。
何を守りたかったのか。
本当はどうしてほしかったのか。

感情に名前をつけることは、その入口です。

名前がつくと、感情は少しだけ扱いやすくなります。
自分を責める前に、自分を理解する余地が生まれます。
人にぶつける前に、言葉にする道が見えてきます。

感情は、消すものではありません。
敵にするものでもありません。

まずは、
「今、私は何を感じているのだろう」
と静かに見てみる。

そこから、心を整えるケアは始まります。

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下坪壮介
専門家

下坪壮介(メンタルヘルスカウンセラー)

薫風堂

アロマセラピーによる癒やしを雰囲気だけで終わらせず、癒やしを求める心の裏側にある悩みや課題を丁寧なカウンセリングによって整理。香りがもたらす安らぎの効果と併せて、ストレスで消耗した心を穏やかに整えます

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