お茶は薬として中国から伝わってきました
『良薬は口に苦し』という諺(ことわざ)がありますように、多くの方は、漢方薬は苦くてのみにくいものだというイメージをお持ちではないでしょうか?でも、漢方薬には、甘いものも、辛いものも、酸っぱいものも、しおからいものも、苦いものもあります。
味が薬効を持つ
漢方では、例外はありますが、味によって薬効が変わると考えています。
酸味 収縮させたりおさめたりする
苦味 下に降ろす 乾燥させる
甘味 補い養なう 緊張を緩める
辛味 汗を出したり上昇させる 停滞しているものを動かす
しおからい味 降ろす 軟らかくする
ですから、『良薬は口に苦し』という諺(ことわざ)は、良い薬は苦いものだということですが、必ずしもそうではありません。人間がなぜ甘味のものが好きで苦味のものを好まないのかというのは、甘い物は補う働きがあるため普段から摂取していないといけないし、苦い物は下降させて乾燥させてしまうので普段から摂りすぎると体内の必要なものを体外に排出してしまうから自然の摂理でそうなっているのです。ただし、病気になって体内の悪いものを排出させるのに苦味のものが必要になることがあるのです。苦いものが必要なとき、苦い物がそれほどいやにならなくなります。また、体が冷えていて衰弱している方は苦みのある漢方薬は適しません。甘い漢方薬で補い養うことを長期に行うのです。
のみやすく甘い漢方薬
一般的な漢方薬で、おそらく最ものみやすいのは小建中湯(しょうけんちゅうとう)です。
膠飴(こうい:みずあめ、桂皮(けいひ:ニッキ)、芍薬(しゃくやく:シャクヤクの根)、大棗(たいそう:なつめの実)甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう:ヒネショウガ)
内容は以上で、とても甘い上にほんのり辛みがある味で小さなお子さんにものめます。
苦くてのみにくい漢方薬
のみにくい漢方薬の代表は、黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)です。
黄連(おうれん)、黄岑(おうごん)、阿膠(あきょう:ロバのニカワ)、芍薬(しゃくやく:シャクヤクの根)、鶏子黄(けいしおう:卵の黄身)
この漢方薬は、先に黄連、黄岑、芍薬を煎じてから、あたたかいうちに阿膠と卵の黄身を入れ半熟のドロドロした状態のものをのみます。黄連、黄岑がとても苦い上にドロドロしていてかなりのみにくいです。
でも、黄連阿膠湯は、のみやすいエキス顆粒剤が発売されていますのでわざわざのみにくい煎じ薬をつくらなくて良くなりました。
香りが薬効を持つ
私共の薬局の中に入りますと、漢方薬らしい香りがして、その香りだけで気分が落ち着くとおしゃる方もいらっしゃいます。そう、香りも薬効があるのです。ですから漢方薬を煮出すときに出る香りも薬です。
煎じ薬と出来上がってそのままのめる顆粒や丸剤の違いは、経験的に香りがある成分を多く含むものに特に大きな差がでると考えています。丁度、豆をひいて自分で入れたコーヒーとインスタントのコーヒーを比べると、同じ材料を使っても出来上がったものは香りが違ってしまうように・・・・。
漢方薬には、特有の香りを持つものが多く、ストレスに対処する漢方薬や消化を良くし食欲を増す漢方薬には多く配合されます。
例えば、ストレスに良い漢方薬の一つ、逍遥散には薄荷葉(ハッカ)が配合されています。胃弱や胃アトニー、慢性胃腸炎に使う香砂養胃湯の中の厚朴(こうぼく)、陳皮(ちんぴ)、香附子(こうぶし)、縮砂(しゅくしゃ)はいずれも芳香性があり、昔ながらの煎じ薬を煮出していますと、アロマテラピーをやるのと同じようにいい匂いがします。
香りが果たして効き目の一部なのかどうかは、通常の医薬品の有効性のテストがやりにくいので証明がしにくいです。 香りをテストする場合、本物の漢方薬の味や香りと寸分も違わない無効な味や香りを作ることができないので、証明することが難しいのです。