フィットネスクラブの倒産増加から考える|パーソナルジムに必要な経営視点
ジムを経営していると、集客、売上、利益、人材、働き方など、さまざまな悩みが生まれます。
「もっと新規のお客様を増やさなければ」
「SNSの投稿を増やした方がいいのではないか」
「料金を下げれば申し込みが増えるかもしれない」
このように、目の前の問題を解決するために、新しい施策を次々と試している方も多いのではないでしょうか。
しかし、表面に見えている悩みと、本当に改善すべき経営課題が同じとは限りません。
集客が少ないように見えても、実際には商品や申込導線に問題があることがあります。
売上が伸びない原因が、新規顧客の不足ではなく、料金設定や継続の仕組みにあることもあります。
私は15年以上にわたり、浜松市でパーソナルジムを経営し、集客、広告、商品設計、人材採用、店舗展開など、さまざまな失敗と改善を経験してきました。
ここでは、パーソナルジムの開業前や経営中によく聞く悩みと、その背景にある考え方についてお伝えします。
新規集客が安定しない
「今月は問い合わせがあったけれど、来月はどうなるか分からない」
「紹介が止まると、新しいお客様が来なくなる」
このように、新規集客が安定せず、毎月の売上に不安を抱えているジム経営者は少なくありません。
集客が不安定になる原因は、広告やSNSの投稿数だけではありません。
例えば、
- 誰に向けたジムなのかが明確になっていない
- 店舗の特徴が他店との違いとして伝わっていない
- 広告、ホームページ、SNSの内容が統一されていない
- 興味を持った人が、次に何をすればよいか分からない
- 紹介や口コミなど、一つの集客方法に依存している
といった問題が考えられます。
新規集客を安定させるためには、一時的に反応のよい広告を探すだけでなく、認知から問い合わせまでの流れを整えることが必要です。
広告費をかけても問い合わせが増えない
広告を出しているにもかかわらず、問い合わせや体験予約につながらないという相談も多くあります。
この場合、広告媒体や広告会社だけが原因とは限りません。
広告の役割は、サービスの存在を知ってもらい、興味を持ってもらうことです。
その後に申し込みが生まれるかどうかは、広告を見た後の受け皿によって変わります。
- 広告の内容とホームページの内容がつながっているか
- お客様の悩みが具体的に書かれているか
- 料金やサービスに対する不安を解消できているか
- 実績やお客様の声が掲載されているか
- 予約方法が分かりやすいか
- スマートフォンで見ても読みやすいか
広告費を増やす前に、広告からホームページ、LINE、予約フォームまでの導線を確認する必要があります。
受け皿が整っていない状態で広告費だけを増やしても、見られる回数が増えるだけで、申し込みは増えない可能性があります。
問い合わせは来るが、入会につながらない
広告や紹介から問い合わせはあるものの、体験後の入会率が低い場合もあります。
この場合、新規集客よりも、問い合わせ後の対応や初回体験の流れに課題があるかもしれません。
体験に来られるお客様は、すでに一定の興味を持っています。
一方で、
「自分にも続けられるのか」
「本当に身体が変わるのか」
「料金に見合う効果があるのか」
「無理な勧誘をされないか」
といった不安も抱えています。
初回体験では、トレーニングを提供するだけでなく、
- お客様が何に悩んでいるのか
- これまで何が続かなかったのか
- どのような状態を目指しているのか
- 目標を達成するために、どのような方法が必要か
を整理することが大切です。
説明する側が一方的に商品を案内するのではなく、お客様自身が必要性を理解し、納得して選べる状態をつくることが入会につながります。
売上はあるのに、利益が残らない
予約が埋まり、毎日忙しく働いているにもかかわらず、手元にお金が残らないというケースもあります。
この場合、売上の金額だけではなく、経費や利益構造を確認する必要があります。
パーソナルジムでは、家賃、人件費、広告費、決済手数料、設備費、システム利用料など、さまざまな費用が発生します。
売上が増えていても、それ以上に経費が増えていれば利益は残りません。
特に注意したいのが、売上を伸ばすために固定費を先に増やしてしまうことです。
店舗を広げる。
スタッフを採用する。
高額な設備を導入する。
広告予算を増やす。
これらは事業成長に必要な場合もありますが、売上や利益の見込みを確認せずに進めると、資金繰りを圧迫します。
経営では、「いくら売れたか」だけでなく、「最終的にいくら残ったか」を見ることが重要です。
料金設定が適切か分からない
料金を高くすると申し込みが減るのではないか。
安くすればお客様が増えるのではないか。
このような不安から、料金を決めきれない方もいます。
料金は、周辺のジムと比較するだけでは決められません。
必要な売上、経費、対応できる人数、提供内容、目指すサービス品質などを踏まえて考える必要があります。
料金が低すぎると、必要な売上をつくるために多くのセッションを行わなければなりません。
その結果、経営者が休めなくなったり、一人ひとりのお客様へのサポートが薄くなったりする可能性があります。
一方で、提供する価値が整理されていない状態で料金だけを上げても、お客様には選ばれません。
重要なのは、安くするか高くするかではなく、
- 誰に向けたサービスなのか
- どのような悩みを解決するのか
- どのようなサポートが含まれているのか
- 継続によってどのような変化を目指すのか
オーナーが現場から離れられない
自分がセッションをしなければ売上が生まれない。
予約対応や問い合わせ対応も、すべて自分が行っている。
休みの日にも、お客様やスタッフから連絡が来る。
このような状態が続くと、売上が増えるほど経営者の負担も大きくなります。
オーナーが現場に立つこと自体が悪いわけではありません。
しかし、すべての業務がオーナーに集中していると、事業の成長にも限界が生まれます。
経営者が現場から離れる時間をつくるためには、単にスタッフを増やすだけでは不十分です。
- 業務の流れを整理する
- 判断基準を共有する
- 接客や指導の基準をつくる
- 情報を一人に集中させない
- スタッフに役割と責任を渡す
といった仕組みが必要です。
経営者にしかできない仕事と、スタッフに任せられる仕事を分けることが、組織化の第一歩になります。
スタッフを採用しても育成できない
人手が足りないために採用したものの、思うように育たない、すぐに辞めてしまうという悩みもあります。
採用では、資格やトレーナー経験だけでなく、会社の理念や仕事に対する価値観を確認することが重要です。
高い技術を持っていても、お客様への向き合い方やチームでの働き方が会社と合わなければ、長期的な活躍は難しくなります。
また、採用後に「見て覚えてください」「分からないことがあれば聞いてください」という状態では、教育する人によって教える内容が変わってしまいます。
スタッフ育成では、
- 理念や目指すサービスの共有
- トレーニング指導
- カウンセリング
- 接客
- 提案方法
- 食事や栄養に関する知識
- お客様情報の共有
- 定期的な振り返り
などを、段階的に伝える必要があります。
人材育成は、現場の空いた時間に行う付随業務ではなく、経営の一部として考えることが大切です。
新しいサービスを導入しても売上につながらない
物販、オンライン指導、ピラティス、美容商材など、新しいサービスを導入しても、思うように利用されないことがあります。
新サービスが売れないときは、サービス自体が悪いとは限りません。
- 既存のお客様に必要性が伝わっていない
- どのような悩みを解決するのかが曖昧
- 既存サービスとの違いや役割が分からない
- スタッフが提案方法を理解していない
- 料金や利用方法が複雑
- 導入すること自体が目的になっている
といった原因が考えられます。
新しいサービスを導入する際には、設備や資格を準備するだけでなく、誰に、どのタイミングで、どのように案内するのかまで設計する必要があります。
サービス数を増やすことが売上につながるのではなく、既存のお客様の悩みや目標に合わせて、必要なサービスを適切に提案できることが重要です。
YouTubeやLINEを始めたが、集客につながらない
YouTube、Instagram、LINE公式などを始めたものの、発信が集客につながっている実感がないという方もいます。
情報発信では、投稿本数だけでなく、それぞれの媒体の役割を整理する必要があります。
例えば、
- YouTubeで考え方や専門知識を伝える
- SNSで存在を知ってもらう
- ホームページでサービスへの理解を深める
- LINEで継続的に情報を届ける
- 初回体験や相談へ案内する
というように、媒体同士をつなげることで、発信が申し込みにつながります。
YouTubeだけを更新していても、その後にLINE登録や問い合わせへ進む導線がなければ、視聴者との関係はそこで途切れてしまいます。
また、LINE登録者が増えても、登録後に何を配信するのかが決まっていなければ、相談や申し込みにはつながりません。
各媒体を単独で運用するのではなく、どこから来た人を、次にどこへ案内するのかを設計することが必要です。
独立開業したいが、何から始めればよいか分からない
パーソナルトレーナーとして経験を積み、独立を考え始めたものの、準備することが多く、何から始めればよいか分からない方もいます。
開業には、物件や設備だけでなく、
- 経営理念
- コンセプト
- 対象となる顧客
- 商品内容
- 料金設定
- 必要資金(融資)
- 売上計画
- 集客方法
- ホームページやLINE
- 予約・決済方法
- 契約書や利用規約
など、さまざまな準備が必要です。
物件契約や設備購入を先に進めてしまうと、後から必要な売上や客単価と合わないことに気づく場合があります。
大切なのは、目の前の作業から始めるのではなく、開業後にどのような経営をしたいのかを先に整理することです。
誰に何を提供し、いくらの売上と利益を目指すのか。
そのために何人のお客様が必要で、どのように知ってもらうのか。
全体像をつくってから、一つずつ準備を進める必要があります。
経営課題は、それぞれがつながっています
ここまで紹介した悩みは、別々の問題に見えるかもしれません。
しかし、実際の経営では、集客、商品、価格、数字、人材、申込導線などが複雑に関係しています。
問い合わせが少ないからといって、広告だけを増やせばよいとは限りません。
入会率が低い背景に、商品の内容や料金設定が関係していることもあります。
利益が残らない原因が、集客不足ではなく、固定費や提供方法にある場合もあります。
重要なのは、思いついた施策を次々と増やすことではありません。
現在の経営状態を整理し、どこで流れが止まっているのかを正しく把握することです。
課題が明確になれば、優先して改善すべきことも見えてきます。
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