正解のない時代にキャリアを創造する【第4回】人材版伊藤レポートとは?人的資本経営との関係をわかりやすく解説
「キャリア相談」と聞くと、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。
「転職したい人が相談するもの」
「自分に向いている仕事を教えてもらうもの」
「仕事に困っている人が利用するもの」
そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし、キャリア相談は、必ずしも転職や就職など、具体的な行動を決めるためだけのものではありません。
これからどのように働いていきたいのか、自分は仕事に何を求めているのか、今の仕事を続けるのか変えるのか。
そうしたことを、対話を通じて一緒に考えていくことも、キャリア相談の大切な役割です。
キャリアとは「仕事」だけではありません
そもそも「キャリア」とは、単に職歴や仕事のことだけを指す言葉ではありません。
これまでどのような経験をしてきたのか、どのようなことを大切にしてきたのか、これからどのように生き、働いていきたいのか。
仕事だけでなく、家庭、学び、人との関わり、生活など、さまざまな経験を含めて、その人が歩んできた道やこれからの方向を考えることができます。
そのため、キャリアについて考えることは、単純に「どの会社に転職するか」「どんな仕事に就くか」を決めることとは少し違います。
キャリア相談では何を話すのでしょうか
キャリア相談で話す内容に、決まった正解はありません。
例えば、
- 今の仕事をこのまま続けてよいのか考えている
- 転職したい気持ちはあるけれど、決めきれない
- 自分に向いている仕事が分からない
- 仕事にやりがいを感じられない
- 職場の人間関係について悩んでいる
- 管理職になって、これからの働き方を考えたい
- 定年や役職定年を前に、これからを考えたい
- 仕事と家庭や生活とのバランスを考えたい
- これまでの経験をこれからどう生かせるか考えたい
など、さまざまな相談があります。
「まだ何を相談したいのか、自分でもよく分からない」という状態から始まることもあります。
キャリア相談では、答えを教えてもらうのでしょうか
ここは、キャリア相談を考える上で大切なところです。
キャリアコンサルタントは、相談者に代わって「あなたはこの仕事が向いています」「この会社に転職した方がいいでしょう」と答えを決める人ではありません。
もちろん、職業や仕事に関する情報を提供したり、選択肢を整理したりすることはあります。
しかし、それ以上に大切なのは、相談者自身が自分の考えや気持ちを整理し、自分なりの選択を考えられるようにすることです。
そのため、キャリア相談では「何を選ぶか」だけではなく、
「自分は何を大切にしたいのか」
「これまでどのような経験をしてきたのか」
「これからどう働いていきたいのか」
といったことも一緒に考えていきます。
「転職するかどうか」を決める前にも相談できます
例えば、「会社を辞めようか迷っている」という相談があったとします。
このとき、すぐに「では転職しましょう」と考える必要はありません。
なぜ辞めたいと思っているのか。
仕事そのものが合わないのか。
職場の人間関係に困っているのか。
仕事量や働く時間に問題があるのか。
今の会社でできることはないのか。
あるいは、本当に環境を変える必要があるのか。
こうしたことを整理していくことで、最初は「辞めたい」と思っていた人が、今の職場で別の可能性を見つけることもあります。
反対に、考えた結果として「やはり環境を変えた方がよい」と判断することもあります。
大切なのは、誰かに結論を決めてもらうことではなく、**自分が納得できる選択を考えること**です。
キャリア相談は、困ってから利用するものでもありません
キャリア相談というと、「何か大きな問題が起きてから利用するもの」と考える方もいるかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
例えば、
「今は特に困っていないけれど、これからの働き方を考えてみたい」
「今の経験を今後どう生かせるか整理してみたい」
「管理職になったので、自分の役割について考えたい」
といった段階で相談することもできます。
キャリアについて考えることは、問題が起きたときだけでなく、これからの選択肢を考える機会にもなります。
キャリア相談は「一緒に考える時間」
キャリアには、一人ひとり異なる事情があります。
同じ仕事をしていても、大切にしたいことや、仕事に求めるものは人によって違います。
だからこそ、キャリア相談では、一般的な「正解」を当てはめるのではなく、その人自身の経験や価値観、現在の状況を踏まえて考えることが大切だと私は考えています。
キャリア相談とは、何か一つの答えを教えてもらう場ではありません。
自分のこれまでを振り返り、今を見つめ、これからを考える。そのために誰かと一緒に考える時間。
それが、キャリア相談の一つの姿だと思います。
「こんなことを相談してもいいのだろうか」と思うことでも構いません。
まだ転職するつもりがなくても、具体的な悩みが整理できていなくても大丈夫です。
まず話してみることで、自分では気づかなかった考えや選択肢が見えてくることがあります。
次の記事では、「転職を迷っているとき、キャリア相談では何を考えるのか
」について取り上げます。



