相続した空き家で賃貸経営! 貸し出すためのリフォームのポイントとは
親などから受け継いだ住まいを、そのままにしておくとさまざまな問題を引き起こします。
そのため、将来的に住むことがないのであれば、早い段階で売却も視野に入れて検討してみましょう。今回は、相続した空き家を譲渡(売却)する際の特別控除についてご説明します。
特別控除の特例とは
総務省統計局の調査によると、平成25年の空き家数は820万戸。全国の住戸の13.5%を占める数です。空き家が増加した原因として、少子高齢化、地方における人口減少などがあげられていますが、空き家の増加は社会問題になっています。空き家が治安や景観の悪化、災害時の倒壊など私たちの生活に大きな影響を及ぼすからです。
そこで空き家の有効利用など空き家対策が進められていますが、そのひとつが「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」です。
親の家(実家)を相続したものの自分には別に家がありそこに住んでいる場合、相続した家は空き家なるケースが多いでしょう。しかし、空き家になった家を譲渡(売却)する際、一定の要件を満たしていれば譲渡所得(売却益)から3,000万円を控除できます。
従来、適用期間は2019年12月31日までとされていましたが、2023年12月31日までに延長されることになりました(この拡充については2019年4月1日以後の譲渡が対象です)。
適用の要件とは
「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」には、さまざまな要件が定められています。その主な要件は次の通りです。
まず、「人」の要件について
(1)売主は、被相続人居住用家屋及び相続開始直前においてその被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等を相続又は遺贈により取得した「相続人」であること。
(2)遺産分割協議前で家や土地が複数の相続人の共有になっている場合、売却には共有者全員の同意が必要。
建物や土地についても要件が定められています。その主な要件は次の通りです。
(1)相続開始の直前に、被相続人が一人暮らしをしていた建物であること(老人ホーム等に入居していた場合も対象になりますが、一定要件を満たした場合に限ります)
(2)昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
(3)区分所有建物登記がされた物件でないこと(つまり、マンション以外の家屋であること)
(4)相続開始直前において「被相続人居住用家屋」の敷地の用に供されていた土地等
(5)相続した後、相続人が貸付けの用又は居住の用に供していないこと(つまり、相続から譲渡までずっと空き家でなければならないということです)
(6)相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡(相続から3年目の年末までに譲渡を行うこと)
(7)1億円以下で譲渡したこと
(8)親子や夫婦など近しい関係にある人に対して売ったものでないこと
なお、この特別控除を使うためには、実際には建物を解体して更地にしてから売却することになります。というのも、重要な要件のひとつに「建物が現行の耐震基準に適合するものであること」という項目があるからです。
現行の耐震基準を満たすことができれば建物を解体する必要はありませんが、昭和56年以前に建てられた古い家屋を、現行の耐震基準を満たすものにするためには、売却前に耐震リフォームをする必要が出てきます。
しかし、昭和56年以前の家屋にわざわざ耐震リフォームを施して売却するのは現実的ではありません。解体するより更地にするほうが安く上がるでしょう。
適用を受けるための手続きの流れ
この特別控除を受けるためには、「被相続人居住用家屋等確認書申請書」を市区町村に申請し、「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、その他必要な書類と併せて税務署(国税局)に提出する必要があります。
添付書類は多岐にわたります。
簡単に言えば「昭和56年5月31日以前に建てられ」「被相続人が一人で住んでいた家を相続した相続人が、相続発生から3年以内に建物を解体して更地にし」「売却額1億円以下で第三者に譲渡した」ことを証明するための書類が必要になるわけです。
(1)家屋取り壊し後の敷地等の譲渡の場合は、次のような添付書類を添えて提出します。
1:被相続人の除票住民票の写し
2:相続人の住民票の写し(被相続人の死亡時以降2回以上転居している場合は、相続人の戸籍の附票の写し)
3:家屋またはその敷地等の売買契約書の写し
4:以下のいずれか
電気もしくはガスの閉栓証明書または水道の廃止届出書
相続人と媒介契約を締結していた宅地建物取引業者が、当該家屋の現況が空き家であることを 表示して広告していることを証する書面の写し
(2)家屋及び敷地等の譲渡の場合は、上記1~4の他に、次の書類が必要になります。
・敷地等の売買契約書の写し
・除却工事の請負契約書の写し
・取り壊しから譲渡までの使用状況の分かる写真
・敷地の相続人の固定資産課税台帳の写しまたは固定資産税の課税明細書の写し
「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」については、適用の要件が細かに定められていますし、申請にあたって必要な書類も多いですから専門家に相談されることをおすすめします。