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ジェネラティビティが分かってきた。

平野康代

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テーマ:人材

 カテゴリー「人材」は、人材育成・開発や自己啓発等、人の成長や能力発揮等に関する話題を取り上げます。人材育成で重要とされる要素のひとつは明確な目標です。会社が求める人材や自分がなりたい姿等が明確でなければ、何が課題なのかも分かりませんし、課題が分からなければ、どのような方法でその課題を克服して良いかも分かりません。その上、結果が出るまでに時間が掛かってしまうというのも、人材育成が難しいと言われる理由のひとつかも知れません。人の成長や能力発揮等に関して問題意識のある方の参考になれば良いなと思っています。

水牛とスマートフォン

 私は以前、独立行政法人国際協力機構(JICA)の委託事業などで、ベトナムに日本の技術を移転するような活動を行っていました。雇用創出や人材育成、技術力向上といった開発効果の発現・持続に貢献すべく、優れた技術やノウハウ、アイデアを開発途上国であるベトナムの地域医療領域に適用するような活動でした。
 適用領域が地域医療ですから、都会地というより、いわゆる田舎の医療機関で使ってもらうことになりますので、地方の農村部を回ったりもしました。ベトナムの農業では、米作の生産量が大きな割合を占めていますが、水田のしろかき等に機械を使うのではなく、水牛を使っていました。そういうこともあり、道路を水牛が移動していることも多くありました。私が小学校の頃、近所の農業を営む家には牛が飼育されていましたから、牛には驚かないのですが、水牛を引っ張っている農夫の方も手にはスマートフォンが握られており、衝撃を受けました。牛と一緒に水田を耕しているのだから、せいぜい黒電話が家にあるのだろうと何となく思っていたので、水牛とスマートフォンの組み合わせに衝撃を受けたわけです。スマートフォンを使うためには、基地局等の通信インフラも必要になりますが、黒電話の時代に必要であった電線も不要になるため、割と早く通信インフラが整備できるようです。衝撃を受けた理由は、水牛とスマートフォンの組み合わせというより、日本が無線通信環境を整備するために要した段階を一気に飛び越えることができることに対してでした。衝撃を受けるとともに、自分が進めている事業が時期尚早と考える必要は無いという覚悟にもつながりました。日本が辿った苦難な技術開発の道程と同じことを開発途上国の人々に求める必要は全く無く、登山に例えれば、ヘリコプターで先進国がいる位置まで飛んできてもらえば良いんです。もちろん、技術というか道具というか、それだけを提供すれば良いという話ではありませんが、私達が歩んだ苦労の歴史と同じ道程を歩んでもらう必要はありません。

尾身茂会長の言葉

 世界をパンデミックの恐怖に陥れた新型コロナウィルス感染症は、日本においては、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」としていましたが、2023年5月8日から「5類感染症」になりました。外国人観光客も増え始め、新型感染症が今後も発生するかも知れないと認識した上での新しい日常が戻りつつあります。
 政府の「新型インフルエンザ等対策推進会議」の議長として新型コロナ対策の推進にあたってきた尾身茂氏が、会議の体制見直しに伴って議長を退任することが報じられました。社会活動のほとんどを止める緊急事態宣言や、それでは経済が疲弊してしまうということで、社会経済活動を動かしつつ感染対策を両立させるという難問や、通常の医療とコロナ医療のバランスの取り方等、私であれば眠れなくなるような幾つもの難題が立ちふさがっていたものと思います。公共の福祉や社会全体の利益と個人の自由のバランスをどう取るかというのは、それぞれの立場や価値感によって人それぞれなので、考えるだけで胃が痛くなるような話です。当時は大変だったと思います。私個人として、新型コロナ対策に批判的な時期もありましたが、お疲れ様でしたと言いたいです。
 今回の新型コロナウィルス感染症は、2023年5月5日に世界保健機関(WHO)が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の終了を宣言しつつ、脅威は消えていないため、警戒を緩めてはいけないとしています。WHOによると、世界では130億回分のワクチンが投与され、多くの人の重症化を防ぎ、命を救ったそうです。一方、多くの国では、ワクチンを必要とする人の大半にワクチンが届いていませんでした。世界中ではこれまでに7億6500万人以上の感染が確認されているそうです。
 尾身氏は、今後も新たな感染症によるパンデミックは来るとしており、次のパンデミックに備えるためにも、この3年間に考えたことや悩んだことを記録に残すことが、今回の役割を担った者としての責任だと考えているそうです。

ジェネラティビティ

 「ジェネラティビティ」という言葉は,心理学者のエリクソンの造語だそうです。彼は「次世代を導き確立することへの関心」を「ジェネラティビティ」と名づけました。「generate」はラテン語源で「生み出す」という意味であり,「generation」は「世代」,「generative」には「生殖」という訳語が用いられています。話が難しくなりそうですが、ジェネラティビティに含まれている意味は、「世代を越えて継承する」ということです。それは親としての遺伝的な次世代だけではなく、会社の後輩を育てたりすることや、次世代を見越して行動すること等も含まれるそうです。エリクソンは、人間の心理的な発達段階を8つに分けて説明していて、乱暴にいうと、年齢を重ねてくると、次世代に継承したくなってくるのだそうです。
 もう少し日常に引き寄せて考えてみると、例えば孫の子守りは「創造的で生き生きと次の世代に関われる」チャンスであり、精神の健康のためにも非常に大事だそうです。しかし、世代間のつながりをもたなかったり、次の世代のことなど眼中になかったりして、自分の世代や時代のことだけ考え、次世代に何を残すか自覚した生き方ができていないと、自分が存在した意味を見いだせなくなってしまうそうです。
 前述の尾身氏の記録に残す責任があるという話は、次世代を導くことに貢献するものですし、登山のヘリコプターの話にもつながるような気がします。

私の場合のジェネラティビティ

 ジェネラティビティの事を知ると、あ、この事かと思うことがありました。私はある時に、自分のこれまで培ってきたノウハウ(ちっぽけかも知れませんが)を若い人たちに伝えたいという気持ちになりました。例えば、情報収集はこのような考え方で進めていた等のノウハウです。大したノウハウではないですが、自分として紆余曲折して辿り着いたものなので、登山におけるヘリコプターとはいかないまでも、ロープウェイくらいにはなると思いました。定期的な会議の場で時々時間をいただいて『シリーズ壁画』として説明させていただきました。それが若い人にとって直接役に立つかは分かりませんが、何かの参考にはなるのではないかと思っています。洞窟壁画は、絵画のように語られることが多いように思いますが、ノウハウを伝承する際に使うという用途もあったのではないかと思っています。それが『シリーズ壁画』というネーミングに繋がりました。

まとめ

 エリクソンは、人間の心理的な発達段階を8つに分けて説明していたとご紹介しましたが、それによれば、私は今、「壮年期」の終わりに近づいています。ネットの解説を少し引用します。『壮年期は「中年期」とも呼ばれ、体力的にも精神的にも落ち着いてくる頃です。エリクソンは、この時期の発達課題を「generativity」という造語で表現しました。ここでは【生殖性】と訳していますが、これは「次の世代に継承することへの関心」を意味します。結婚して子どもを育てることだけでなく、職場における部下の育成や、後世に残る新たな技術を生み出すことなども含まれます。人生の先輩として、自分の知識や経験を次世代に伝えることは、自分自身が生き生きと過ごすためにも大切なことです。しかし、次世代への関心が低く、自分のことだけを考えて生きていると、それ以上の発展がなくなり【停滞】してしまいます。次の世代に貢献しようと考えられるようになれば、人生をよりよくするための<世話>という力が備わります。』書かれているとおりなので、笑ってしまいます。
 私の愚息は社会人1年生になれたのですが、色々と話をしていると学生時代とは異なる価値観が芽生え始めていると感じます。これからいくつもの壁が彼の行く先に立ちはだかると思いますが、彼から求められれば、自分のこれまでの足跡や苦労話等を参考までに披露し、彼の人生のロープウェイになれば良いなと思っています。

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平野康代
専門家

平野康代(DXコンサルタント)

株式会社テクノプロジェクト

IT業界での約30年のキャリアをもとに、中小企業のDX推進をサポート。企業に応じた業務変革を導くため課題抽出からシステム導入、稼働まで伴走します。あわせてデジタル人材を育成し、企業の自走力を高めます。

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